六畳一間のオデッセイ

仕事の十分前まで うすぐらい部屋で
ふとんにくるまって
ベニー・シングスを聴いてた日

昼のひととき 出窓の日だまりに身を寄せて
ノンアルコールビールを
すすった日

仕事のあいま 自分をいつくしむように
かさついた手にハンドクリームを
ゆっくりすり込んだ日

西日のまぶしさに目を細めながら
これからくる仕事の量をはかって
腕組み ため息ついた日

定時ぎりぎりに舞いこんだ仕事が終わらなくて
エナドリとDJプレイの生配信で
自分を鼓舞しまくった日

重い仕事をはらすきのうの酒がぬけなくて
酔いのさめない自分の頬をたたきながら
ノーパソのキーボードを乱れ打った日

仕事が暇なすきま時間に
ぼんやりタイムラインをながめて
わけもなくにやりとした日

仕事場に なぜか置き去りにされた
あの人の憂鬱を思いつつ

自宅で気ままに たぶんいつも以上に
サボろうとするあいつと自分にくぎを刺しつつ

その日々のすべてが
つながりながらも孤独な日々のチームプレイ
それはさながら六畳一間の無観客試合
息のあったガタガタのチームワーク
そのハーフタイムで
シャドウボクシシングに汗と涙を流しつづける

でも
それも悪くない
無観客試合でしか
できないこともなくはないんだ

同じ場所での時間の流れと
心のゆれの協同作業がつくる星座
たぶんそれは
たくさんの家々から立ちのぼる
夜空へのはしごに見えるだろう
しかしだれ一人のぼることなく
おのおののひとりぼっちの旅が
光るはしごを編み続ける

ならば
共に行こう
どこにも行けなくても
たとえ一緒じゃなくても
互いに恨みあってても
あまた編まれたはしごの先には
きっと同じ希望
根拠はないけど信じたいんだ

この金縛りのオデッセイ
孤独では終わらせない
孤独なままでは終わらない

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