春とニーソ

まるで春風が
ニーソックスをはいているかのような
あなた
弾んだ空気をかきまぜるような
かろやかなステップ
ふくらはぎの筋肉のゆらめきに
ひざからずり落ち ニーソックス

信号待ちでニーソをなおす
伸びた繊維が光沢で ささやくように
陽光への賛歌をうたう
青信号でふみだすその脚に
一刹那
光をやどし ニーソックス

公園の散りかけの桜の下
立ち止まり振りかえり
ほほえむあなた
不意の風に桜吹雪
揺れるポニテ
絵になる気になる ニーソックス

あたたかな芝生に
スニーカー脱いで
寝転がるあなた
黒い布地が気温を吸い込み
うれしそう たのしそう
寝っ転がって寝そべって
春先 つま先 ニーソックス

膝にはらり 桜のはなびら
つまんで眺めるあなた
もう片方の手は
口ゴムに指をつっこんで
ぽりぽり
赤みの跡つく細いふともも むずがゆそう
くすぐったいな ニーソックス

ふとももに跡がつくのに
なんでニーソなの
聞かれたあなたは言う
まだちょっと寒いし
そういう気分だし
なんか ちょうどいいんだよね
きまぐれ きままな ニーソックス

西日が黒のニーソを
ほんのり暖色に
ぼくらも春を全身に
しみしみ 染み込ませ
そろそろ帰ろっか
手をつなぎ
ゆうぐれ たそがれ ニーソックス

やがてくるさわやかな季節
ニーソを脱ぎ捨てて
かわりにあなたの素足は
初夏をまとうのでしょうか

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?