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私的詩手帳

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2021年4月の記事一覧

あかるく たのしく はずかしく

あかるく たのしく はずかしく

出逢ったときのことは
不思議とおぼえてないけど
心のなかのたりないピースが
ぱちん
かろやかな音をたてて
小気味よくはまりこんだ
そんな感覚をおぼえた瞬間のことは
心に残ってる
たしかうち そのとき こんなこと言ったね
ごめん いま しあわせ

どんな苦しきときでも
なんかしらんけど
へらへらしてると
深刻ぶってないと
誤解されるうちら
ほんとは不安で不安で仕方がないし
強がってるわけでもないのに

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ネクターとアンブロシア

暖色から寒色へうつりろいながら
でもなんだかあたたかくあけてゆく
やすみの日の朝
AORをききながらふとんでごろごろ
なにもすることもなくなにもなく
それでも心と体のおくそこから
泉のようにわきあがる不思議な温度
天井にすきとおった虹をみたあとで
ふとんに頭までくるまれば
布地にしみついた体臭さえ芳醇に発酵して
たおやかな輪舞でわたしをつつみこむ
それは この世のしあわせぜんぶ
あつめてにつめてか

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ひびのつつ

ひびのつつ

考え事して籠もりつつ
筒から世界を覗きつつ
そういう日々を送りつつ
自分に問いを投げかけつつ

津々浦々を夢みつつ
どこへも行けずにくさりつつ
ストビューめぐりでごまかしつつ
近所の散歩で満足しつつ

期待と不安をシェイクしつつ
シェイカーさばきを鍛えつつ
そういう日々を送りつつ
カクテル作ってすすりつつ

おうちで焼肉食らいつつ
焦げたお肉もつまみつつ
忘れず野菜も焦がしつつ
精をつけては持てあ

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牛の歩み

牛の歩み

切れども切れども髪は伸びる
洗えど洗えど垢は浮く
いつもどおりじゃないいつもの日々から
丁寧にふるいにかけた
よりすぐりのめんどくさいばかりが
背中のくぼみに降り積もり
風呂に入りたまに髪を切るのがいやになる
それが営みなんだとわかっていても
いつもよりもいつもじゃないからって
うずくまる
まるくなる
まずくまる
風呂も床屋も
遠ざかる

たぶん何も変わらない
どうせ何も変えられない
そんな顔なじ

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ごめん、いま、しあわせ

ごめん、いま、しあわせ

オベリスクをアラベスクと間違えたきみ
オフスプリングをオフスプリングスと思ってたぼく
他愛もないことを言いあって 笑いあって
すり傷かすり傷をなめあいながら
きつい日々をなんとかやりすごしてます

ごめん、いま、しあわせ
しあわせなのにごめんはないでしょ
そんなやりとりがあったね
きみにとっては些細かもしれないけど
ぼくにとっては宝物

おたがい歩みが遅いぼくら
歩幅と歩調をあわせれば
手と手で体

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六畳一間のオデッセイ

仕事の十分前まで うすぐらい部屋で
ふとんにくるまって
ベニー・シングスを聴いてた日

昼のひととき 出窓の日だまりに身を寄せて
ノンアルコールビールを
すすった日

仕事のあいま 自分をいつくしむように
かさついた手にハンドクリームを
ゆっくりすり込んだ日

西日のまぶしさに目を細めながら
これからくる仕事の量をはかって
腕組み ため息ついた日

定時ぎりぎりに舞いこんだ仕事が終わらなくて
エナ

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永遠とかいうやーつ

ラジオから流れる
人なつこいメロディーにのせた
人類史上もっとも大仰なラブソング
永遠なんてこれっぽっちも
信じてなかったはずなのに
永遠の愛をねがってうたわれるそれは
ふしぎと心をとらえるんです

手許に置いておける永遠とかいうやーつ
手頃なのにいとおしくてたまらない
いやばかにしてないですよ
本気で壊れるくらい抱きしめたいから
永遠なんてばかばかしいかもしんないけど
ばかばかしくならないガチな

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春とニーソ

まるで春風が
ニーソックスをはいているかのような
あなた
弾んだ空気をかきまぜるような
かろやかなステップ
ふくらはぎの筋肉のゆらめきに
ひざからずり落ち ニーソックス

信号待ちでニーソをなおす
伸びた繊維が光沢で ささやくように
陽光への賛歌をうたう
青信号でふみだすその脚に
一刹那
光をやどし ニーソックス

公園の散りかけの桜の下
立ち止まり振りかえり
ほほえむあなた
不意の風に桜吹雪

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ありがとうのむこう

あなたにひとこと
ありがとうが言えて
ほんとうによかった
だって
わたしのことで
苦しんでほしくないもんね

わたしが今
あなたの
そして みんなのそばに
いられないのは
あなたのせいじゃないし
たぶん誰のせいでもない
でも
確かなことはひとつくらいあるんだよ

あなたに出逢えてよかった
みんなに出逢えてよかった
ほんのいっときでも
いるべき場所をしめしてくれて
ほんとうにうれしかった

どうして

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ring a bell

さよならをちゃんと言いたいのは
ごめんなさいをちゃんと言いたいのは
ぼくも同じなのです
だから
あなたへ
この手紙を綴ります

あなたが時折見せた
無邪気さの影
ぼくはかってに
その裏に
痛みを住み着けてしまいました
思えばそれは
ぼくが
ぼくであることの
苦しみを
ぼくの昏い一部分を
なすりつけてしまったことに
等しいかもしれません

ごめんなさい
ぼくの心の重力が
あの日々のあなたを
苦しませ

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一等星

半人前の歩みなのに
いつのまにあなたを追い抜いて
そんなつもりなかったのに
くすぐったいさびしさ

わたしが追いかけてたはずの
あなたは言う きみはシリウスだと
一等星は 自分が一等星なのを
気づけないって

たといあなたが二等星だとして
まぶしいことにかわりはなくて
そして 北極星だって二等星
だからわたしは あなたを目指せるのです

きみは きみでいてください
抱擁とともに あなたに贈られた言

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むすび目

過去がそっと
わたしの肩に手を置く
でも
握りかえすと引いていってしまう
振りかえると逃げていってしまう
それはたぶんわたしの顔をしている
あの人に似たわたしの

心の扉は
だれかの鍵でなければ
開けられない
あの人が持ってたはずの
わたしの鍵
いつのまにか
今はあなたが

初夏の小径で
太陽と果実たちのにおいを吸いこんで
ふくらんだハンカチ
頬よせてほころんだ
あなたの顔
今もまぶたの裏に

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カミカゼ バイシクル

あぜ道横道 たんぽぽ咲いて
ガニマタ漕いで 紅いママチャリ
菜の花誘う 道草埋め草
そよ風ふかす カミカゼバイシクル

カロリーメイトを ほおばりながら
生けるわたしは ママチャリ走らす
レディメイドの ギアの速度で
名前負けする カミカゼバイシクル

生まれもっての ゆるさとやさしさ
人助けには 無茶します
あなたの笑顔は 値千金
わたしの名前は カミカゼバイシクル

命知らずか 世間知らずか

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シカゴのおとと

土曜の午后のよっぱらい
お魚焼いておつまみに
今日のさかなはシカゴのおとと
おビール片手に台所

焼けるおととはカラフルで
ぱちぱち音をたてている
換気扇はフル回転で
外まで香りをお届けします

ラジオからはAOR
見知らぬなつかしさ
おととの焼けるにおいとおどって
わたしは あまい夢をみる

上手に焼けたシカゴのおとと
こうばしく焼けた身に
お醤油ひとたらし