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「D2C」の盛り上がりと裏側と本質と

『ECが普及する以前、リアル店舗の使命は"いかに床面積に対する売上を最大化させるか"でした』


5月9日に参加したイベントで、ぼくが一番印象に残っている言葉です。

1ヶ月以上経って、やっと感想を書きます。

咀嚼できたら書こうと思っていたのだけど、だいぶ先になってしまいそうなので、見切り発車!


>【hey佐藤氏、Coiney佐俣氏】消費者行動の変遷と「小売 × 決済」勉強会


めっちゃ散らかしながら書きますが、キーワードとしては『床面積あたりの売上最大化』『D2C意外とマージン乗せてる説』『D2Cの本質はTACの消滅』あたりです。


・・・


まず冒頭にも書いた『床面積あたりの売上最大化』については、heyの佐藤さんいわく、ECが普及する前のリアル店舗が考えていたことは『いかに床面積あたりの売上を最大化させるか』だったそうです。


いまはEC(Electronic Commerce:Amazonや楽天など)をふだんの生活のなかで使うひとも多いですよね。

でもECのまえは、ぼくたちが商品を買うには、実際にお店に行くしかありませんでした。

逆に店側も、お客さんに商品を買ってもらうには、実際に店舗に来てもらうしかありませんでした。

こうして文章にしてみると当たり前感が強いですが、だから店のひとは『どれだけ床面積あたりの売上を最大化させるか』という発想にならざるを得ないわけですね。


そうなると、自然と商品をぎゅうぎゅうにして並べたり、棚を高くしてどんどん上に商品を積んだりするようになります。

ドンキホーテの店内は、まさにそのひとつの究極系って感じがします。


でも例えば、少し見にくくて恐縮なんですが、Appleの公式ストアって店内がほんとスキスキですよね。

出典:Apple 公式ページより


ひと昔前だったらこんなデザイン、絶対に無理でした。

でもいまは、『オンライン』という、実質的にはほぼ無限に広がる在庫があるので、リアル店舗で商品をぎゅうぎゅうに陳列したり、めっちゃ高く積み上げたりする必要がありません。


じゃあいまのリアル店舗の役割はなんだっていったら、これはもう既にいろんなところで言われている話ではありますが、まず1つ大きいのは『体験』としての役割です。

この『体験』も大別すると2つあって、ひとつはそのままの体験。

つまり、Apple StoreならiPhoneやiPadを実際に『どんな操作感なんだろう?』と触ってみることを指します。

アパレルでいう『試着』にあたります。

これなら別に店内に1台、まあ違うお客さんが同時に触ることも考えて2~3台店内にあれば十分ですね。

(もちろん店の裏の在庫にはその場でも買ってもらえるように、iPhoneをもっと置いてますが!お客さんの立ち入るエリアでという話)


そして、もう1つの意味の体験は、そのブランドの思想や価値観を感じる場所という意味です。

上のApple Storeの写真をもう一度見てもらいたいんですが、

この洗練された雰囲気、なんとなくiPhoneやMacの醸しだしているクールさと同じものを感じますよね!?


こうやって、そのブランドが大事にしている考え方だったり哲学だったりを、リアル店舗の設計を通して表現し、お客さんにはそれを実際に足を運んでもらって体験してもらうことにより、そのブランドへの理解を深め、愛着を持ってもらうという狙いがあります。


逆に、この2つの体験をしてもらいさえすれば、あとはネットで買ってもらえばいいので、店内を商品で埋め尽くす必要がないのです。

あとは、若干2つ目の体験と重複することもあるんですが、リアル店舗を『広告』として使うというやり方もあります。

例えば、東京のめっちゃいい土地にリアル店舗を構えることで、『そんなすごいブランドなのか!』とお客さんに思ってもらうというといったやり方があります。


とりあえずそこに1店舗立てているという実績があれば、あとは違う(安い)土地に系列店舗を出していても『あの東京の土地に出店しているブランドだ!』と、信頼力が高まって買ってもらいやすくなります。


このあたりは、下の記事が分かりやすいです(※有料記事です!)。


つまり、リアル店舗は『商品をできるだけ詰めて、めっちゃ儲ける場所』から『体験』や『広告』としての役割が強くなってきているということです。

これが1つ目の『ECが普及する以前、リアル店舗の使命は"いかに床面積に対する売上を最大化させるか"でした』についてでした。


・・・


次は2つ目『D2C意外とマージン乗せてる説』です。

D2Cとは『Direct to Customer』の略です。

日本語で言い換えるなら、『一気通貫』が近いかもしれません。

要は商売の流れ『企画→製造→流通→販売』の工程を、全部1社内で完結させることを指します。


昔からそういった企業やブランドはたくさんあったと思うんですが、D2Cって響きはカッコいいので、最近ベンチャーやスタートアップ界隈でよく聞く言葉になっています。

あと、マージンは『利ざや』や『手数料』という意味です。

めっちゃ噛み砕いていうと『儲け』です。

例えば『10%マージンを乗せる』っていうと、100円の商品が110円で販売されて、10円(=100円の10%)が売ったひとの儲けになるって感じです。


それで、本題の『D2C意外とマージン乗せてる説』っていうのは、よくD2Cのメリットというか強みって、『一気通貫によってお得な値段で、高品質な商品を買える(=消費者にとってメリット!)』というのがあります。

ただ、heyの佐藤さんが小売業界を見ている肌感として、『別に一般的に言われているほどD2Cがお得なわけではない』ようです。

(あくまでも、話を聞いたぼくの解釈ですが!)


そもそも、なんでD2Cがお得なのかというと、マージンを取るひとが少ないからです。

D2Cじゃない、一気通貫じゃないブランドは、流通や販売を他の業者にお願いしています。

そして、それぞれお願いされた流通業者や販売業者も利益が必要なので、それぞれマージンを乗せます。

でも、そもそも商品を企画したブランドも利益が必要なので、じぶんたちのマージンも乗せます。


という感じで、各層でそれぞれマージンが重なっていくので、結果的にお客さんに商品が届くタイミングでは高い値段になります。

ところがそれがD2Cだと、すべて自社でやっているから、マージンが少ない(=お得な値段で買える)という理屈なのですが、、、

佐藤さんの話を聞いたぼくの解釈では、『意外とマージンを乗せてるブランドもある』んだなあと思いました。


まあたしかに、佐藤さんに言われて、個人的に思い当たるD2Cブランドの値段を考えてみたんですが、どれもけっこう高い.....

それを『ブランディングの結果』と言ってしまえばそれまでですし、『高品質な原料を使っているから、原価率が高いだけ』とも言ってしまえばそれまでなんですが、いずれにしろ、佐藤さんは

『マージンが大きいブランドは、いまはいいけど、中長期的に見ると廃れていくと思う』と言っていました。


ちなみに、これがD2Cのよくある4パターンなのだそうです。

少々見にくいですが...!

というか、めっちゃ見にくい......!

一応解説しておくと、1番左の内訳が、上から『マージン』『商品原価』『人件費その他』です。これは、『品質が高い』パターン。

3層の真ん中の『商品原価』が、他のパターンより分厚くなってますよね。


同じのをもう1回載せます。

左から2番目と、1番左の違いは『商品原価』の割合です。

左から2番目のほうが、『商品原価』の割合が小さくなっていて、そのまま料金も安くなっています(他の3つのパターンと比べて、棒グラフの高さが低い)。

これは、『商品が安い』パターンですね。



3番目は、1番上の『マージン』の割合が大きくなっています。

これが、佐藤さんのいう『いまはいいけど、中長期的に見ると廃れていく』パターンです。


最後4番目が、1番下の『人権費その他』が大きくなっています。

これは、販売員に高い給料を払ったり、設備投資に力を入れたりしているということで、『良サービス』ということになっています。

ということで、全部のブランドがそういうわけでは必ずしもないですが、一気通貫で値段そのものとその内訳を全部じぶんで決めることができるので、マージン(利益)をいっぱい取っているD2Cブランドもいるよという話でした。


・・・


最後3つ目は『D2Cの本質はTACの消滅』です。

このイベントに出るまで、ぼくも『TAC』っていう言葉を知りませんでした。

よほどマニアックな言葉なのか、グーグル検索でもなかなかヒットしなかったです。

(資格の学校関連の情報がいっぱい出てきた...)


略としては『Traffic Acqisition Costs』らしいです。

無理やり日本語に直すと『トラフィック獲得コスト』。(直せてない)

めっちゃぼくなりに咀嚼した結果、『お客さんに自分たちの商品を知ってもらうためのコスト』、めっちゃ雑に言い換えると『広告費』ですかね。。。


で、3番目のキーワードは『D2Cの本質はTACの消滅』なので、このいわゆる『広告費』が消滅したことが、D2Cの本質だと、佐藤さんは言っていました。

リアル店舗しかなかった時代は、各ブランドは、自分たちの商品を知ってもらうためのお金を、百貨店や、いまでいうコンビニに払っていたわけです。

名目上は、広告費というより『賃料』って感じかもしれないですね。

そうやって、ひとがたくさん来る場所に商品を置いてもらわないと、お客さんに商品を買ってもらえませんでした。

リアル店舗でしか、お客さんとの接点がなかったので。


そして、ECが普及しただけでは、TACは消滅しません。

ECの普及によって、リアル店舗の役割は変わりましたが、TACの必要性は変わらなかったんですね。

広告費を払う場所が、リアル店舗から、Amazonや楽天、Googleに変わっただけでした。


じゃあなにによってTACが消滅したのかというと、1番大きな役割を果たしたのが『SNS』です。

SNSによって、TACが消滅しました、というか、いまの時代になって改めてD2Cという名前で一気通貫ブランドが注目されるようになりました。


SNSで情報発信をすることができるようになったので(細かいことを言えば、HPでもブログでも情報発信のツールであればなんでもいいんですが)、お客さんと『直接』つながることができるようになりました。

一言で言うと、『指名買い』されるようになったということですね。


なんか服を買いたいなーと思って百貨店に行って、そこで『たまたま』見かけた服を買うのではなく、『自分はこのブランドの服を買うんだ!』と決めた状態で、リアル店舗に足を運ぶなり、ECで買うなりという行為に及びます。

お客さんのほうから来てくれるので、わざわざ百貨店やAmazon、楽天、GoogleにTACを払う必要がありません。

こうしてブランドとお客さんが直接つながれるようになり、TACが消滅したことこそが、D2Cの本質だと、佐藤さんは述べていました。


・・・


最後に、そういったD2Cの隆盛をふまえて、オンラインストア『STORES.jp』を運営している佐藤さんから、最後のスライド。

たしか、『これからこういう世の中になっていくよ』的なスライドだった気がします。

これまた見にくくて恐縮なんですが、丸は左から『Direct Connections』『Crowd Softwares』『All Niche』です。


要はこの3つの丸が時代背景で、『Direct Connections(=お客さんと直接つながる)』『Crowd Softwares(=テクノロジーの発達で、簡単にお店を立ちあげられる)(=これが STORES.jp)』『All Niche(=嗜好の多様化)』といった時代背景を踏まえて、下の変化が起こります。

これまで小売業は『Entrepreneurs(=偉大な起業家?)』しかできなかったものが、『SMBs(Small and Medium Business)(=中小企業)』でもできるようになって、そしてみなが『Brands(=ブランド化)(=TACの消滅!)』していく!


一言で言うなら、『小売業の民主化』っていう言葉が近いかもしれません。

テクノロジーの進歩を中心とした時代背景の変化によって、みんながどんどんん小売の売る側になっていく(というか買い手と売り手の境界が溶けていく)ということだと思います。


ということで、気づいたら5,000字超えのちょっとボリューミーな記事になってしまったんですが、これからの小売業を中心にした時代の変遷について整理できた、とても勉強になる会でした!


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