![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/61046477/rectangle_large_type_2_1e65b061abd21436b88cff195ef01a69.jpg?width=1200)
【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
7. 令嬢、逐電する ⑤
男たちが聞いて来た魔王復活の話を聞きながら、時折相槌を打ったり大仰に驚きの声を上げながら食事を進めたアメリアたちは、いつのまにか出された料理をすっかり平らげてしまい、話をしてくれた男たちに礼を述べると食事代の支払いをしたのであった。
デビットが驚愕の声を上げる。
「あれっ! えっとこれは? い、一体? 何なのだろうか? 娘さん、これは? 」
「ええっ? 普通にお釣りですけど…… お一人様で銅貨八枚、四人様で銀貨三枚と銅貨二枚、銅貨二枚の果実水が四杯なので合わせて銀貨四枚ですから、銀貨六枚のお返しで間違いないと思うのですが……」
デビットはアメリアとイーサン、マリアを振り返って言うのであった。
「だそうです、お嬢様! 何故でしょうか? 貨幣が増えてしまったのですが……」
「え、ええ、おかしいですわね…… 使ったら減るのが…… 道理ですわよね? なぜ、増えてしまったのでしょうか……」
困惑しているアメリアの横に座っていた厳格な執事、イーサンが声を上げた。
「はっ! そう言えば…… 我が兄、侯爵家家令であるトマスが言っていた事があります…… 集めた人頭税、現金をいかに増やす事が出来るか、それが家令の仕事でもある! とかなんとか……」
「えっ? 」
「ええっ? 」
イーサンの言葉に驚きの声を上げたマリアとデビットとは違い冷静に状況を分析したのは侯爵令嬢のアメリアであった。
「なるほどね、そう言う事でしたのね…… イーサン! 次に兄、トマスにお会いした時には教えて差し上げれば宜しくてよ! 庶民が食を得るお店でお食事を頂けば、貨幣を増やす事が出来ると言う事を、ぜひ教えてあげてくださいね? きっと喜んでくださいますでしょう! 」
「ははっ! 必ずやっ! 我が兄ながら、中々におっちょこちょいで、いやはや、お恥ずかしい! 」
「ふふふ、まあ、仕方が無い事でしょうね? 私達の様に庶民と接する事を厭わぬ貴族は皆無でしょうから? この惨めな道行にも意味があったのであれば僥倖では! そう思いましょうよ? 如何でしょうか? 」
「ははっ! いやあ、アメリア様のご慧眼には驚かされてばかりでございます…… 使えば使うほど増える貨幣とは……? 一体どういった仕組みなのでしょうか? 」
アメリアは自信満々の顔で言うのであった。
「理に適わぬ物も存在するのが世の中ではありませんか? この貨幣然り、魔王たるザトゥヴィロ然り! 多分シンシアの嫌な態度なども同様では無いのかしら? そんな不確かな時代と価値観の中で揺るがぬ意思を守って立ち上がる者、其が貴族、尊い魂を持つ人間たちなのでは? 今こそ立ち上がれ、尊く貴重な魂と青き血の流れる体を持つ貴族、我が同胞たちよ! そう言う事では御座いませんか? 如何です? イーサン、マリア、デビット! 」
「「「おおおっ! 」」」
「ありがとう店員の皆さん、そして貴重な情報を下さった貴方達にも感謝を、庶民のお二人、えっと、お名前は? 」
「あ、ああ、俺はレッド、こっちは」
「ホワイトだ」
アメリアの美しい顔が一層華やかさを増して、流麗な仕草で感謝を表す一礼を返した。
「今夜の出会いとお二人から齎された稀有な知識は私の無知に知性の光と未だ見ぬ世界の深みをお教え下されたので御座います、この出会いを偶然とせず、今後も未熟な私にお二方のお知恵をご教授頂ければ、この身に余る光栄でございますわ! ベッド先生、ホバウト先生、私を徒弟の端に加えて頂いても宜しいでしょうか? 如何でしょうか? 」
名前を間違えていたアメリアであったが、恐らく優しいのだろう、ベットとホバウト、いいや駆け出し冒険者のレッドとホワイトは、怒りもしないでコクコクと頷いて、弟子入りを了承してしまったのであった。
お腹も膨れて、無事弟子入りも認められたと言うのに、宿に帰る道すがらのアメリアの表情は鬱蒼とした物であった。
その表情は寝室に入ってからも晴れることは無く、一旦就寝を宣言したその後で、前室に控えたマリアに言葉を掛ける時まで続いたのである。
「マリア……」
「お嬢様! 如何致しました? 」
「…… 皆を、イーサンとデビットをここに呼んで頂戴! 聞いて欲しいお話があるのです! 」
「は、はい! ただいまぁ! 」
程なくして集められた三人を前にアメリアは言った。
「私、領地には帰らない事に決めました、この町から先は、逐電いたしますわ! 」
聞かされた三人は声を合わせるのであった。
「「「え、えええっ! 」」」
***********************
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
Copyright(C)2019-KEY-STU
※この作品は『小説家になろう』様にて、先行投稿しています。宜しければこちらからご覧いただけます^^↓
この記事が参加している募集
励みになります (*๓´╰╯`๓)♡