【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
93. 令嬢、迎える ④
四日目、小部屋を出たマリアに対して、待っていたとばかりに襲い掛かる鬼の群れの中を、マリアは口笛を吹きながら悠々と歩いて水場に向かったらしい。
全身を紫色の金属質に変じたマリアは、カラカラだった喉を潤した後、周囲に群がった鬼達をシバキ回したのだと言う。
三日間の思索と試行錯誤の結果、マリアは自分の限界を越える事に成功していたのだそうだ。
今まで体外に放出してから収束させていた魔力を体内を通して表皮に向けて流し出し、肌の表面で留めて硬質化させる。
自前の青の魔力は中枢神経から末梢神経経由で送り出し、身体強化三十掛けで発生する赤い魔力は動脈から毛細血管を経て体の隅々まで行き渡らせる事で更なる進化を実感出来たらしい。
体内を通した身体強化の魔力は全身の筋肉や腱に直接強化を施し、従来の効果を数倍に底上げさせたという。
更に自前の魔力を神経全体に満たしたことで、全身の感覚が研ぎ澄まされ気配を察知する能力が顕現し、反応速度も飛躍的に伸びたのだそうだ。
その後、岩窟内部のヒエラルキーのトップに君臨したマリアは、訓練と言う名の蹂躙を楽しんで来たと笑顔で言った。
小部屋で眠る時には敷布団を二十枚も重ねていたと告げた時には、少し遠い目をして楽しかった思い出に浸っている様だった。
エマが首を傾げて聞いた。
「それは楽しそうで良かったのですけれど、マリア? でしたら何故貴女はこんなにボロボロになっていて? 」
マリアはエマに向き直って疑問に答える。
「楽しい日々は瞬く間に過ぎていきました、私はギリギリまで、それこそ最後の三日は眠る事も忘れて鬼達に折檻…… 稽古をつけてあげたのです…… そうしてここまで走って帰る途中…… 」
エマは身を乗り出して言う。
「そこですわ! 私、それを聞きたかったのですわ! どんな話を聞いてボロボロになったのか、早く教えるのです、マリア! 」
マリアは首を傾げたままで説明を始める。
「? 街道を猛スピードで走って帰って来たのです、紫の状態で…… 気が付いた時は山中の洞窟の中でしたの、どうやらウッカリ眠ってしまっていたようで、まっすぐ突っ込んでしまったらしくて、えへへ! 山を削って進む中、服が耐え切れずにこんな状態になってしまったようですのぉ、ですが体には一条の傷も負いませんでしたわ! エマお嬢様、私はこの進化したスキルを『極めし、超人化(インヒューマン)』と名付けましたの! 如何でしょうか? 」
「あ、ああ、そうなの…… 良かったですわね、マリア……」
「「……」」
「はい! そしてこれはお土産ですの、どうぞ、お嬢様! 」
そう言って拳ほどもある巨大な宝石をエマに差し出して笑うマリア。
「こ、これは? 随分と、お、大きいですわね! 」
余りの大きさに驚愕したエマの言葉に笑顔を深めて返すマリアである。
「ダイヤモンドでございます! これが額に当たって止めてくれなければどこまで走って行ってしまったことやら…… 折角ですので持ち帰って来たのです! 」
「あ、ああ、そうなのですわね、ありがとう、マリア……」
「えへへ♪ 」
その後、夕べの今日で少し寝過ごしてしまったデニーが食堂に降りて来て目にしたものとは……
朱色、緑色、オレンジ色の魔力を食堂中に溢れ返らせながらウンウン唸っているエマ、イーサン、デビットの三人と、その横で何やら指導しているらしい、紫色でピカピカ光沢を放つマリアの姿であった。
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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※この作品は『小説家になろう』様にて、完結している作品でございます。是非こちらからご覧くださいませ^^↓
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