マガジンのカバー画像

イラスト+小説

6
短編小説(小咄?)です。
運営しているクリエイター

#オリジナル小説

小説「シーラカンスと暮らす女」

小説「シーラカンスと暮らす女」

そのビルの住人は全員が引っ越しを選んでいた。ただひとりの女を除いて。
女は落ち着いた様子で、引っ越しはしないと部屋を訪ねてきた管理会社の男にいった。

ビルの内外には急成長したツタがびっしりと巻き付いていた。数日以内に完全にジャングル化するのは間違いなかった。そうなったら危険な動物も増え、人が住める環境ではなくなる。

管理会社の男は、ビルにとどまる人がいたら「自己の責任でとどまる」という誓約書に

もっとみる
小説「パパがゾンビになった日」

小説「パパがゾンビになった日」

わたしが6歳のとき、パパがゾンビになりました。
ゾンビというのは「あー」とか「うー」とかうなって人にかみつく病気です。

お医者さんはママに、心臓がとまってます、食べ物は生のお肉です、といいました。その日からパパはお仕事に行かなくなり、家でぼんやりすごすことになりました。

ゾンビになったパパは子供のようでした。
話しかけてもほんとに「あー」とか「うー」とかうなるだけ。本を読んであげてもやっぱり「

もっとみる