見出し画像

『13歳からのアート思考』を読んだら、カエルを見つけたくなった。

末永幸歩『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』を読みました。「13歳」とありますが、社会人も楽しく読めます。読んだ感想を綴っていきます。

6つの作品をめぐる知的冒険が「ものの見方」を一変させる!大人たちもいま熱狂的に受けたい授業!!(「BOOK」データベースより)
もくじ
[PROLOGUE] 「あなただけのかえる」の見つけ方
[ORIENTATION] アート思考ってなんだろう――「アートという植物」
[CLASS 1] 「すばらしい作品」ってどんなもの?――アート思考の幕開け
[CLASS 2] 「リアルさ」ってなんだ?――目に映る世界の"ウソ"
[CLASS 3] アート作品の「見方」とは?――想像力をかき立てるもの
[CLASS 4] アートの「常識」ってどんなもの?――「視覚」から「思考」へ
[CLASS 5] 私たちの目には「なに」が見えている?――「窓」から「床」へ
[CLASS 6] アートってなんだ?――アート思考の極致
[EPILOGUE] 「愛すること」がある人のアート思考
["大人の読者"のための解説] 「知覚」と「表現」という魔法の力(佐宗邦威)

*

上のもくじの[CLASS 4]が一番印象に残りました。特にこの部分です。

そして、デュシャンは《泉》によって、それまで誰も疑うことがなかった「アート作品=目で見て美しいもの」というあまりにも根本的な常識を打ち破り、アートを「思考」の領域に移したのです。(p209)

少し解説をします。

↑はマルセル・デュシャンというアーティストによる泉と名付けられた作品です。デュシャンは便器を選び、隅にサインをして「泉」というタイトルを付けて、展覧会に出展しました。その結果、議論を呼びました。

*

ここで、本書の冒頭にあるアーティストの思考プロセスを参考に、この作品を作成した思考を考えてみます。

作品を生み出す過程(p13)
①「自分だけのものの見方」で、世界を見つめる
②「自分なりの答え」を生み出す
③「新しい問い」を生み出す

デュシャンが泉を生み出すまでの過程(私の勝手な推測)
①=世の中の作品は目で見て美しいものしかない。
②=考えるという鑑賞があってもいい。
③=「泉」は美しいか?(一見して美しいものという既存のアートの見方でいいのか?)

①=世の中の作品は目で見て美しいものしかない。
美しい色彩、美しい形の作品を見て、アートにふれていることが普通になっている。アートとは、「一見して美しい」と感じるものはアートであると定義されているようだ。鑑賞者が考えることを作者が想定していない。

②=考えるという鑑賞があってもいい。
アートは製作者側で完結するものではなく、作品を起点として鑑賞者の思考の中で成立するものではないか。「目で見た美しさ」ではない、アートがあってもいい。

③=「泉」は美しいか?(一見して美しいものという既存のアートの見方でいいのか?)
「泉」は一般的に目で見て美しいとはいえないので、これをアートというには、既存の見方では捉えることはできないはずだ。「目で見る美しさ」以外に、アートたらしめる要素はないか?考えろ。

*

上記のように、デュシャンが考えた結果として「泉」を出展したのかなって思いました。「泉」は現代アートのはじまりともいわれ、アートの領域が広がったといわれています。

本書の作者がデュシャンを功績を書いた部分がこちらです。冒頭で引用した部分です。

そして、デュシャンは《泉》によって、それまで誰も疑うことがなかった「アート作品=目で見て美しいもの」というあまりにも根本的な常識を打ち破り、アートを「思考」の領域に移したのです。(p209)

本書の作者は作品ではなく、製作者(デュシャン)の思考を指摘していたから、印象に残りました。本書のタイトルでもある「アート思考」の根本がデュシャンからはじまったように感じられ、自分の中にある前提がある意味、崩れました。

デュシャンの考え方が世の中に広まったと考えると、「自分なりのものの見方」をいかに大事にすべきか、考えさせられます。見方が個性になるし、武器にもなるからです。

写真家の田中達也さんも、身の回りのモノを別のものに見立てて、ミニチュアの世界観を表現していますね。

*

作成者側になったとき、自分なりのものの見方を深堀して、思考して、試行錯誤のすると、作品に味がでるのではないでしょうか。作成に物語があるのは、作者が自分の思考を深堀しているからでしょう。「作る」と「考える」を一緒にしがちではあるけれど、「考える」に目が向いた本でした。

*

おまけ
表題に「カエルを見つけたくなった。」と書いたのは、本書に以下の記述があったからです。

「かえるがいる」
岡山県にある大原美術館で、4歳の男の子がモネの睡蓮を指さして、こんな言葉を発したことがあるそうです。(p6)

引用部分の解説は特にしません。おまけなので。
気になった方は読んでみてください。


あぁ、カエルをみつけたいな。


最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。


この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?