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【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-評価制度編-

1.はじめに

人事制度の中でも多くの方の関心が高いのが評価制度だと思います。
一方で中々世の中に評価の事例や作り方も出回ってはなく、悩まれている方も多いと感じています。

今回は、評価制度の目的や評価制度の作り方についてお伝えしていきます。

<人事基幹制度-全体像->

図28

他記事については以下よりご覧頂けます⇩

①スタートアップ人事制度設計マニュアル-全体像編-
②スタートアップ人事制度設計マニュアル-等級制度編-
③スタートアップ人事制度設計マニュアル-目標管理編-
④スタートアップ人事制度設計マニュアル-評価制度編-
⑤スタートアップ人事制度設計マニュアル-報酬制度編-

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2.評価制度とは

-評価制度の目的

評価制度とは、その名の通り社員のパフォーマンスや能力等を評価するための仕組みとなりますが、その目的は大きく3つあります。

1点目に、公平な処遇(報酬)を決定することです。

こちらは、評価制度と聞いて一番イメージがつきやすいと思います。

まだ、人数が少ない会社では社長が全員の成果や行動を把握しやすく、コミュニケーションも取りやすいため、明確な制度がなくても問題ない事もありますが、社員数が拡大してくると正確に把握することが難しくなってきます。

また、評価される社員だけでなく、評価者も増えてくると、評価者ごとに重視する観点が異なるケースも発生するため、会社として共通の基準が必要となってきます。

2点目は、会社のビジョンや大事にしたい価値観を発信することです。

後述の通り、評価制度にも成果評価・行動評価といった一定の型はあります。
一方で、同じ評価軸でも何を重視するかや自社にあった評価項目を加えることで、社員へのメッセージは大きく変わっていきます。

例えば、”社員全員が新しいことにどんどん挑戦していくような会社にしたい”と考えた場合には、挑戦の行動ができているかを評価する項目を入れることで、会社としても重要視していることを発信することができます。


このように、会社の考えや価値観をうまく評価項目として表現していくことが重要となってきます。

3点目は、人材育成を促進していくためです。

評価制度を設計し適切に運用することで、あるべき姿と社員の現状の実績とのギャップ=課題が明確になります。

その上で、課題に対して上司が適切にフィードバック(称賛・指摘)を行うことで、あるべき姿への成長が促進されるようになります。

また、評価を踏まえて適切な処遇を反映していくことで、社員自身も貢献意欲があがり、能動的に成長を目指しやすい環境を創ることができます。

評価制度と聞くと、適切な処遇の反映のみを想定されているケースも多いのですが、ビジョン・価値観の発信、育成の促進もきちんと考慮して設計することが重要となります。

<評価制度の目的>

図29

-目標設定との関連性

評価制度と大きく関連するのが目標設定です。

評価軸として”成果”を取り入れる場合は、目標設定を基に評価することが多くなっています。

<目標の成果評価への活用イメージ>

図30

営業部門などは売上など明確な成果が定義されていますが、管理部門などでは数値など誰が見ても測定できるような成果の設定が難しくなっています。

そのため、上司・部下ですり合わせた上で設定した目標の達成=成果として、目標の達成度を評価していくことが多くなります。

その他には、前述した会社が求める姿と現状のギャップを埋めるための行動目標などを目標として設定して、評価を意識した行動を日々取ることを目的に目標を設定することもあります。

目標設定の作成方法など詳細は別記事にてまとめていきますので、気になった方は、是非ご覧頂ければと思います。

「【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-目標管理編-」


3.評価の観点

-人事評価に用いられる評価の観点

人事評価の観点は多様ではありますが、良く評価軸として利用されている観点は以下となります。

<主な評価の観点>

図31

特に日本企業においては、成果(業績)+コンピテンシー評価を行うことが多く、純粋な成果だけでなく成果に繋がる行動や行動特性ができていれば一定の評価がされるような設計となっています。

また、スタートアップにおいてはコンピテンシーがバリューに置き換えられているケースも多く、ハイパフォーマーの特性ではなく会社として重要としたい価値観を基に評価する設計となっています。

これらはあくまでも一例で、前述の通り、各社が求める社員の姿に合わせて特に必要な観点を選択することが重要になります。

-評価制度事例

最近はスタートアップ中心に人事評価も公開されることが多くなっていますので、2つほど事例をご紹介させて頂きます。

初めに株式会社メルカリさんです。
メルカリさんではOKRという目標設定の手法を導入されており、OKRによる成果+メルカリとして大事にしたい価値観であるバリューを評価軸として評価を行っております。

成果・バリューそれぞれに重みづけなどはされておらず、成果・バリューの発揮度を総合的に上司が勘案して、最終評価(レーティング)及び報酬への反映が決定されています。

一見上司のさじ加減に思えそうな評価なのですが、メルカリさんでは1on1も徹底して行われていたり、バリューの体現している人がどのような社員なのかが具体的に皆さんイメージできており、納得度高く評価が行えるのだと思います。

<メルカリ様評価イメージ>

図32

続いて、株式会社ネットプロテクションズについてです。

ネットプロテクションズさんでは、コンピテンシーを評価軸としており、コンピテンシー基準に基づいた360度評価を行うことで報酬に反映されるようになっています。

コンピテンシーは共通基準とグレード毎に設定された複合スキルの2軸で設定されています。

ネットプロテクションズさんでは、ティール型組織を推進されているため、特定の上司ではなく360度評価の結果が反映されるような仕組みとなっております。


<ネットプロテクションズ様評価イメージ>

図33

このように、各社の目指す組織像や考えによって評価のメッセージは異なりますので、自社に合った検討をしていく必要があります。

4.評価制度の作り方

いよいよ評価制度の作り方についてです。

評価制度作成のステップは以下の通りです。

<評価制度作成ステップ>

図34

 ①評価の全体像決定

まずは、評価制度の全体像を決定する必要があります。
要するに、何をもって評価しそれぞれがどのように報酬等に反映されるか方向性を検討します。

評価要素については、先ほど紹介した評価の観点を参考に、自社で評価したい観点を選択します。

<(再掲)主な評価の観点>

図35


評価要素は複数でも構いませんが、あまりにも多すぎると複雑になりすぎてしまうため、特に重要な観点を選択することをお薦めします。

また、この段階では仮で構いませんので、選んだ評価軸がどのような方法で評価され、最終的に処遇(報酬)のどの部分に反映されるかを検討します。

全体像におけるアウトプットイメージは以下となります。

<評価制度の全体像>

図36

 ②評価内容の設定

次に各要素の具体的な評価内容の詳細を検討します。

こちらは選んだ評価軸について検討する内容は異なりますが、各軸ごとの評価項目の数や要素について検討します。

代表的な評価要素においては、例えば以下の点を検討します。

<評価内容の検討ポイント>

図37

以下評価シートのようなものがアウトプットイメージとなります。

図38

 ③評価基準の設定

次に先ほど検討した評価項目・要素を評価する上での評価基準を設定します。
評価基準は、誰が評価しても一定の目線を保って評価できるようにするために設定します。

例えば、成果評価では何を持って評価が高い=成果が高いとするのか、行動評価であれば何を持って定められた行動を発揮できたのか?を明確にしていきます。

具体的には、段階の数と各段階における評価基準を設定する必要があります。

こちらも代表的な評価軸における設定方法を検討します。

まずは、成果評価ですが、成果評価は目標を活用するため比較的シンプルで、達成率を活用することが多くなっています。

例えばMBO・OKRを用いた評価基準ではそれぞれ以下などがアウトプットイメージとなります。

<成果評価基準イメージ>

図39

OKRの場合は直接達成度を反映しないため、少し裁量のある基準となっていますが、どのような成果があれば評価されるかを評価基準として表しています。

続いて、役割・行動(コンピテンシー)・バリュー・スキル評価についてです。

これらについては、設定した評価要素に応じて評価基準を設定していく必要がありますが、方法としては2通りあります。

1)設定した段階毎に評価基準を明確に設定する
例えば「協働」という評価要素を5段階で評価すると決めた場合、等級Ⅲの5段階は××、4段階は××、といった形で段階別の基準を明確にする方法です。

アウトプットイメージは以下となります。

<役割・行動・バリュー・スキル評価-段階別の評価基準設定型イメージ>

図40

各段階の基準が明確になるため、目線の統一はしやすくなりますが、作りこみに時間がかかります。

2)評価基準は共通のものとし、評価の参考に等級別の行動(役割・スキル・バリュー)基準を設ける
1)とは別に、評価基準は成果評価のような共通の基準を設ける方法もあります。
例えば以下のような基準を設定します。

<役割・行動・バリュー・スキル評価-共通評価基準型イメージ>

図41

その上で、別途等級別の行動(役割・スキル・バリュー)基準を以下のように設定します。

<等級別の基準イメージ>

図42

実際の評価は以下の基準を参考に、等級通りであれば真ん中、上位等級の発揮度であれば最高評価といった形に判定を行います。

こちらの方法の場合、①に比べて裁量が評価者に寄ってしまいますが、作りこみの工数は低くなります。

スタートアップにおいては求める評価基準が短いスパンで変化する可能性もあるため、弊社が制度設計を行う際は②を推奨しています。

 ④処遇への反映方法決定

評価全体像でおおよそは決定しましたが、最後に処遇への反映方法の詳細を決定します。

まず検討すべきは、評価軸ごとのウェイト(重みづけ)についてです。
いくつか評価軸がある場合、重要な要素が報酬に大きく反映されるように設定します。

例えば、基本給の反映に成果評価・行動評価を用いる場合、100点満点の内、成果評価が全体の70点分・行動評価が全体の30点分といった形でウェイトを設定します。

続いて、各評価によって報酬がいくら増減するのかを紐づけていきます。
多くの場合は、各評価の点数の合計点によって総合評価を決定し、総合評価の段階に応じて報酬を決定しています。

アウトプットイメージは以下となります。

<評価と報酬の連動イメージ>

図43

総合評価にまとめず、各評価軸ごとに基本給の金額を変動させる(例:成果評価の結果は1万円UP、行動評価の結果5千円DOWN、計5千円UP)方法も考えられますが、計算が複雑で運用が大変になるため、スタートアップにおいては総合評価にまとめて報酬に反映することを推奨します。

5.まとめ

評価制度の作成方法は以上となりますが、全体を通じて共通しているのは裁量と基準の詳細さのバランスが重要となります。

特に評価基準などは、細かく定義すればするほど明確にはなるのですが、作りこみに時間がかかったり、運用後も見直しが大変となります。

スタートアップにおいては、組織やフェーズが変化する中で求められることも変化していくことが想定され、人事制度も調整が必要となってくることが考えられるため、あまりにも作りこみすぎることは逆効果と考えています。

そのため、一定は上長の裁量・判断に任せる部分を設け、最後の目線合わせは評価会議などで行うことで担保していくことが望ましいと思います。

是非本記事を参考に各社にあった評価制度を作成してみてください!

等級・評価など他記事で触れていますので、是非こちらもご覧ください。

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【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-目標管理編-
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