【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
107. 令嬢、魔王討伐 ④
やる気に満ちた表情に緊張を漲らせて祭壇に向かって構えを取るノブレスオブリージュ。
三十分程が経過した。
「なかなか現れないね、エマ」
「デニー気を抜いてはいけませんわ、皆もでしてよ! 」
「「「はいっ! 」」」
祭壇の周囲に怪し気な黒い霧が集まって行き収束していった。
やがて黒い霧だった存在は確りとした実在の肉体を持った漆黒の巨体へと変わっていく。
全ての霧を吸収した巨体は黒鳥の様な一対の羽を背に揺らめかした美形の異形であった。
額には二本の巨大な牛頭の角を生やし、髪も肌も瞳も全てが黒い、結膜、所謂白目の部分まで同様であった。
筋肉質な全身を覆ったこちらも漆黒のプリオーから図太い両腕を伸ばした後、満足そうな笑みで自らの唇をペロリと舐めた舌も又黒一色であった。
「貴方、魔王ザトゥヴィロかしら? 」
マリアの掛けた声に黒い魔人は不機嫌そうに答える。
「人間? か…… 如何にも我は魔王ザトゥヴィロである、が…… 人間に知己など居ない筈なのだが? 矮小なる人の娘よ、貴様は何故我の事を知りぬるのか、答えよ」
「ええ、良いけど少し待ってて! ちょっと皆を呼んで来るから! 」
答えると廃墟の壁の外に向けて走り去って行ったマリアに、魔王ザトゥヴィロは首を傾げていた。
ややあって五人で廃墟の内部に入って来たノブレスオブリージュ達。
入ったとはいっても只祭壇と石の床があるだけなのだが、マリア以外の四人は目ヤニを付けていたり寝癖が付いていたりして外のどこかで寝ていた事が丸分かりであった。
理由は簡単である。
緊張感を持ってザトゥヴィロの復活を待っていた五人であったが、オーロ・ラン・ダハブ達を倒してからここまでに経過した時間は五時間に及んでいたのであった。
四時間くらい前からはすっかり緊張の糸が切れてしまった五人は一人づつ一時間の見張りを残して表、廃墟から少し離れた開けた荒野に寝転んで仮眠を取っていたのである。
エマが仲間達を包む形で『反射(リフレクション)』を張り、今朝の寝不足を解消する為に、ガーガー鼾を立てて眠ったのだった。
マリアがザトゥヴィロに話し掛ける。
「お待たせしたわね、貴方の事を知っていた理由はキンキラのオーロ・ラン・ダハブと赤のクルムズ、そして青のマーヴィから聞いていたからなのですわ」
ザトゥヴィロは太古からの配下の名を聞いて不思議そうに周囲を見回しながら質問を返す。
「なるほど、それであの者たちは何処にいるのだ? 我を出迎える筈なのだが」
質問に答えず自分の背負っていた背嚢を降ろし、中から三つの魔石を取り出して見せたマリアの顔はニターとした物であった。
「それは何だ? その魔石が一体何だと言うのだ、答えよ、娘」
これにはマリアに変わってイーサンが返答した。
「ふむ、魔王だ何だと偉そうにしていても大したことは無いのですね、これが何かお判りになられないとは、いやはや」
「なんだと」
デビットもイーサンに続いた。
「悪魔とか魔王とか言っていても所詮は魔物、モンスターと大差ない知性しか持ち合わせないんでしょうね」
「ぶ、無礼な! 人間風情が何を言うか! 」
続けてデニーが二人を嗜めるように言った。
「イーサンもデビットもそんないい方したら悪いよ、幾ら主従関係にあったからって体内の魔石まで見た事無かったんじゃないかな? 金色と赤と青だったら分かったかも知れないけど、同じ赤が三つだからさ、分からないんだよ、これが自分の副官たちだって事が」
「? ん、何を言っているのだ小僧? その魔石が我の副官共の物であるように聞こえたが? 聞き間違いか? 」
寝癖を整え終えたエマが魔王ザトゥヴィロに対して答える。
「聞き間違えでは無くってよ、あなたの部下、副官の三人は私達が討伐して、ご覧の通り魔石だけを残して消失いたしましたの♪ 後はあなたを成敗すればお終いでしてよ、さあ、尋常に勝負! ですわ! 」
「……ほう」
ジッとエマの顔をねめつけたザトゥヴィロは周囲に自身のオーラ、漆黒の魔力を極大にして全身から溢れさせるのだった。
大分お怒りらしい。
打ち合わせ済みであったエマ達の挑発によって、かなりの魔力を無駄に消費してくれたようだ。
押し寄せる魔力の波が激烈で、多少の息苦しさを覚えるエマ達であったが、こんな事でへこたれてしまうような生易しい訓練を経て来た訳では無いのである。
グッと表情を引き締めて、いつも通りのフォーメーションを取るのであった。
「行っておしまいなさい! イーサン、マリア、デビット! 」
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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