【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
1. 令嬢、婚約破棄される ①
王都にある巨大な邸宅、特別に現王自らが認めた二本の尖塔を有した侯爵家の中の事であった。
午後の日差しが大きな屋敷の南側、中庭に面し特別豪奢に設えられた部屋が日差しを受ける中、その厳格な声は響いたのであった。
「アメリアお嬢様、スコット様がお呼びだそうです」
自分付きの執事、イーサンから告げられた言葉にバーミリオン侯爵家の第一令嬢、アメリアは怪訝そうに首を傾げる。
「叔父様が? 一体何の御用でしょう? 」
アメリアが疑問に思うのも当然であった。
何故ならつい先ほど昼食の席で、今日は自室で静かに過ごしている様にアメリアに告げたのは、他ならぬ叔父スコット・バーミリオン伯爵その人であったのだから。
叔父がいつに無く慎重な面差しで念を押した理由は、アメリアにも充分過ぎるほど理解する事ができた。
ここブレイブニア王国の王太子とアメリア・バーミリオンの婚約の正式発表は明日に迫っていたのである。
当のアメリアは勿論、屋敷全体がいつに無い緊張感を漂わせて、今日と言う日を過ごしていた中での呼び出しであった。
────何か起こったのかしら? 悪い事で無ければ良いのだけれど……
胸中に生じた不安からか、叔父スコットの執務室に向かうアメリアの足運びは、普段よりも僅かながら速められるのであった。
王都に建つバーミリオン邸でも奥に当たる叔父の執務室の扉の前には、家令のトマスが真剣な表情を浮かべて立っていた。
アメリアの到着に気が付いたトマスは素早く室内で待つスコットに来訪を告げ、スコットも焦った声で入室を促している。
アメリアと共に入室したトマスと入れ替わる様に、イーサンが扉の前に立って余人が近づかぬように鋭い視線で周囲を警戒し始める。
執務机から立ち上がった叔父スコットは部屋の中央に置かれたソファーを指してアメリアに語り掛けた。
「エマ、そこに座って私がこれから話す内容を落ち着いて聞いて欲しい、トマス、君も私の隣に掛けてくれ」
言われるままに叔父の正面に腰を降ろすアメリア。
家令のトマスも無言のまま、スコットの隣に腰を降ろした。
トマスとスコットは同い年、幼い頃からの友人であり、爵位も同じ伯爵、王都のバーミリオン家の家令と代官として力を合わせ、アメリアの父、パトリックに変わってここでの全てを取り仕切ってくれている間柄である。
今の様に余人を交えない場所での二人は昔ながらの友人に戻る、それはアメリアにとっては見慣れた景色であった。
緊張を浮かべた叔父に対して家令のトマスが言った。
「カティ何があったんだい、君がそんな顔をするなんて……」
「叔父様……」
「エマ、トム、先程王城から使いが来た…… 明日の…… 婚約発表は中止にする、そうだ…… 更に…… 十年前から続いていたエマとダニエル王太子との婚約内定も…… 一旦、白紙に戻すと告げられた……」
「えっ……」
小さい声を上げて言葉を失うアメリアに反して、いつも冷静沈着な家令であるトマスが興奮した声を上げた。
「馬鹿なっ! 前日になって白紙だとっ? この縁談は十年前、南方諸国を制圧し辺境伯から陞爵したバーミリオン侯爵家に対して、王自らが求め決定した話ではないか! エマも王太子に嫁ぐため、いいや未来の王妃として恥じぬよう、他に倍する以上の試練を自分に課して努力して来たのだ! カティ、君が誰より知っているだろう? 王立学園の成績は一番だし、聖魔法の腕前だって教授たちのお墨付きだ、レディとしての嗜みも公爵家、王家に比しても決して恥じる物では無い! その上この麗しさだ! 婚約破棄だと? エマのどこが不満だと言うのだ! カティ、理由は? 理由は何だと言っていたのだ? まさか聞いていない訳は無いだろう? 」
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拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。よろしくお願い致します。
※この作品は『小説家になろう』様にて、先行投稿しています。(ルビあり)宜しければこちらからご覧いただけます^^↓
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