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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
52.問答の沙門

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「つまり、鏡を見たり、自分で自分らしさとか考えるよりも、他人が自分をどう見ているか、他人は自分に何を求めているのか、そんな事を見て、聞いて、その要求に応えていく方が簡単では無いかって事なんでござるよ。 現状だって、自分ってどうだろ? って想像するよりも他者の評価で、ああ私ってそんな感じなんだなって考えたほうが分かり易いでござろ。 自分を知る事って大変な割に、大事な事であろ? 特にこれからの悪魔との戦いにいては……」

「ZZZZZZ…… はっ、うん? ん、あ、そうね、うん! 悪魔のね? なに?」

 いかんいかん、退屈すぎてうとうとしてしまった、とコユキは気を引き締めなおし善悪に向き直った。

「敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず。 っでござるよ」

「なるほど、ナポレオン・ボナパルトね」

「……いや、違うで……」

「あ、そっか逆か! カール・フォン・クラウゼヴィッツっか! プロイセンの。 ですよね?」

「は~、普通に孫子そんしでござるよ。 ソンブとソンピンの……」

「あぁ~、そっちのほうですか。 そっかそっかー、ヒッカケ、ですよね?」

 真面目に語って損した、と善悪は考えたが、まぁコユキだから仕方が無い、っと気持ちを切り替え話を対悪魔に集中する事にした。

「現状、相手の事、悪魔の情報を集めるのは事実上不可能でござろ? だから自分の、僕ちんも含めた味方の戦力を知る事しか出来ないのでござるよ」

 その言葉を受けて、コユキは頷きつつも何かを考えていた様で、おもむろに口を開いた。

「その事についてなんですけど、やっぱりアタシも攻撃力って言うか、何か武器とか技とか? 出来れば必殺技みたいなの覚えた方が良く無いですかね?」

「んん? なんででござる? こと回避にいては殆どほとんど完璧でござらぬか?」

 善悪の疑問にコユキは軽く首を振って答えた。

「今日は、先生が風下で自爆してくれたから運良く回避出来ましたけど、あのままの感じで攻め込まれたらどこまで避け続けられたか…… 正直分かりませんよ。 特にザトゥヴィロとかベナルリア王国? とかマルガレッタさんでしたっけ? 王女さんの話の後の先生の猛攻には目を見張りました」

「マルガレッタじゃなくマーガレッタね。 ってか何でコユキ殿がベナルリアの事を知っているのでござるか? ま、まさか……!」

「あー、そこはどうでも良いんで気にしないで下さい。 アタシが言いたいのは、あのまま攻撃が続いていたら、こっちが先に疲れてぶっ倒れていたって所なんですよ。 やっぱり攻撃力アップも喫緊きっきんの課題なんじゃないんですかぁ?」

 善悪は驚愕していた。

 マーガレッタの名前を間違えて置いて、『どうでもいい』だと?

 い、いやまあ、そこは良いか、だな、コユキ殿は彼女の事に詳しく無いんだから仕方が無い、彼女の可憐かれんさ愛らしさを知れば、又、評価も変わるであろう。

 それよりも、オッチョコチョイのウッカリさんに指摘する事の方が先決だ、と善悪は判断して言葉を返した。

「必要無いでござるよ」

「ええっ、何でですか? 先生! 今のアタシの話聞いてました? 日本語分かってますよね? はっ、さっきの『ゴッ!』で言語野げんごやに何か! 左側痛いとか無いですか?」

 言われて善悪は自身の側頭部、左側を触りながら答えた。

「う、うん、確かに左側は多少の疼痛とうつうは感じるでござるが、ま、まぁ大丈夫だと思うでござる。 それよりも大事な事を忘れているのではござらぬか? コユキ殿!」

「えっ! 先生の左脳の状態より大事な事ですか? ん~ ……なんですかね?」

 分かんなかった様だ、ならば良し! 教えてあげるのでござる! ってな感じで善悪は堂々とコユキに言った。

「もー! 忘れやすいんだから~でござる。 ほれ、そこに差している編み棒、かぎ棒だっけ? それでサクっといけば悪魔なんか赤いちっちゃな石と化すのでござろ? 覚えているでござるか? ん? んん?」

 スウェットのポッケからのぞいた白銀にちょっと黄色味を帯びた二本のかぎ棒を取り出しながらコユキが文字通り『はっ!』としていた。

「……そっか、そうですよね! 対、悪魔だったら、こいつでサクッとチョコっと差してやりゃあ良かったんだっけ……。 そうか、既にアタシTUEEEEEee状態だったんですね……」

 ようやく、本当に漸くコユキも自分のチート状態に気が付いたようであった。

 良かった、良かった。

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拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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