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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
37. 令嬢、破産する ④
騒ぎを聞きつけたマチルダが気を利かせてくれた緑茶を飲みながら、エマと後半はストラスからも一部始終を聞いた三人は深い溜息を吐くのであった。
デビットがエマの顔を見つめながら確認する様に聞いた。
「エマ様、ではその農奴たちをお許しになるだけでなく召し抱えてしまったのですね? 」
「いいえ、召し抱えるとは言っていませんわ、冒険者になる手助けを約束したのですわ、それと教育と訓練と役割分担の為の適正確認、あと生活の保障でしょうか? 」
「それを広義では召し抱えたと言うのです」
頭を抱えてしまったデビットに変わってイーサンがエマに語り掛ける。
「それで、私は造成工事の責任者や建築ギルドへ農奴たちの手配と対価、労働条件等の交渉をすればいいのですね? 」
「ええ、それから生活魔法や読み書き、簡単な算術、適性がありそうなものには従僕としての教育も頼みたいのですわ」
「ふむ、承知いたしました」
手順でも考えているのだろう、顎に手をやって思索を始めたイーサンに続いてエマとストラスに声を掛けたマリアは首を傾げていた。
「うーん、お嬢様、ストラス様、今のお話の中に出て来た、なんでしたっけ? 『半エナジー』なんですけれど……」
「ええ、マリアそれが変なのでしてよ! 絶対半、オッドが出なければ可笑しいでしょう? でも丁、イーブンばかりでしたの! 何故かしら? ねえ、ステハム様? 」
「ああ、本当だぜ! 最終的には千パーセントを越える半エナジーが溜まっていたんだからな? 丁が出る訳が無いんだよな! あれかな? イカサマ、的な? 」
「ええ、ええ! きっとそうでしてよ! そうで無かったとしたら説明が────」
「お嬢様、ストラス様も、それ酷い勘違いでございますよ…… お嬢様自身が言っていたでは無いですか、毎回確率は五十パーセントだと…… 数回丁が続いたからと言っても半が出る確率はフィフティーフィフティーのままでしてよ? 」
「まあ、それでは半のエナジーは、半々なのに選ばれなかった無念や悲哀のパワーは、一体どこに去ってしまったというのかしら、マリア? 」
マリアは呆れると言うよりも憐れむように答えた。
「ですからそんなエナジーやパワーは端から存在していません、だってそうでしょう? そんな物が在ったと仮定したとしますよね? その上でお考えを! お二人が賭場に着く前に半が千回続いていたら? どうですか? 丁のエナジーはぼうだいではないですか? 」
エマとストラスは目を剥きだして呟いたのであった。
「丁エナジー、五万超えだ、と……」
「そんなの、丁、いいえウルトラ丁、いえいえ最早、アルティメット丁! そんな丁を前にしたら私達のか弱い半に勝ち目など…… 無かったのですわね……」
マリアが伝えたかった趣旨との乖離はまだまだ酷い物であったが、兎に角ギャンブルの恐ろしさだけは伝わったようだと、胸を撫で下ろしたマリアが仕上げに掛かる。
「博打に必勝法なんてありませんのよ? と言うより勝ちも負けも存在しないのですわ、存在するのは敗者だけなのですわ! 」
「「えっ? 」」
驚いた声を上げたエマとストラスに顔を寄せてマリアが言う。
「錯覚なのですわ! その場にいる全員が持って来た金額と持って帰る事が出来た総額、
その差は賭けてもいない胴元の懐にたっぷり入るのでしょう? つまり、賭けに参加した時点で客は胴元に負けているのですよ? 目減りした残金を客の間で分け合っているだけなのですわ!
国や領主が徴税する事に似てはいますが、
こちらは貧民の救済や公共事業による再分配の仕組みがあります、
比べて賭場の経営者は自分たちが豊かに暮らす事しか考えていませんでしょう?
お嬢様が私たちのパーティー名にお付けになった、
ノブレス・オブリージュの力と言う概念には、
自らの欲望に打ち勝ち自制すると言った意味も含まれているのです!
どうか今後は誘惑に堪える強さをお持ちくださいませ、ストラス様もですわ」
揃って頭を垂れ落ち込んだ様子の二人である。
ややあって、おずおずとした感じでマリアに言うエマ。
「分かりましたわ、マリア…… 今後ギャンブルは致しませんの…… それで、あの、マリアにもお願いしたい事があるのだけれど…… 農奴の皆に稽古と言うか、基礎体力増加の為のトレーニングや基本的な武芸の稽古をつけてあげて欲しいのですわ! 駄目かしら? 」
マリアは満足げな顔でにっこりと答える。
「勿論、喜んで務めさせて頂きますわ、お嬢様! ビシバシ鍛え捲ってご覧に入れますわ! 」
この言葉を聞いたエマはパァッと顔面を綻ばせて言葉を続けたのである。
「嬉しいですわ! ありがとうみんな! それで、私が金貨を使い切ってしまった後、ステハム様にお借りしたままの金貨があるのですが! 」
「お、おいエマ! 俺の事は良いって! 余裕が出来たら返してくれれば良いよ! 」
「そんなのいけませんわ! 親しき間でも、いいえ、親しいからこそ貸し借りなくお付き合いする為に必要な事だと思うのですわ! みんな、ステハム様にお金を返したいのですが宜しいですわね? 」
考え込んでいたイーサンが顔を上げてエマに問い返した。
「お幾らお借りしたのですか? エマお嬢様? 」
エマが答えた。
「金貨十枚ですの」
マリアが金庫番のデビットに目配せし、デビットが預かっているパーティー全体の金貨を見て答えた。
「良かったです…… 丁度金貨十枚ありました、ね……」
「まあ足りますのね、良かったですわ♪ 」
「「「……」」」
こうして世間知らずのエマのお陰で無一文になってしまったノブレス・オブリージュは翌日から死に物狂いで働く事になったのである。
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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