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ユーザーの利用体験を期間ごとに分けて考えよう - UX期間モデルについて

きい

"利用中"だけがプロダクトの体験価値ではない

あるプロダクトについて、UXを見直そう、UXを向上させよう、と思ったときにまず思い浮かべるのは利用中の場面ではないでしょうか。たしかに、それはユーザーエクスペリエンスの中心となる経験といえますが、プロダクト利用中だけがユーザーがする体験のすべてではありません。すなわち、利用前、利用中、利用後、そして利用時間全体が、そのプロダクトの体験価値を決めるのです。
この見方は『UX白書(2011)』「3. ユーザーエクスペリエンスの期間」で提唱されたものです。本noteでは、こちらをもとに他の参考文献も交えながらざっくりまとめていきます。

体験期間を4つにわけて考える

『UX白書』では、ユーザーの体験期間について、利用前(①)、利用中(②)、利用後(③)、利用時間全体(④)の4つに区分して整理しています。
ユーザーにとってはじめての利用よりも前の体験が「①予期的UX」、インタラクション中に起こる体験が「②一時的UX(= 瞬間的UX)」、利用中の経験を振り返ったときに感じる体験が「③エピソード的UX」、しばらくの期間利用し、後に回顧したときに感じる体験が「④累積的UX」です。

UXの期間別の種類(「UX白書」より)

① 予期的UX

サービスを使った体験を想像する段階を「予期的UX」と呼びます。

  • 広告、Webサイト、カタログを見て、利用体験を想像する。

  • 口コミ、レビューサイト、体験談、店員のアドバイスから、利用体験を想像する。

なお、予期的UXはこの後の体験に影響します。安藤氏は『UXデザインの教科書』で、次のように述べています。

利用前にイメージした通りの使い方ができると、利用後の評価は購入前より低下しない、つまり「使ってみたらがっかりした」という体験は少なくなる傾向がある。

安藤 昌也『UXデザインの教科書』2016年

予期的UXとは、すなわち、利用前にどのようなイメージを持っていたかです。また、その後の体験を通して、利用前にイメージした通りに使えたかどうかは、全体の体験価値を決める、ひとつの重要なポイントになります。

② 一時的UX

サービスを利用している最中の体験が「一時的UX」です。利用状況に応じて刻々と変化し、短期間で変化が起こるため、反応は他と比べて感情的なものになります。

  • 使い方がわからず試行錯誤する。

  • ボタン操作の反応の遅さが気になる。

などといった直観的な反応であり、短期間のうちに瞬時に体験価値が評価されます。

③ エピソード的UX

サービスを利用した結果どう思うかを振り返る体験を「エピソード的UX」と呼びます。

  • 目的があってそのサービスを使ったが、達成できなかった。

  • 普段とは違う状況で使ってみたら、案外良かった。

といったように、エピソードとして一定期間を語ることのできるような体験です。目的や状況、そして、もともと抱いていた期待(= 予期的UX)にも左右されます。
エピソード的UXは、一時的UXを内包した連続性のある体験といえます。

④ 累積的UX

利用期間全体を振り返る体験を「累積的UX」と呼びます。

  • 使いづらいときもあるが、昔から使っていて愛着が湧いているので使い続けようと思っている。

利用期間全体を対象に評価するため、そのサービスを提供する企業の印象まで同時に形成されることがあります。これは、同じ企業が出す、新たなサービスに対して抱く、次なる予期的UXを作る要因ともなりえます。

予期的UXは「知ること」からはじまる

すべての体験は「知ること」からはじまります。
まちなかで見かけたサイネージ広告やネットサーフィン中に目にした広告などから、なんとなく自分のことと関連付けて想像させられることがあります。たとえば、お腹が空いている時間帯に、フードデリバリーの広告にある「Tonight I’ll Be Eating…(今夜、私がいただくのは…)」というキーメッセージを目にして「なに食べようか」と自分の問題に引きつけて考える、というような具合です。そして、期間をあけて、改めて別の広告などを目にした時に「なるほど、この間見たのは◯ーバーイーツっていうサービスなんだ」と認知します。
このように、人は「知る」「想像する」という工程を繰り返して、明確なイメージを作り上げていきます。そして、明確なイメージになるまで育ったときに、製品を手に取ったり、サービスを利用したり、はたまたアプリをダウンロードしたり、というところに発展するのです。

予期的UXにかける期間の変容

誰しもが、CMや広告で新商品を知ってから発売日まで心待ちにしたような経験があるでしょう。実製品であれば予期的UXの期間を長くとることができるため、ユーザーに想起させるための設計もしやすくなります。長い期間をかけて醸成された気持ちは製品に対する期待と愛着となり、実際に手にした後も時間をかけて体験される可能性があります。
しかし、モバイルアプリのように、すぐにダウンロードして手にすることのできるコンテンツは、充分に想像力を働かせるよりも前に「使ってみる」ことができます。この点、実製品と比べると、予期的UXにかけられる時間は短くなりがちです。
モバイルアプリは、手軽にダウンロードできる反面、少しの使いにくさや不便さがあれば利用機会を失いやすいです。アンインストールをするのは容易ですし、自分の目的とあわせて代替品を探すのも労力がかからないためです。
したがって、「知る・想像する」期間が短く、手放すのが容易なものほど、ひと目で”良さ”を伝える意識が大切になります。

参考 & おすすめ文献

  • 安藤 昌也『UXデザインの教科書』2016年

  • Stephen Wendel『行動を変えるデザイン ――心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する』2020年


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