かものはし

はやの志保。児童文学者協会会員。創作同人会「駒草」・蒼海俳句会所属。『手のひらの記憶』…

かものはし

はやの志保。児童文学者協会会員。創作同人会「駒草」・蒼海俳句会所属。『手のひらの記憶』結書房2007。13の月の暦ユーザー9年目(kin26白い宇宙の世界の橋渡し)

記事一覧

神様になったレン兄ちゃん

 新しい鼻緒が足にここちいい。太一のはずんだ息が白くぽわんと広がって、すんだ空気にとけていく。新しい年が明けて間もない朝。下駄の音が、カラコロとうれしそうに海辺…

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『グッドアイデア』

小学校の下駄箱って、やっぱちいせぇな。 懐かしい昇降口をちらっと覗き、校舎のわきをぐるりとまわる。 埃っぽいグラウンドの中央には、高さ六メートルはありそうな竹のや…

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『グッドアイデア』

小学校の下駄箱って、やっぱちいせぇな。 懐かしい昇降口をちらっと覗き、校舎のわきをぐるりとまわる。 埃っぽいグラウンドの中央には、高さ六メートルはありそうな竹のや…

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Stay Snake

    冬眠から目覚めたその美しいへびは、すぐに気がつきました。守り続けてきた小さな家の気配が、眠る前とは違っていることに。 その白いへびは、むかしむか…

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目借時

 午後イチの古典の授業っていったら、そりゃあもう地獄っしょ。 始まってまだ十三分。どうあがいてもまぶたがくっつきそうで、俺はノートをとるふりをして、すでに六回は…

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『肩の上のじいさん』

                   六月半ばのある朝、月曜七時半。 眠気を吹き飛ばそうと、洗面台で顔をジャブっと洗う。上を向いた瞬間、鏡の中の俺の右肩あたりで何…

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『bone』 第15回木山捷平短編小説賞、最終選考通過作品

小説 ああそうか。一年ぶりだ。 姉の家の玄関で、靴を揃えながら唐突に思い出した。あの日、おろしたての靴を見て、亜希ちゃんに似合ってる、と笑美子さんは言ったんだ。…

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はじめまして。

ご挨拶ペンネーム、はやの志保です。児童文学を書いています。 ぼちぼち、作品を公開していきます。 どうぞよろしく。

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神様になったレン兄ちゃん

神様になったレン兄ちゃん

 新しい鼻緒が足にここちいい。太一のはずんだ息が白くぽわんと広がって、すんだ空気にとけていく。新しい年が明けて間もない朝。下駄の音が、カラコロとうれしそうに海辺の町に響いている。太一はおとなりの庭に飛びこんで、「レン兄ちゃーん」と大きな声を出そうとして、はっと息をのんだ。

 椿の木の根もとに、一羽の鳩がおちている。

 大きな赤い花がきれいな形のまんま、ひとつだけ、灰色のその小さな体によりそって

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『グッドアイデア』

『グッドアイデア』

小学校の下駄箱って、やっぱちいせぇな。
懐かしい昇降口をちらっと覗き、校舎のわきをぐるりとまわる。
埃っぽいグラウンドの中央には、高さ六メートルはありそうな竹のやぐらが組みあがっている。
「名前のご記入をお願いしまーす」
受付の人に声をかけられ、[生徒ご家族・六年二組]に名前を書く。と、エプロン姿のおばちゃんがびっくり顔でオレを見た。
「かっちゃんのお兄ちゃんの智己君よね? まぁ大きくなって」
 

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『グッドアイデア』

『グッドアイデア』

小学校の下駄箱って、やっぱちいせぇな。
懐かしい昇降口をちらっと覗き、校舎のわきをぐるりとまわる。
埃っぽいグラウンドの中央には、高さ六メートルはありそうな竹のやぐらが組みあがっている。
「名前のご記入をお願いしまーす」
受付の人に声をかけられ、[生徒ご家族・六年二組]に名前を書く。と、エプロン姿のおばちゃんがびっくり顔でオレを見た。
「かっちゃんのお兄ちゃんの智己君よね? まぁ大きくなって」
 

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Stay Snake

Stay Snake

   
冬眠から目覚めたその美しいへびは、すぐに気がつきました。守り続けてきた小さな家の気配が、眠る前とは違っていることに。

その白いへびは、むかしむかし、とある川の神様として大切に祀られていました。祠のあるふもとの村は、たとえ大雨が降っても川が暴れることはなく、長いこと守られていたのです。しかし時がたつと村人の数は減り、神様の存在を言い伝えるものが少なくなりました。へびは少しず

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目借時

目借時

 午後イチの古典の授業っていったら、そりゃあもう地獄っしょ。
始まってまだ十三分。どうあがいてもまぶたがくっつきそうで、俺はノートをとるふりをして、すでに六回はあくびをかみころしている。新学期早々、居眠りをするわけにもいかないし。
いや、まてよ。
眠気と戦おうっていう崇高な態度だからこそ地獄なのであって、この心地よさに身を任せてしまえば、まさにここは天国なんじゃないか? なんたって二年になって最初

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『肩の上のじいさん』

『肩の上のじいさん』

                
 
六月半ばのある朝、月曜七時半。
眠気を吹き飛ばそうと、洗面台で顔をジャブっと洗う。上を向いた瞬間、鏡の中の俺の右肩あたりで何かがモニョリ、と動いたような気がした。
赤と白の、しましま?
何かいけない物を見てしまったような、イヤな予感がして眼鏡をかける。鏡の中にはボサボサ頭の俺。九百九十円で買った白Tシャツの右肩に、ちょこんと乗っているのは、小さい、じいさん。

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『bone』 第15回木山捷平短編小説賞、最終選考通過作品

『bone』 第15回木山捷平短編小説賞、最終選考通過作品

小説 ああそうか。一年ぶりだ。
姉の家の玄関で、靴を揃えながら唐突に思い出した。あの日、おろしたての靴を見て、亜希ちゃんに似合ってる、と笑美子さんは言ったんだ。ひとり頷きながらゆっくり立ち上がると、
「家内の顔を見てやって」
 次郎さんにうながされ、体が硬くなる。
 私は、ご遺体をこの目で見たことがない。
「あ、はい。あの、手を洗ってきてもいいですか」
 とりあえず洗面所に向かう。柔らかいタオルで

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はじめまして。

はじめまして。

ご挨拶ペンネーム、はやの志保です。児童文学を書いています。

ぼちぼち、作品を公開していきます。

どうぞよろしく。