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イチローの言った「どんどん頭を使わなくなる野球」とは、どういうことか?

たくさんの名言が飛び出たイチローの引退会見でしたが、たぶん少しでも野球をかじったことのある人たちが一番印象に残っているのは「いま、メジャーリーグの野球がどんどん頭を使わなくてもできてしまうものになりつつある」という箇所じゃないでしょうか。

ぼく、普段は野球のことをほとんど書かないんですが、一応高校球児でした。

ということで、たぶんいまからぼくが書く素人目線の何万倍も深い意味でイチローは上の発言をしたと思うんですけど、せっかくの機会なので、ぼくなりの解釈を残しておこうと思います。


「スポーツ<エンタメ」になりつつある野球

結論からいうと、イチローの言いたかったことは、いまのメジャーの野球はスポーツというよりもエンタメの側面が強くなっている(≒野球にあんまり詳しくない人でも楽しめるようになっている)ということだと思います。

(厳密に言うと、スポーツはエンタメに包含されてますが、分かりやすくここでは二項対立にしてます)

顕著な例としては3つあって、それぞれが関連してるところもあるんですが、まず1つ目が『フライボール革命』です。

フライボール革命とは、バッターがアッパースイングでフライ、というかホームランを狙う打ち方のことです。

投手の低め中心の配球に対応しようとしたのが始まり、と言われています。

あとは、単純にトレーニング理論の充実などで投手の平均球速が上がり、連打をするのが難しくなったので、ワンチャンのホームランを狙ってフルスイング!みたいな風潮が高まっていることも要因に挙げられています。

ただ、このスイングで高めに投げられてしまうと必然的に空振りも多くなり、メジャーリーグ(以後MLB)は今年史上初めて、全体の三振数がヒット数を上回りました。

端的にいうと、投手と打者の勝負が『ホームラン』か『三振』かという淡白なものになったということですね。


それは本当に「選手」が頭を使っているのか...?

2つ目は、1つ目の『フライボール革命』を引き起こした遠因とも言われているんですが、『極端な守備シフト』です。

ふつうは内野4人、外野3人なんですが、外野手をひとり呼んで、内野5人、外野2人で守ったり、三遊間をサード、ショート、セカンドの3人で守ったりします。

極端な守備シフト自体は昔からやってたんですが、近年のデータ量の充実によって、より一層目にする機会が増えました。

このシフトを敷かれると、バッターとしては、ゴロを打ってしまうとよく打つ場所には守ってる人がいるので、アウトになってしまうわけです。

なので、もうそれだったら頭を超えるしかない!といってフライボール革命を加速させました。

これって一見、データを活用してて頭を使ってるようにも感じます。

ただぼくには『おれはデータから出た結果をもとにココを守っている。だからそれで違うところに飛んだら、それはもう仕方ない』という割り切りが、ある種の『思考停止』に見えてしまうときもあります。

しかもこれって、頭を使ってるのは『選手』じゃなくて『機械』なのでは?というひねくれた見方もできます。

この極端な守備シフト自体は、面白いと思うんですけどね...


背景にあるのは、新しい娯楽との「ファン争奪戦」

3つ目は、『どんどん短くなる試合』です。

イニング間の交代の時間制限や、マウンドに集まる回数の制限、敬遠時に実際に4球投げずに『敬遠します』というサインだけで、打者を四球扱いにすることができるなど、どんどんと『試合を短くする施策』が実行されています。

3つの例をまとめると、『見ていて分かりやすい試合を、コンパクトに楽しめるように!』という方向性だと言えます。

そして、この『頭を使わなくなる野球』の背景には、野球の娯楽として生き残りをかけた生存戦略が関係してるのかなと。

そもそもの大前提として、野球は1試合の時間が長い(約3時間)うえに、ルールが複雑で分かりづらいです。

ただ逆に、『1プレー間の時間が最も長いスポーツ』とも言われていて、それが逆に野球の魅力だったりもするわけです。

ただ最近は昔とは比較にならないほど、たくさんの娯楽が出てきて、昔のアメリカ人にとっては『オンリーワン』だったかもしれない野球が、いまでは『ワンノブゼム(=たくさんあるうちのひとつ)』という存在になってしまいました。

そこで、他の娯楽との比較や、世の中の変化を考えたときに、『長くて難しい』野球はとっても不利なのです。

他にも分かりやすいルールで楽しめる娯楽はたくさんあったら、新しく趣味を見つけよという人はそっちに流れる可能性が高いだろうし、『スマホ』の普及によって、ぼくたちにとっての娯楽は基本的には『スキマ時間に楽しむもの』となりました。

映画館くらい極端にスマホをシャットダウンできれば、逆に『非日常体験』としての価値が高まるんですが、球場やテレビでの観戦はそういった環境ではありません。

だからこそ、ファンの裾野を広げることが難しくて、オリンピックの種目からも最近は外されることが多いです。

そういった背景を踏まえて、よりたくさんの人に野球を楽しんでもらえるように!という思いが、イチローの言った『考えなくてもいい野球』につながっているのかなと思います。

ただ、新しいファンを獲得することと同じくらい、コアなファンを作ることも大事なので、ここのバランス感というか、両立はエンタメ全般の永遠のテーマなんだろうなとも思います。


▼『新しい人とコアな人の両立』という観点では、『ミルフィーユ』みたいな何重にも楽しさが存在しているというのが大事だなと思って、どういうふうに作ればいいんだろうなというのをぼくも模索しています


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