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代ゼミ物理の為近先生の講義の話と、「THE TEAM 5つの法則」を読んだ感想

人生において、一度だけ「将来なりたい職業」が明確な時期がありました。大学を卒業したら予備校の講師になりたい、というものでした。

結果からいうとまず大学卒業しませんでしたし、予備校の講師になりたいというのも大学入って1週間ほどでどうでもよくなったので、本当に一時期の話です。

予備校で物理の講義を聞いて感動する

もう16年も前になりますが、高校を卒業してから1年間、代々木ゼミナール、通称代ゼミで浪人生活をしていました。

その東大理系コースの物理の担当だったのがタイトルにある為近(ためちか)先生です。この方の影響をものすごく強く受けました。サイトを見る限り、今でも現役で代ゼミの講師をされているようです。


為近先生は、当時の代ゼミ物理講師の中でNo.1の人気講師だったと思います。濃いキャラクターや雑談の豊富さで人気や話題を集めている方も多いなか、純粋に「講義力の高さ」で人気を博していた講師でした。

個人の感想として聞いていただきたいのですが、「解説がわかりやすすぎて感動して鳥肌が立ったり涙がでてくる」程度には自分にとっては素晴らしい講義でした。

※物理の講義で感涙していた頃の私※

現役時代、物理は苦手意識しかありませんでした。なんとなく公式を当てはめて、たまたま使い方があっていれば解ける、のような散漫な理解だったと記憶しています。

参考書や先生によっては「微積(微分と積分)を使えるとすぐ解ける」のような方も多く、それがなおさら物理をややこしくしていました。

徹底して一貫した解法と、そうする理由を示し続ける

為近先生の物理の教え方はおおむね以下のようなものでした。

1.問題に書いてあることをすべて図に書き出す
2.そこで起きている現象がなんなのか考える
3.その現象にどんな物理法則が働くか考える
4.その法則を示す公式を用いて式に書き出す
5.計算して終わり

当たり前だろう、と言われるかもしれませんが、1年間通してこのやり方以外で解法を示すことがほとんどありませんでした。力学、波動、熱力学、電磁気、原子までとにかくこの解法を徹底して教えていました。

思い出しながら書き出してみたら脳内再生される程度には、このようなことを繰り返し言っていたと記憶しています。

「(1~4までを指し)ここまでが物理な。ここから先?ただの計算。」
「(すごく簡単に噛み砕いて解説して)これ、言っとくけど東大の問題やぞ?これ聞いて、難しくて解けないって人いるか?いないでしょ?全員解けるんだって。」
「東大でも京大でも、受験物理なんて図に書いて方程式たてて計算するだけ。それで全部解ける。」
「この問題、どこで微積が必要なの?微積なんて要らん。」

※記憶の中では、冬の直前講習で1度だけ「ここではてっとり早く微分しちゃいましょうかね」がありました。

習ったことがある方には共感いただける人も多いと思いますが、全ての問題がすごく簡単に解けるイメージしかわかなくなってくるのです。

もちろん、その感覚だけで実際に全部解けるなら苦労はないのですが、好きな教科は?と聞かれて「数学と物理」と答えられる程度には物理が好きになりました。おそらく、浪人時代の勉強の7割くらいは数学と物理に充てていたと思います。本番では思い切り失敗しましたけど。

※代ゼミあるある「講師にサインもらう」※

彼から受けた影響は、受験物理の面白さ以上に、「複雑に見えることをシンプルに噛み砕いて伝えることが、いかに価値のあることか」という点でした。

これは現在でも自分が仕事をする上で重要視しています。4年前に「10年つかえるSEOの基本」というSEOの入門書を出版したのですが、このコンセプトもその影響を如実に受けています。

※あと6年いけます※


本題:「THE TEAM 5つの法則」を読んで

さて、あちこちで素晴らしいと評判の、リンクアンドモチベーション麻野さんの著書「THE TEAM 5つの法則」を読みました。

組織づくりやチームマネジメントに関して、

・どう言語化していいかわからない
・自分なりに説明しようにも自己矛盾が消せない
・ケースバイケースで済ませたくないが、共通の解が見つからない

など悩んでいたことに対して、的確に要素分解しながらそれぞれに指針やヒントが見事に示されているな、と感じました。

※この分類からして唸った※

「分かる」の手前には「分ける」がある、とはよく言いますが、チームの性質ごとに要素分解された上での解説があるからこそ、これだ、と言い切れなかった物事について、輪郭がよりくっきりしたなと感じています。

この投稿でも書いたとおり、序盤3割くらい読んだ段階で名著の予感しかせず、言ってしまえば組織づくりに関するビジネス書を読んでいるだけなのに、読み進めるうちに高揚感すら感じました

その感覚になんとなく懐かしさを感じ、なんだろうと思い返すと、かつて為近先生の物理の講義を受けているときのそれに近い感覚だと気づきました。

※前半の話はそれを伝えたかっただけです。

チームづくりに関わる全ての人におすすめ

この書籍に抱いた特徴的な感想は「全員におすすめできる」です。

・こういう会社にはおすすめできる
・こういう組織を作りたいならおすすめ
・経営者というより中間管理職向け
・こういう悩みを持ってるならこれがおすすめ

はたくさんありますが、もはや古典とされるようなスタンダードなものを除いて「全員読んで参考にするべし」と言える本はそんなに多くないと思っています。

この書籍は、特定の企業の事例を掘り下げながら帰納的に共通法則を見出したり、あるいは特別に目新しい概念の重要性を説くというよりも、

「チームづくりにはこういう法則があるから、あなたのチームがどの属性に当てはまるか考えて、それぞれこのように考えてみてはどう?」

のように、あらゆるケースに対する解法のヒントを指し示している書籍という位置づけだと捉えています。

総じて、組織開発やチームビルディングに関する国内ビジネス書の定番、ロングセラー化は間違いない良著と思います。まだ読まれていない方はぜひ手にとって読んでみてください。


※純粋な書評はたくさんあるので、そちらをご覧いただければと思い、自分なりの感想としてのポエムを書かせていただきました。


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