ケンヨウ

日々の思いや鬱積したものを文章にしてみようとはじめました。池袋に生息中。小さな出版社で…

ケンヨウ

日々の思いや鬱積したものを文章にしてみようとはじめました。池袋に生息中。小さな出版社で働くフツーのサラリーマンです。 BOOTHにて、初めて作ったZINE「避雷針」を販売しています。 https://ken-yo.booth.pm/items/5978746

マガジン

  • ケンヨウの階層

    自分自身に関わる文章を書きとめていきます。仕事のこと、生活のこと、いま夢中なことなど僕自身についてです。

  • すこし詩的なものとして

    言葉を書き留めていきます。

  • コトバでシニカルドライブ

    頭の中でたまーに構成する言葉とコトバ。 その組み合わせは、案外おもしろいとボクは思う。誰に向けるでもなく、自分の中にあるスクラップをつなげてリユース。エッセイや小さな物語を綴ります。

記事一覧

[ちょっとしたおしらせ] ケンヨウ、ZINEはじめたってよ

 たぶん誰も気にもしていないだろうと思いますが、今年のはじめの投稿で、ひっそりとしめやかに宣言したこと。あれからずいぶんと時が経ってしまい、当初の予定である春は…

ケンヨウ
2日前
37

[ちょっとしたエッセイ]水に流れなかった思い出

 今朝、通勤の道すがら、ある家の軒先に小さなビニールプールで子どもたちが遊んでいる様子を見た。ひとりの子どもがホースから出る水で他の子どもにビャーッと水をかけて…

ケンヨウ
4日前
33

[ちょっとしたエッセイ] あの日の空も青かった

 今でこそ、映画を見たいなと思ったら、ネットで調べて映画館のホームページから目ぼしい作品を選んでは、その場でポチッとチケットを購入して、座席も確保して、なんの不…

ケンヨウ
11日前
23

[ちょっとしたエッセイとおしらせ] 夏は嫌いだったけど

 夏も本番を迎えて、なんだかじっくりと煮込まれる鍋にいるような感覚を覚える。今年も暑いな、そんなことを毎年言っているような気がするけど、実際はどうなんだろう。よ…

ケンヨウ
2週間前
33

[すこし詩的なものとして]0168 ほおずきが落ちる

記憶の断片に灯るのは おぼろげな灯りと ビルの池の境目を区切る 一直線の境界線 辿り着くのは弁天堂 線香の匂いと 夏風のあたたかさが 背中にまとわりつく 鬼の灯りと書…

ケンヨウ
3週間前
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[ちょっとしたエッセイ]世界の片隅でもやっぱり孤独だった

 先日ニュースを見ていたら、東京での若者の孤独死が、この3年間で700名を超えたという話題を目にした。老年層の孤独死が増えてるいるのは前々から問題となっていたが、若…

ケンヨウ
1か月前
33

[ちょっとしたエッセイ] エスカレーター・ラブレター

 夕方に外で打ち合わせがあったので、今日はこのまま会社に戻らず、仕事を終えることにした。最寄駅についたのは午後5時過ぎ。このまま家に帰るのは少しもったいない気が…

ケンヨウ
1か月前
18

[ちょっとした物語] 彼女のシーン

海岸を歩く人たちが、砂に長い足跡を残していく。 過ぎた春を洗い流す波は、行っては来てをくりかえし、その小さな足跡をも連れ去ってゆく。 その去りゆく人たちを見上げて…

ケンヨウ
1か月前
15

諦めにも似た願いを七夕に添えて、選挙に行ったけど、結果に対して、やっぱりねと、やはり諦めそうになる。でも選挙は止められないし、投票し続けるしかない。
織姫、彦星を横目にしちゃうくらい自由に天の川を泳ぐ魚になりたい。

https://note.com/kenyo/n/n93ea90e6382c

ケンヨウ
1か月前
11

[すこし詩的なものとして]0167 忘れないための生と

薪をくべるその後に 点火のための余白が見つからない ラジオの音は たゆたう言葉の形を失い 音と火と 燃えるよすがを 探している ルビは小さく この漢字の読みが 誰かの放…

ケンヨウ
1か月前
19

[ちょっとしたエッセイ] 僕らは、ちいさな安心のために生きている

 仕事柄、深夜にメールが届くことがしばしばある。内容にもよるが、すぐに返信してしまうことが多い。特に、フリーランスの仕事相手には、すぐ返信してあげた方がいい場合…

ケンヨウ
1か月前
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[すこし詩的なものとして]0166 梅雨はなにかの諦めのように

カーテンの隙間に見える 目前に迫る梅雨は なにかを諦めたかのように 湿った衣を羽織っている 感情は手に入れた 生命の進化は もしそれが不要なものであるならば 身につく…

ケンヨウ
2か月前
13

[ちょっとしたエッセイ] 世界はなんでもいいであふれてる

「今日なんにする?」と聞くと、「なんでもいい」と言う。 「映画なに見る?」と聞かれると、「なんでもいい」と答える。  日頃から、自分の周りで飛び交う会話の一部とい…

ケンヨウ
2か月前
25

[ちょっとしたエッセイ]なんで昼食わないんですか?

「なんで昼食わないんですか?」  後輩に聞かれた。僕は普段、あまり昼食を摂らない。どうしてそうなったかは置いておいて、もうそうなって4〜5年になる。今じゃ、「お腹…

ケンヨウ
2か月前
27

[ちょっとした物語] 雨上がり、遠回りの夏

 外へ出ると、まだ日差しは強く、晴れと一言で表現するには、少し複雑さが織り混ざっている。1日も後半戦なのだから、夜の帳が降りる前に、日差しくらい抑えてくれればい…

ケンヨウ
2か月前
38

[ちょっとしたエッセイ] 知らない場所へ、旅したい

 朝の駅のホームで満員電車に乗り込むことをわかっていて、並ぶ乗車列はつらい。たかただ20〜30分だからといって、この疲労感、疲弊感は朝に経験するには早すぎる。せめて…

ケンヨウ
3か月前
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固定された記事

[ちょっとしたおしらせ] ケンヨウ、ZINEはじめたってよ

 たぶん誰も気にもしていないだろうと思いますが、今年のはじめの投稿で、ひっそりとしめやかに宣言したこと。あれからずいぶんと時が経ってしまい、当初の予定である春は過ぎ、いつも以上に暑い今夏、ようやく宣言していたZINEが出来上がりました。  先日の投稿で一応のお知らせをさせていただきましたが、販売窓口の方の準備も整いましたので、改めてお知らせいたします。  僕が、初めてnoteへ投稿したのは、40歳を目前とした2019年の8月でした。そこから「毎週火曜日の投稿」という勝手気ま

[ちょっとしたエッセイ]水に流れなかった思い出

 今朝、通勤の道すがら、ある家の軒先に小さなビニールプールで子どもたちが遊んでいる様子を見た。ひとりの子どもがホースから出る水で他の子どもにビャーッと水をかけて楽しそうだった。しかし、時にホースというものは人の想像を超える動きをする。目一杯蛇口をひねったであろうホースは、蛇行に蛇行を重ねて、通勤時間帯の人の波に向かって暴れ出す。水を避けるスーツを着た男性は、一度子どもたちの方にキッとした顔を向けるが、この暑さの中、諦めたように駅の方へ視線を変え、何もなかったように歩き出した。

[ちょっとしたエッセイ] あの日の空も青かった

 今でこそ、映画を見たいなと思ったら、ネットで調べて映画館のホームページから目ぼしい作品を選んでは、その場でポチッとチケットを購入して、座席も確保して、なんの不安もなく映画館へ行けるようになった。単純な性格なので、便利な世の中になったなと、ただただ感心しているのだが、情報を自分から探さなくてはいけなかったり、ふとした偶然で出合う作品はずいぶんと減ったなと、少しひねくれた考えを持ってしまう。  僕が幼かった昭和の後期は、最寄りの駅前に映画館があって、駅の構内などには上映中の映画

[ちょっとしたエッセイとおしらせ] 夏は嫌いだったけど

 夏も本番を迎えて、なんだかじっくりと煮込まれる鍋にいるような感覚を覚える。今年も暑いな、そんなことを毎年言っているような気がするけど、実際はどうなんだろう。よくわからない。けれども、なんとなく夏を過ごしていると「ああ、生きてるな」っていう得体の知れない生命の本音のようなものが体に流れてくるから不思議だ。暑すぎて、何にもしなくても、暑さから命を守る生物の本能的なものなのかもしれない。仕事をしていても、頭はスッキリしないし、効率も悪い、だから先述のような言い訳を自分にしながら今

[すこし詩的なものとして]0168 ほおずきが落ちる

記憶の断片に灯るのは おぼろげな灯りと ビルの池の境目を区切る 一直線の境界線 辿り着くのは弁天堂 線香の匂いと 夏風のあたたかさが 背中にまとわりつく 鬼の灯りと書いた それに照らされ人々の影が落ちる 重ねる口は 意外と冷たかった どこかから聞こえる 祭りの音は 世界と世界をつなぐ テープレコーダーは かりそめの儀式 知らないどこかは その先の町 飾るほおずき 風に揺れる いっさいの夏はここで燃える 鬼の灯りに照らされて 一夜のくびきは 影絵のようにうっすらと 然もあ

[ちょっとしたエッセイ]世界の片隅でもやっぱり孤独だった

 先日ニュースを見ていたら、東京での若者の孤独死が、この3年間で700名を超えたという話題を目にした。老年層の孤独死が増えてるいるのは前々から問題となっていたが、若年層においても孤独死が増えていることに、なんだか居た堪れなくなった。背景には、社会との接点や関係を断ち、生活能力や意欲を失ってセルフネグレクトに陥っているということがあるらしい。これだけ人がいる場所で、そんな事実があることにどこか驚くとともに、なんだか人ごとでもないなというのが、感想だった。友人や家族がいても、どこ

[ちょっとしたエッセイ] エスカレーター・ラブレター

 夕方に外で打ち合わせがあったので、今日はこのまま会社に戻らず、仕事を終えることにした。最寄駅についたのは午後5時過ぎ。このまま家に帰るのは少しもったいない気がして、駅中にあるファストフード店でコーヒーでも飲むことにした。夕方なのにも関わらず、外の気温は30度を越している。季節のスイッチが壊れているような、初夏の一日。夏はこれからなのに、すでの残暑のような厳しさが背中から押し寄せていた。冷房の効いたこの店は、そんな灼熱の世界から逃れてきた僕にとって、椅子の硬さややかましい店内

[ちょっとした物語] 彼女のシーン

海岸を歩く人たちが、砂に長い足跡を残していく。 過ぎた春を洗い流す波は、行っては来てをくりかえし、その小さな足跡をも連れ去ってゆく。 その去りゆく人たちを見上げては行方を気にして、僕は少し不安な気持ちになる。 キラキラときらめく水面を眺め、僕は大きく息を吸った。 まもなく日が沈むそのひととき。あたりは夏の湿った空気が潮風に乗って、頬をかすめる。 ポケットでひとりかなしく震えるスマートフォンを見つけた。 画面を見ると、「うしろ見て」とだけの簡素なメッセージが浮かんだ。 僕は

諦めにも似た願いを七夕に添えて、選挙に行ったけど、結果に対して、やっぱりねと、やはり諦めそうになる。でも選挙は止められないし、投票し続けるしかない。 織姫、彦星を横目にしちゃうくらい自由に天の川を泳ぐ魚になりたい。 https://note.com/kenyo/n/n93ea90e6382c

[すこし詩的なものとして]0167 忘れないための生と

薪をくべるその後に 点火のための余白が見つからない ラジオの音は たゆたう言葉の形を失い 音と火と 燃えるよすがを 探している ルビは小さく この漢字の読みが 誰かの放った声のように なんだか違った 意味で踊り出す 湿った新聞紙に 世紀の大発見がなかなか燃えず 薪は白々とした煙だけを 産んでいく ここにいる 生きた人間と やがて死ぬ人間と すでに死んだ人間と まだ生まれぬ人間と 燃え盛る火を想像しながら 煙の中で交差する 音だけが この世界のよすがになろうか 目は霞み

[ちょっとしたエッセイ] 僕らは、ちいさな安心のために生きている

 仕事柄、深夜にメールが届くことがしばしばある。内容にもよるが、すぐに返信してしまうことが多い。特に、フリーランスの仕事相手には、すぐ返信してあげた方がいい場合が多い。担当者として、一区切りの合図というものがあると、お互いに安心するからだ。  先日、深夜2時に届いた、とあるデザイナーから少し様子の変なメールが届いた。ひと通り依頼している制作物のデザインのことが書かれていたのだが、最後に「今日は星がきれいです」とだけ書かれていた。風呂上がりの暇にそのメールを見たので、とりあえず

[すこし詩的なものとして]0166 梅雨はなにかの諦めのように

カーテンの隙間に見える 目前に迫る梅雨は なにかを諦めたかのように 湿った衣を羽織っている 感情は手に入れた 生命の進化は もしそれが不要なものであるならば 身につくことはない 僕らは 感情を押し殺すことに 慣れすぎてしまった 稚拙で効率的ではないとするのなら 僕らは自らを否定することになるのだろうか 海にボトルを投げたところで 行き先は知らない 人生の崩壊なんて トイレにいても起きる 恥ずかしさが追いつかないうちに 頬を撫で 額を撫でる カーテンの隙間に見えるそれ

[ちょっとしたエッセイ] 世界はなんでもいいであふれてる

「今日なんにする?」と聞くと、「なんでもいい」と言う。 「映画なに見る?」と聞かれると、「なんでもいい」と答える。  日頃から、自分の周りで飛び交う会話の一部というか、すべてというか、大体のどうでもいい会話に蔓延る「なんでもいい」。昨日入った喫茶店でも、隣にいた若い女性がスマホを見ながら、目の前に座る彼の問いに、目も見ずに「なんでもいい」と答えていた。  この「なんでもいい」は結構な意思表示なんじゃないかと思う。大概は「なんでもよくない」時が多い。それは自分にも当てはまる問題

[ちょっとしたエッセイ]なんで昼食わないんですか?

「なんで昼食わないんですか?」  後輩に聞かれた。僕は普段、あまり昼食を摂らない。どうしてそうなったかは置いておいて、もうそうなって4〜5年になる。今じゃ、「お腹がすかない」とか「面倒くさい」とか、至極単純な理由になっている。 「お腹空かないんだよね」と答えることが多い。でも食べたくないわけではなく、外へ誘われれば行くこともある。なので、結局どっちでもいいが正解で、でもひとつだけ、昼休みにはやっておきたいことがある。だから、昼を食べないという確率が高いのかもしれない。  常

[ちょっとした物語] 雨上がり、遠回りの夏

 外へ出ると、まだ日差しは強く、晴れと一言で表現するには、少し複雑さが織り混ざっている。1日も後半戦なのだから、夜の帳が降りる前に、日差しくらい抑えてくれればいいのにと、ため息が出た。  少し、人通りから離れる頃、夕立ちが僕の行方を阻んだ。近くのシャッターの降りた商店の軒に逃げ込む。雨はザーッと勢いよく降り始めたが、空の奥には青空が見えた。少しすればきっと止むだろう。そう思い、ポケットからスマートフォンを取り出して、アプリで雨の動きを観察した。向こう20分くらいは雨が続きそう

[ちょっとしたエッセイ] 知らない場所へ、旅したい

 朝の駅のホームで満員電車に乗り込むことをわかっていて、並ぶ乗車列はつらい。たかただ20〜30分だからといって、この疲労感、疲弊感は朝に経験するには早すぎる。せめて、これを過ぎたらあとは寝るだけとなればいいのにと祈りながら、実際はこれが1日のスタートの号砲なのである。乗車列に並んでいると、反対側のホームはガラガラで、東京に向かう自分とは違う静かな雰囲気に、あちら側に行きたい衝動に駆られる。目的なんていらない、予期せぬ場所に降り立って、ひとまず駅前のベンチに腰をおろして、缶コー