「信頼できる部下」の条件とは
部下として信頼できる人物とは、一体どういう人なんでしょうか。
『帝王学』の感想、第2回のテーマは『信頼できる部下』です。
第1回 「草創」と「守文」と孰れが難き
本中でリーダーの手本として扱われている、唐朝の第2代皇帝・太宗について、こんな記述があります。
まことに面白いことに、かつて敵に最も忠実であり、また最も遠慮なく直言した者を自分の諫議大夫(※かんぎたいふ)に任命していることである。少々奇妙なようだが、すぐれたリーダーには、洋の東西を問わずこういう面があるらしい。いわば裏切者や態度のあやふやな者は、利用はできるが信頼はしない。しかし自分の敵に精神誠意忠実であった者は、自己との間に信頼関係が確立すれば、自分にとっても同じように、最も信頼できる部下になるはずである。
※ふりがなは、ぼくが入れました
つまり太宗は、権力争いをしていた敵の有力な部下を、自分の有力な部下として迎え入れたということです。
ただ、まあいまの時代は、どこかの会社で役員や取締役をやってた人が、違う会社の役員や取締役になるという電撃移籍的なニュースはたまにありますが、当時はまさに文字通り『命がけ』の争いをしていたわけです。
一瞬でも自分を殺そうとしていた人間を、優秀だからといって自分の有力な部下として登用する太宗、とても器の大きなリーダーと言わざるをえません。。。
ただ、やはり歴史に名を残すような偉大なリーダーになるためには、そういった大きな器が必要なのかもしれません。
太宗以外の例として、こんな話も載っていました。
だが、大リーダーには同じ面があり、ローマの最初の皇帝アウグストスにも同じような記述があり、時と場合によってはあなたと戦い、あなたを滅ぼしたであろうと広言する者を、最も信頼できる者とした。
つまり、これらのエピソードをぼくなりに解釈すると、部下として信頼できるかどうかに大事なのは、誰に対して忠実なのかという『ベクトルの向き』ではなく、どれくらい忠実なのかという『ベクトルそのものの大きさ』なのではないでしょうか。
『ベクトルそのものの大きさ』さえあれば、あとはその人との関係値を築くことさえできれば、後から『ベクトルの向き』はなんとでもなります。
それで、この話をできる限り現代に置き換えると、採用や人事異動の場面でまず大事なのは、『どういう業界に興味を持ってるのか』や『どこの会社に興味を持ってるのか』といった『ベクトルの向き』ではなく、『のめり込んだときや好きになってくれたときに、どれくらいのトップスピードで継続して走ってくれるか』という『ベクトルそのものの大きさ』と言えるのかもしれません。
ただまあ、いまよく言われる『好きを仕事にしよう』っていう話は、どっちかというとベクトルの向きドリブンというか、その人に合ったベクトルの方向にしかベクトルそのものも大きくならないみたいな議論なので、一概には言えないですが...........
ぼくも明日から金融会社でトレーダーやれって言われても、いまの文章を書いてると熱量と同じ熱量でいきなり取り組めるかって聞かれたら、たぶん無理です。
ただ、少し議論の趣旨をあえてそらすんですが、世の中の人で、自分の絶対に合ってるベクトルの向き(=好きなこと、やりたいこと)を最初から確信できてる人なんて、めっちゃ稀なはず。
だったら、どこに向けたらいいか分からないけど、どこに向けるか納得できればその方向に向かって一気にそのベクトルを伸ばせるポテンシャルのある人を、採用や人事配置の場面では重視すべき。
きょうの話を現代の組織に置き換えると、そんな風に言えるかなと思います。
でまあ、ここまでは採用する側や登用する側っていう、こっちに人が来る想定の話ばかりしましたが、『ベクトルの向きはそれほど再優先事項ではない』ということは、つまり、逆もまた然りという意味で.........
少し前に、こんなnoteを書いたんですが、
要は、『いまこの会社でこいつはめっちゃ熱心に仕事に取り組んでくれてるから、こいつは自分の会社がめっちゃ好きなんだな』って、安心しちゃいけないんですよね。
そこで注目すべきは自分の会社でめっちゃ熱心に取り組んでくれているっていう『ベクトルの向き』ではなくて、めっちゃ熱心に取り組んでくれているという事実そのもの、『ベクトルの大きさ』です。
しかも、そうやって熱心に取り組んでくれている人ほど、なにか自分自身のやりたいことが明確にあったり(=ベクトルの向きをコントールしづらい)、他社に引っこ抜かれたりします。
なので、自社でめっちゃ熱心に働いてくれてるいるから安泰じゃなくて、そういう人ほど、もしかしたら明日から急に違うベクトルを向いてるかもしれないという、一種の危機感的なものが、経営やマネジメントする側には必要なのかもなーと、この本を読みながら思いました!
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