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ゆる日記 2022.11~12

2022年11月8日

宮古島からゲストをお迎えして、葛尾村で再エネのシンポジウムを開催。

にっちもさっちも詰んでしまっているように思える日本経済だけれども、地域脱炭素はポジティブに取り組める数少ない領域なので、沖縄でも福島でも前向きにがんばっていきましょうという結論に至った。

ビジネスや制度の話はもちろん大事なのだけれども、個人的にはもう少し深く「地域脱炭素とは地域のビジョンのことだ」という話ができればよかったかなと思った。地域の中でエネルギーを調達し、エネルギー事業で地域経済を回そうとするときに問われるのは、「われわれの地域は何に力を借り、それをどんな価値に換えて生きていくのか?」ということに他ならない。太陽か、風か、森か、水か、動物の糞か、人間が出すゴミか。それとも海外で掘り出した太古の動植物の屍に、これまで通り依存しつづけるか。その地域で生きることの意味が、まるで変ってくるような気がしてならない。

とはいえエネルギー産業自体のことも、もっと勉強しなきゃな・・・。知らないことが次から次へと出てきて、いっこうにキャッチアップできそうにない。

2022年11月13日(日)

100年続く年刊誌『みんなでつくる中国山地 003号 ここで、食っていけるの?』が発刊。短い紹介文を書かせていただいた「あぶくま山の暮らし研究所」のみなさんに一冊持っていったら、福島大学の学生さんたちがゼミ活動で集まっていた。

少しお昼ごはんのおこぼれをいただきながら、話をしていた。都路で有機農業に取り組むあるお兄さんは、近くの腐葉土が線量の関係で使えないから長野から買ってきていると仰っていた。中国山地で食っていくことよりも、阿武隈山地で食っていくことのほうが難しい、と安直に言うつもりはない。ただ、この地域特有の困難はまだまだあるんだなと改めて実感した。そして、それでもこの地域でやるんだという人たちの言葉からは、静かなパワーを感じる。落ち着いているけれど、目の奥は燃えている、あの感じ。

2022年11月18日(金)

休みをもらって、東京・下北沢の「本屋B&B」へ。小松理虔さんと瀬下翔太さんのトークイベントにお邪魔した。

私が福島に来るようになったのは、ほとんど小松理虔さんの書く文章に影響されたからと言っていい。支援する/されるという関係だけではない、世俗的で個人的だけれども同時に社会的な、好奇心を起点とした福島とのかかわり方があるんだと、学生のころに夢中になって読んだ。その体験があったから、実際にいわきでインターンしたり浜通りで研究したり、果ては転職して福島に住み着いたりなどするようになった。はじめてお会いしたので普通に緊張したけど、ご挨拶ができてよかったです。また葛尾の話もしたいし、人生わからんどうしよう、みたいな話もしてみたい。

よそから来た人間は、飛び込んだ先の環境に対して、一見、遅れているなとか意識が低いなと思ってしまいがち。だけれども、ローカルにあるイマココをまずは許容することが大事なのだ、という話が心に残っている。Bank Bandの「forgive」という曲を思い出した。

昨日を許して
次の僕らへと
自分を許して
次の未来へと

Bank Band feat. MISIA「forgive」


不完全で中途半端で、何もできないし、どうしようもない。みんなだいたいそんなもん。だから、まずは他者も自分も中途半端であることを許容して、カリカリしすぎずに生きていきたい。クソみたいなことはたくさんあるけれど、全部正面から受け止めてたら大変だし。

そういえば同じBank Bandの「to U」に、”頑張らなくてもいいよ”という歌詞がある。「若いんだからがんばってね!」「えらいね!これからもがんばって!」とかはたまに言われるけど、「がんばらなくてもいいよ」はあんまり言われることがない。なんてほっとする言葉なんだ・・・と聴く度に思う。

2022年11月19日(土)

大学の同級生のかつおが表参道の山陽堂書店で写真展を開催しているとのことだったので、最終日にお邪魔した。自費出版の写真集『どこで暮らしても』に収められている写真の展示。

かつおの写真からは、ひとりでうつっている人にも、複数人でうつっている人にも、肯定的なまなざしでカメラを向けているような感じを受けて、それがすごくいいなと改めて思った。おひとりさまも、仲間といるのも、他者とすれちがうのも、なんか、それぞれ、生きてるって感じがする。孤独であることと、わかりあえる仲間といることと、わかりあえない他者と対峙すること。いち個人の中でも、どれかのバランスが崩れるとつらくなったり、つまんなくなったりする。

2022年11月20日(日)

文学フリマ東京。文フリにははじめて行った。18日のトークイベントでも言及があった瀬下さんたちの『移住と実存』がめあてだったけれど、回っていると他にもいろいろおもしろいのがあって買いすぎてしまった。きりがないので、商業出版されていたりネットで買えたりするやつは一旦見送って、そこでしか買うチャンスがなさそうなのに絞った。それでもこのボリューム!

文フリ東京の戦利品たち。前日に買ったかつおの写真集も入れている

『移住と実存』は後日早速読んだ。高校生やキャリアの初期段階での地方移住がもたらす実存の危機を扱ったもの。なかなか活字ではみることのなかった議論だと思う。

たしかに、若い移住者について、ソトコトやTURNS、greenzっぽい文脈だったり、<復興>の物語に当てはめようとする磁場はたしかに存在している。普通にしているだけなのに、過剰に褒められたり、視察のおじさんたちに拍手されたり、都市生活者からうらやましがられたり。立場が違うだけで、みんな仕事は大変だし、それぞれままならないことを抱えているし、そんなに変わんないのになと思う。<地方創生>や<復興>などという単に「やってる感」を出すためのフレーズに、実存を塗りつぶされるなんて全く本意ではない。気にしすぎずに地に足つけて、未熟なりに昨日よりいい仕事をしていくしかない。

2022年11月21日(月)、22日(火)

地域新電力の業界団体の全国大会に参加するため、愛知県豊田市へ。

地域によって地域新電力ができた経緯も目的も使えるリソースも異なるので、その違いがよくわかっておもしろかった。ホストの「三河の山里コミュニティパワー」は中山間地域の集落の課題解決にがっつり入り込んで一緒に汗を流していて、エネルギー産業はやはり地域の根っこの部分だし、どんな課題領域にも接続していくんだよな・・・と改めて感じる機会になった。多者協働はたしかに大変でキツイけれども、地域で生き続けていくにはやるしかない。

12月、バタバタしていて、気付けば年末になっていた。友人に愚痴を聴いてもらったりなどして、なんとかやっている。徳谷柿次郎さんの『おまえの俺をおしえてくれ』という本がめっちゃ良かった。グッドなミュージックとともに、どうせクソみたいだけど退屈する暇もない世の中を軽やかに乗り切っていきたい。あとこれ以上寒くなんないでほしい……!

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