「サブウェイ行こうぜ」
必要な買い物が終わったので、昼ご飯に何か食べようと家族連れで賑わうフードコートをうろうろする。ラーメンにカレーにチャンポンにマクドナルド。日本のフードコートは、選択肢が多い。そういえば一階の隅にサブウェイがあった。サブウェイのサンドイッチはカナダでもう飽きるぐらい食べたな。食べ物の思い出は、強く記憶に残る。どこでも食べれるのにこのサンドイッチを食べると、色んなことが今も鮮明に思い出される。
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ようやく週末が来たので少し浮かれ気分だ。課題もたっぷり出ているから、ゆっくり過ごすことなんてできやしないのだろうけど。そんなことを考えながら教室を出て、寮に戻る。学校には寮が二つあるが、僕が住んでいるのは一人部屋があるトルンスキホールと呼ばれる寮だ(もう一つの寮は相部屋になるので、少し割高にはなるが今住んでいる寮を選んで正解だった)。
寮は校舎から直結しているので、勉強している気分の切り替えが直ぐにはできない。頭の中は、先ほどまで受けていたFish and Wildlifeのクラスの課題のことでいっぱいだ。一人でできる課題であれば週末に時間をかけて完成させればよいけど、この学校ではチームで取り組む課題や一人でできたとしてもクラスメイトと一緒にやらないと終わらない量の課題(Oh my gosh!)が出されるので頭が痛い。
「せめて今晩だけは課題も何もかも忘れてリラックスしたい…」
部屋のベッドに横になっていると、ドアをノックする音とともにジムの声が聞こえる。
「サブウェイ行こうぜ」
またか…と内心思ったが、金曜日の夕食にサブウェイかピザハットに行くのが僕らにとっての休みに入るための儀式のようなものだ。サブウェイで買ってきたサンドイッチ(ハーフじゃなくてロング)に、7UPとフライドポテトとチョコチップクッキーを部屋で食べながら、PCで映画を見てダラダラすることがこの学校で過ごす中で見つけた週末の楽しみ方なのだ。分かっているとも。不健康極まりない。他のクラスメイト達は、お酒を買いにリカーストアに行ったり、夜にクラブに行く準備をしている。
「お前らも酒買いに一緒に行く?」
「車出せる?」
誰もが週末に入るための儀式を行っている最中だ。そんなクラスメイト達を尻目に僕とジムはサブウェイに行くために駐車場のジムの愛車に向かう。ジム曰く、「フォレストカー」だが、単なる中古のセダンである。Navigation(コンパスを使って方位を使いこなすためのクラス)のクラスの課題で森の中を歩き回った時、森までの移動や別の森に移動する必要もあったので車がないとキツイということでジムはこのフォレストカーを購入するに至ったのだが、僕もこのフォレストカーの恩恵を分けてもらっている。
林業学校の実習や課題は森で行われるのだが、クラスであれば学校が手配したスクールバスが準備されるけど、自分たちで課題をする際の移動手段は自分たちの車か、歩くしかないのである(毎日の課題は森で木の高さや幅を測ったりと常に森に行かないとこなせないので、歩きでずっとやっていくのは辛すぎる)。だから、このジムのフォレストカーには感謝してもしきれない(I can not thank the forest car enough)。
無駄話はこの辺で一旦ストップしてサブウェイに向かおう。折角の金曜日が終わってしまう。
学校から5分ぐらい車を走らせるとガススタンドの近くにサブウェイがある。カナダのサブウェイでも注文の仕方は同じだ。サンドイッチの種類を決めて、バンズ、野菜、ソースを選ぶ。シンプル。それでも、最初はジムの注文の仕方を見様見真似しながら注文していたのだけれども。
バンズは、フットロング(30cm)で野菜は全部入れてもらう。ジムが隣から「ツナにしろ、ヘルシーだから」と何回も言ってくる。他のお肉系のサンドイッチに比べたらカロリーは少ないかもしれないけど...どうせ食べるなら少しぐらい体に悪くともがっつりしたものが今は食べたい気分なのだ。ツナは今日は却下。ビーフにチーズで、バンズを焼いてもらう。野菜を全部入れてもらい、ピリ辛のソースでサンドイッチが完成。ジムがキャッシャーの近くでチョコチップクッキーを追加注文している。「ここのクッキーは甘すぎるんだよなぁ」と思いながらも、夜にお腹が減るので僕も注文する。甘い甘い砂糖の匂いが鼻腔をくすぐる。
二人とも注文したものを受け取り、車に戻る。つかの間の休息を過ごすための準備はこれで整った。後は、部屋に戻ってダラダラするだけだ。さあ部屋に戻ろうではないか!
二人ともサンドイッチを両手に持ちながら寮の部屋を目指す。部屋の前まで来ると、明日の課題を一緒にやる約束をして、「また明日」と言ってそれぞれ部屋に戻る。
金曜の夜なんてあっという間だ。明日は、課題のためにほとんど森の中にいるんだろうな。土曜日に森の中でデータを取って、日曜日は寮のダイニングでみんなでデータまとめて、資料作るか。考えたらとまらなくなるので、まずはサンドイッチを食べよう。ビーフとチーズのコンビネーション。これがまた美味いのだ。ポテトもクッキーも貪ってやる。つかの間であろうと、この瞬間はサンドイッチと映画を見て怠惰に過ごす。悪くない、悪くない金曜日の過ごし方だ。
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日本のサブウェイでは、エビアボカドをよく注文する。
「このサンドイッチは、すごくヘルシーだよ」
卒業後、コンサベーションオフィサーを目指しているジムに勧めてあげたい。彼の目指す仕事は、身体を健康に保つ必要があるから。
エビアボカドは、日本だけなのだろうか。ヘルシーだけど、少し怠惰な味が足りない気がするのは気のせいではないだろう。怠惰な金曜日が懐かしい。食い物の思い出は、今でも記憶に残っている。あれは悪くない金曜日の過ごし方だと今でも思う。
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