鈴木ダイスケ

音楽、漫画を中心としたポップカルチャー畑のライターです。

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マガジン

  • 私的KAN論(仮)

    私的KAN論(仮)。昨年末に亡くなったKANが遺した数々の楽曲を通して語る私的J-POP史。いまのところは無料公開してます。今後少しづつ加筆も考えてます。もしよければサポートしていただけると励みになります。

  • クッキングパパについての考察

  • 考察/村生ミオ

    村生ミオ作品について書いたテキストをまとめてみました。

  • 裕木奈江最強伝説

    1990年代初頭の裕木奈江についての考察。

  • 原秀則〜永遠の優柔不断キャラたちへ。

    原秀則作品の考察をまとめてます。

最近の記事

私的KAN論(仮)第10章 さよならだけどさよならじゃない

事実上のラストアルバム「23歳」が発売された後、アーティスト活動は順当すぎるほど精力的に進んでいました。まず触れておきたいのがKANよりも15歳以上年下のシンガーソングライター秦基博と作り上げた1曲です。2021年4月にリリースされた「カサナルキセキ」は同じコード進行のまったく別の曲2曲が重なるとどうなるか、というKANの提案から始まった文字通りの世代を超えたコラボレーション。2019年の暮れに焼き鳥屋にKANが秦を呼び出したところから始まってる。翌年からのコロナの影響もあり

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    • 私的KAN論(仮)第9章 桜ナイトフィーバー〜58歳の大学5年生

      アイドルとは心の鏡。銀杏BOYZ峯田和伸が自著「恋と退屈」(河出文庫)で記した歴史的名言ですがその通りだと思います。どんな形にせよ、誰もが何らかの「推し」を持ってるかと思いますが、人生であり生き甲斐そのものなんですよね。女性アイドルグループの誰かとか女優の誰々、もしくはボーイズグループ、俳優、二次元、2.5次元、、いやいやスポーツ選手にベテランロックバンドだってその範疇に入ります。「俺はそんなもん関係ねえ」と他人事を決めてる中年でもビートルズマニアだったりR &Bのレコードを

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      • 私的KAN論(仮)第8章 よければ一緒に〜変わりゆく季節の中で

        言うまでもないですがポップソング、特にラブソングというカテゴリーの基本は「哀しさ」だと思います。哀愁と言い替えてもいいですが、ハッピーなラブソングって洋邦問わずスタンダード化したものってかなり少ないと思います。いや、あるのかもしれません。ただ底抜けに明るいイメージの曲調でもどこか裏側に「哀愁」めいたものがないとスタンダード化はしないのではないでしょうか。例えばポップスの黄金律の権化、モータウン・ビートを基調にした楽曲を思い浮かべてみてください。シュープリームスの「恋はあせらず

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        • 私的KAN論(仮)第7章 ディーヴァ戦国時代。そして弾き語りばったりへ。

          90年代も半ばを過ぎるとミュージック・シーンにおいて「ディーヴァ」なる呼称が多く見受けられるようになりました。もともとはオペラ歌手界で使用されていた言葉ですがいわゆる女性シンガーを指す言葉でよく見受けられるようになったのはR &Bをベースとしたクラブ系女性シンガーが注目を集めるようになってからだったと思います。その流れで出てきたUAやwyolika、birdといったこれまでにはなかったアーティスト・ネーミングはシンガーソングライター的な日常を歌う、というのとは違ったアーティス

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        私的KAN論(仮)第10章 さよならだけどさよならじゃない

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        • 私的KAN論(仮)
          11本
        • クッキングパパについての考察
          5本
        • 考察/村生ミオ
          5本
        • 裕木奈江最強伝説
          5本
        • 原秀則〜永遠の優柔不断キャラたちへ。
          3本
        • 柳沢きみおのブルース
          7本

        記事

          私的KAN論(仮)第6章 小田和正という巨人〜Still Crazy After All These Years

          僕は80〜90年代初頭はのちに「J-POP」と呼ばれる音楽の黎明期だと捉えてます。シティ・ミュージック(ポップ)、フォーク、歌謡曲、そしてライブハウスシーンで蠢く無数のバンドたち。それらが奏でる音楽が紆余曲折を経て、大きなうねりとなり一般層にも届くカルチャーとして拡大していったのだと思います。 J-POPを巨大産業へ仕立て上げた要因のひとつにタイアップ戦略があります。フジテレビの毎週月曜日21時の枠が月9と呼ばれ始めたのもJ-POPというワードが一般的に浸透し始めた頃ではな

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          私的KAN論(仮)第6章 小田和正という巨人〜Still Crazy After All These Years

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          私的KAN論(仮)第5章    I`m songwriter welcome you to my song 〜変化するJ-POP黄金時代

          1990年代も半ばを過ぎるとジャパニーズ・ポップシーンにも変化が訪れます。ミスチルは変わらず王座に君臨していますが、国民的バンド的立ち位置へ急激にシフトしていくことでの葛藤とダークな心情を余すことなく表現したAL「深海」をリリース、勝ち続けることへの苦しさを吐露しながらも、初期のポップでコンパクトな路線からは想像もつかないヘヴィネスを内包させたバラード「Everything」、佐野元春、浜田省吾、尾崎豊といったストリート・ロッカーたちの影響を包み隠さない「名もなき詩」とヒット

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          私的KAN論(仮) 第4章 ミスチル王朝の治世と「まゆみ」の影

          たまたま先日のことです。この3月までTBSでオンエアされていたドラマ「さよならマエストロ」を見てました。西島秀俊と芦田愛菜による人生再生のお話なんですけどめちゃくちゃいい作品でした。そして主題歌、やけに気になるメロディだよなあと思ったらアイナ・ジ・エンドなんですね。「宝者」という曲でアタマサビから美味しいメロディが最後まで余す所なく展開されていて、まさにJ-POPのお手本のような1曲。ギリギリで踏みとどまるセンチメンタリズムとベタに泣きのメロディ、コード進行をもっともっとと展

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          私的KAN論(仮) 第4章 ミスチル王朝の治世と「まゆみ」の影

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          拙著「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」について

          拙著「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」が発売されて4か月が経過しました。 その間、プロモーション稼働でいくつかラジオ番組に出演したりトークライブイベントやらせていただいたり。とはいえまだ少数在庫もあるだろうし、次のアクションどうしようかなと考え中ではあります。 ただこの本ってずーっと音楽聴き続けてるいわゆるディープな音楽ファンにどうしても読んで欲しいと狙って書いた本ではないんですよ。なんなら書いてる内容全部否定していただいてかまわなくて。むしろ踏み台にして「おれはこ

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          私的KAN論(仮) 第3章 モラトリアムの果てに〜「愛は勝つ」の時代背景

          「愛は勝つ」のメガヒットは当時の邦楽ポップシーンの中で、明らかに大きな影響があったと思います。まだバンドブームが続く中、いわゆる邦楽ロックとは違う角度のソロ男性アーティストの台頭です。大江千里や岡村靖幸といったEPIC勢が奮闘、YMOチルドレンの流れからの高野寛といった面々が先行していましたが大きな波にはなっていませんでした。KANのブレイクがあってこそ、槇原敬之の台頭もあったと思いますし、バンドブームの渦中で苦戦していたMr.Chiidren桜井和寿の覚醒、それによるJ-P

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          私的KAN論(仮) 第3章 モラトリアムの果てに〜「愛は勝つ」の時代背景

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          私的KAN論(仮) 第2章 応援ソングの向こう側

          街を歩いていて、あまりに当たり前の光景過ぎて何にも思わなかったことに驚くことってありませんか。たとえば昔に比べて「整体」やマッサージを売りにしたお店が増えたこととか。若い頃はなんとも思わなかったからなんでしょうかね? PCやスマホの普及による慢性的な肩こりの蔓延も影響しているとは思います。ちょっとSNS開くとうんざりするぐらいの炎上を目の当たりにしたりして肉体的にも精神的にも疲れやすいのが現代社会なのかもしれませんし。かく言う僕も慢性的な肩こりには悩まされているのでよくその

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          私的KAN論(仮) 第2章 応援ソングの向こう側

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          私的KAN論(仮) 第1章「愛は勝つ」を聴く前に知りたい二、三の事柄。

          KANはJ-POP史上最も注目されるべき偉大なソングライターです。僕は彼の楽曲が大好きでした。理由は簡単です。めちゃくちゃいい曲が多いから。大江千里も槇原敬之もいい曲多いしカラオケで歌ったりしてましたが、千里ちゃんやマッキーと比べると圧倒的にリスナーとしての「自分」を投影しやすかった。 大江千里って関西学院大学でEPICから華々しくデビュー、「十人十色」で味覚糖CMソングに抜擢され本人もCM登場で歌い踊り、渡辺満里奈から「好きなソングライター」としてリコメンドされるだけじゃ

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          私的KAN論(仮) 第1章「愛は勝つ」を聴く前に知りたい二、三の事柄。

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          大阪バックサイドブルースpart2

          ひさびさの大阪はたのしかった。 学生時代から社会人としてまる3年、モラトリアム時期入れると約10年を過ごしたエリアだからだけってことではないんだなーと今回あらためて思った次第。水が合うとでも言えばいいんだろか。新大阪降りた瞬間得た妙な安堵感。あれはいったいなんだったんだろか。 1泊2日の強行スケジュールだったので、大阪でしか食えないたまごサンドもアメリカ村裏のあのカレーとラーメンも、金龍でキムチ入れながら食うラーメンもたこ焼きもスルーしてしまったが、個人的にはレコード屋も

          大阪バックサイドブルースpart2

          大阪バックサイド・ブルース

          いま、大阪へ向かってます。 実にひさびさの関西。振り返ると約10年ぶりなんですよね。拙著「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」プロモーションでラジオ出演のための大阪入りではあるんですが、学生時代から社会人3〜4年目まで関西在住でその後もなんだかんだと年に数回は仕事にかこつけて行ってましたからね。こんなに間が空くとは思いもしなかった。 さて拙著の話を少しだけ。発売されて2ヶ月経過しましたけど来月は阿佐ヶ谷ロフトAで江口寿史さんを迎えての発刊記念トークライブやります。2月1

          大阪バックサイド・ブルース

          私的KAN論(仮) はじめに。

           先日クローゼットを整理していたらブルックスブラザーズの紺ブレが出てきた。1968~75年生まれの方々ならすぐにピンとくるだろう。そう、渋カジ全盛期の象徴的アイテムだ。あまりに久々に現物を見てしまったのでしばらくハンガーに吊るしたまま思わずじーっと見つめてしまった。気持ちとして甘酸っぱいというかなんというか、、、どっちかと言えば気恥ずかしさのほうが大きいかもしれない。いっそこのまま捨ててしまおうかとも思ったけど、まだそのままクローゼットで眠っている。体型的にも(洋服の)コンデ

          私的KAN論(仮) はじめに。

          「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」刊行〜「ドカベン」31巻に思いを馳せながら

          正論と暴論の狭間で思い悩むことがあるのは結局“行間”をありかなしかの話と通じる気がする。いわゆる行間マジック。何事も間は大事ですよね。 そんなわけでnoteの更新をしばらくサボっていた。約半年空いてしまったのはずーっと思い悩んでいた、っていうのはウソ。単に毎晩ぽちぽちと自分の初単行本用の原稿書いてた。そしたらあっという間に時は過ぎ去り年末だ。長かった。いや、短かったのか。正直よくわからんのですがとりあえず現在発売中です。タイトルは「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」。シ

          「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」刊行〜「ドカベン」31巻に思いを馳せながら

          ぼくたちの好きな小林信彦。

          初めて小林信彦を読んだのは大学生になってからだった。 名前は知っていたんですよ。薬師丸ひろ子が主演した「紳士同盟」の原作者で、とか。あとは本屋に行くと吉田秋生のポップでキャッチーなイラストがめちゃくちゃ目立つ「イエスタディ・ワンスモア」がやたらと目を惹いた。刊行されたのが1989年の秋だからボクが大学生なりたての頃だったと思う。90年代初頭、吉田秋生さんが小林信彦作品のイラスト手掛けること多かったと思うんですけど(主に新潮文庫)、アレはアレでボクにとっての90`sっぽさだっ

          ぼくたちの好きな小林信彦。