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CXから学ぶ、海外現地法人ができること

経営共創基盤Industrial Growth Platform, Inc. (以下IGPI)さんと2回目のウェビナーを開催するにあたって、献本いただいた『コーポレートトランスフォーメーション-日本の会社をつくり変える- 』や『コロナショックサバイバル』を読み、改めて自分も今まで感じてきた日系企業の海外法人変革を提言していかなくてはと思い、久々にブログを書きます。

1028アジアの日系企業の業績動向・人事課題とポストコロナの海外事業運営について

まず、上の図はFortune Global 500の国別構成企業数の推移グラフだ。Fortune Global 500は売上の大きい企業順に毎年8月にランキングを出すのだが、売上額なので、1位はアメリカのウォルマート、2位以降は中国の石油メーカーやインフラ系の企業が上位に並ぶ。日系企業ではトヨタが10位に入っている。

ご覧の通り、上位500社に入る日系企業(このグラフでいう一番下の水色)は増加していない。これは各社売上が下がっているわけではなく、競合となる企業、特に中国系企業を中心に、より多国籍企業が成長を遂げているのだ。トヨタですら2010年は5位だったのに、2015年は9位、そして2020年は10位。
2020年のランキングは東南アジアの企業では4社(シンガポールから2社、マレーシアとタイからは1社)のみ。他、韓国から14社、台湾から9社、インドからは7社。

これはGDPの成長発展が背景にあるので、ここに中国とアメリカ企業が多く食い込むのは当然なのだが、以前より日系企業が海外で稼ぐことが難しくなってきていると見て間違いないだろう。特に半導体や家電を中心に中国、台湾、韓国系企業にシェアを奪われている。テクノロジーやプラットフォーマーは言うまでもなく戦えていない状態で、日系企業のプレゼンスは日に日に後退をしていると、採用現場から感じる事もしばしばだ。

IGPI社はCX(コーポレート トランスフォーメーション)を掲げ、多くの企業の企業、事業再生を行っている。僕もこのブログにて変革について発信してきたが、このコロナ禍のタイミングで変革をしておかないと、いざコロナ後、蓋を開けたら世界との差がもっと開いていた、なんてことになりかねない。

製造業で起きている工場の日本国内回帰によるサプライチェーンの安定化、地域統括機能を無くしたり、業態やサービスの業態を変える等、徐々に変化が見えているのは好ましいことだと思う。

以下のグラフは日系企業を対象にとったアンケートの結果だ。今年6月時点で同じ質問をした際は「2019年水準の売上までに回復する時期は2021年下半期」と回答した企業が88%だった。それが現在は65%まで下がっている。コロナ禍の影響が各国、各業界で長引く事が想定される。

変化を遂げない限り、コロナが去ってからもコロナ禍がずるずると後ろ倒しに続いてしまう。コロナだけでなく、タイやマレーシアで起きている政治不安、地球規模での気候変動など不確実性は高まる世の中だ。回復がさらに遅れる事も想定される。

1028アジアの日系企業の業績動向・人事課題とポストコロナの海外事業運営について

事業としての良い形は、GAFAMのように全世界市場、同一製品、同一価格で展開できる事だろう。半導体やリチウム電池部品、ヘルスケア製品、食料なども同じ考え方になる。
一方で、現地にカスタマイズをする(せざるを得ない)のであれば、徹底的にローカル企業よりも現地に入り込み、品質と価格優位性も担保できる状態でないと、太刀打ちできない。

日系企業の多くは日本本社の方針、本社が立てた戦略を海外現地法人が従っているが、稼ぐ力を磨くにはローカルの採用・育成をし、各市場のニーズをくみ取るしかない。「日本の良いものをそのまま海外に持っていく」だけで、付加価値をつけない限りは市場には受け入れられない。

では、どうするか? もちろん安易に選択できる解などない。

でも、ひとつ始めやすいことを挙げるとするなら、現地法人のトップは、本社以外にメンターやビジネスパートナーを作っておく必要があると、僕は思っている。僕はいつも会社外部にメンターをつけ、戦略立案の参考、相談もしたりする。外部からの視点をなくして、自社のことばかり見ていたら、市場や社会、未来が見えなくなるからだ。

現に、数年前より変更していた当社の戦略が、今回のパンデミックで助けとなった。以前は当社の売上構成比率は日系企業の割合が大多数だったが、今では日系以外のグローバル、ローカル企業が日系の比率を超えている。各地でよりローカル型に注力したことが実を結んだ。各国がロックダウンなどでビジネス停滞に苦しむ中、景気影響を受けにくい産業へのアプローチもしてきた事も良い結果をもたらしてくれた。

CXは企業の変革を指すものだが、元をたどればそこに必ず個人の変革があるはずだ。自分の変革活動の第一歩は、人に話を聞いてみる事なんだと思う。

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