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【岸由二】自然保護とはガーデニングだ|人間と自然の新しい共存を目指して【杉山大志】

尊敬する大好きなお二人の対談!
二度見ました。
長い動画ですが、私も10年以上少しずつ聞いてきた岸由二先生の理論とものすごい実績がギュッと2時間にまとまっています。
この動画は企業で生物多様性を担当している人、環境問題を学ぶ学生さん、そして小学校の先生にぜひ見てほしいです!

<自分のためのメモ>

〇概観
・Biodiversityを「生物多様性」と誤訳したのは利権がほしかった分類学者。「生命多様性」の方がよかった。
・生物多様性条約で定義されている「種の多様性、遺伝子の多様性、生態系の多様性」がすべてではない。これに囚われ過ぎて、日本では生物種を守ることばかり。在来種を守って外来種は排除するだけ。さらに遺伝子汚染までうるさく言う。
・近自然=ベースラインアプローチでは都市化が進む自然を守れない。人の影響がない自然なんて何百年遡ってもありえない。ベースラインの設定は無意味。多自然=ガーデニングで都市化に乗っかって自然を増やしていく。在来種・外来種という分け方ではなく機能で分けて管理する。
・一昨年から国交省が「流域治水」と言い出した。中身は鶴見川流域で40年前から実践して成果を上げてきたものと全く同じ。「流域総合治水」と言ってほしかったが、鶴見川の先行事例が分かるので避けられた?

〇鶴見川流域の保全
・手つかずの自然を遷移に任せたら自然が崩壊→アレチウリに覆われる。または笹藪になる。放置されたら崖崩れなどで水路が埋まり乾燥化が進む。
・雑木林=クヌギ、コナラとみんな思い込んでいる。薪、炭にするのに便利だから他の樹木を伐採してクヌギ、コナラが残っただけ。自然に任せた雑木林ではクヌギ、コナラは広がらない。ドングリを運んで糞で落とせる鳥はいない。再生する森林ではエノキを植えた。タマムシやオオムラサキが復活する。クヌギ、コナラの雑木林ではクワガタ、カブトムシはいてもタマムシやオオムラサキはいない。
・40年放置された森林では水路が埋まってなくなる。遷移に任せて放置したらさらに乾燥が進むだけ。再生するには、まず掘る。掘っても水が出ない場合は、矢板を打って堰き止めて待つと、川がよみがえってくる。ホタル、ホトケドジョウが戻ってきた。同じ工法で湿地も再生できる。保水力が上がって治水にもなる。観光資源にもなる。
・放置されてアレチウリに覆われてしまった鶴見川流域のグリーンベルトを在来のオギ、アシ、ヒメガマに再生。自然保護=アレチウリ退治ではない。何度刈っても翌年出てくる。まず刈って、別の植物に置き換える。オギ、アシ、ヒメガマを移植する。遺伝子汚染と言って批判する学者がいる。環境省も。でも再生ができた。遷移に任せる/アレチウリ伐採だけでは再生は不可能。
・湿地のアレチウリはオギ、アシ、ヒメガマに再生できたが、乾燥地帯ではネズミホソムギが広がり、花粉症の原因となっている。こちらはヤブカンゾウ、ノカンゾウで置き換える(グランドカバー)。あと数年で達成できそう。
・絶滅危惧種のホトケドジョウは谷の清流にいると思われているが、実は田んぼの水を温める枡や野菜洗い場にたくさんいる。繁殖期に上流にのぼる。中途半端な上流ではオニヤンマに食べられるので最上流までのぼる。
・ホトケドジョウの地域個体群を人工的なネットワークで保全している。かつては遺伝子汚染になるのでダメだと環境省や学者が猛批判していた。現実の自然界では流域内であれば遺伝子交配しているので何も問題はない。生息域外保全=生物多様性条約第9条に載っている。

〇三浦半島小網代の森の保全
・1984年に鉄道、住宅、ゴルフ場リゾートの開発計画あった。開発には賛成、谷ひとつを流域(浦の川の集水域)丸ごと保全するよう提案。神奈川県、国交省が保全してくれた。
・アサギマダラのためにセイタカアワダチソウを管理下で残していることが批判される。スタッフがヤナギを切っていたことに対してサラサヤンマが減るとクレームしてくる専門家もいる。実態を理解していない。現在の「種の保全」をベースにした考えはおかしい。理論と言えるのか。
・河口干潟では、全国のどこかの湿原で絶滅危惧種に指定されている生き物が160種くらいはいる。単位面積あたりではとんでもない多様性が実現している。
・1984年から現地に入って放置された里山の推移を観察することができた。かつては自然の遷移に任せていればすばらしい湿地になると信じていた。これは間違いだった。2000年代になったら常緑林になり崖崩れを起こす。谷底は一面乾燥した笹原になり、荒れ地になっていった。水田のための水路が埋まり湿地が乾燥地になった(レジーム返還)。山火事になるかもしれない。直接見た学識がいるのか。
・里山保全方式は人手がかかる。だがヒトモノカネがなくなったら放置される。放置されたら崖崩れなどで水路が埋まり乾燥化が進む。
・【小網代の保全方針】
放置せず(遷移に任せない)、農業利用もせず(里山保全をしない)、水田耕作の歴史遺産である水循環構造を活かした多自然生態系創出。
・えのきテラスに、小網代保全の歴史について写真付きで説明文を掲示。このおかげで「岸たちは自然を守っていません。自然を破壊しています。」などと簒奪する人が来なくなった。

〇流域思考とは何か
・国家で区分けをすると「外来種」が生まれる。生物本来の分布で区分けするべき。数万年遡れば行き来していたはずなので、中国産のトキ、ロシア産のコウノトリを日本で育てるのはよいこと。だったら他の生きものや絶滅危惧種も育てていいはず。国内での都道府県も一緒。「国内外来種」と言い始める。生態系区分=流域。
・1996年から2001年まで流域で生物多様性国家戦略をやることになったが、2002年に流域をやめて里山保全でやることになった。外来生態系が好きであれば里山保全でやればよい。反対しない。でももっとよい区分がある。それが流域。
・生命圏を海と陸に分ける。陸を、アイシーランド(氷河の世界)、サンディランド(砂漠の世界)、レイニーランド(雨降る世界)に分ける。レイニーランドは隙間なく流域でできている。分水界で分けられるので。
・日本列島は8割がた109の一級水系流域でカバーされている。さらに、関東地方→鶴見川流域→鶴見川流域亜流域→76の小流域、と分けられる。行政区だと町田市、横浜市、川崎市などで管理がバラバラになる。
・行政住所に加えて、自然の住所である流域の感覚を持って、二刀流で面白がって防災・減災、自然保護、観光を進めるのがよい。
・「生命圏・雨降る大地は流域でできている」という常識が広まるためには300年かかるかもしれない(自分も10年以上経つのに、UBOにはまだまだです…)。

おまけ。
もちろん名前は出ませんが自分のことについても3か所で触れられていました!!感激です。

00:57:55~
01:25:05~
01:49:45〜

ご参考。
「流域地図」の作り方

「奇跡の自然」の守りかた

生きのびるための流域思考

流域思考三兄弟、もちろん読んでいます!

 明日からカナダで開幕する国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)でも、毎度のように現場感覚のない空中戦が展開されることでしょう。地に足のついた議論が広まってほしいものです。


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