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【保存版】報酬制度 設計方法①

弊社では、これまで100社以上の人事評価制度に関するコンサルティングを行ってきた知見をもとに、実際に運用可能な一般的な人事制度(等級制度・評価制度・報酬制度)をスピーディ(2,3ヶ月程度)に設計する方法をご紹介しております。※詳しくはこちらの記事をご覧ください⇩

今回は、これまで「評価制度」、「等級制度」をご紹介してきまして、いよいよ本シリーズ最後の『報酬制度』についてより深く、詳細にご紹介して参ります!


1,はじめに…

 各社ご支援を行う中でも「報酬額は代表の判断により決定しており、人数が増えるにつれて適切な還元が行えなくなっている」や「社内メンバーへ還元していきたいが、どのような設計をすれば良いか検討がつかず、そのまま今に至っている」など報酬制度に関するご相談をよくお受けしております。

 報酬制度というと、社外への公開はもちろん、社内にも公開されていない場合があり、基幹3制度(等級、評価、報酬)の中でも特に情報を得にくい分野になります。

その一方で、社員の方々にとって労働への対価である報酬は、特に関心の高い部分になりますし、労働基準法との兼ね合いからも制限が多く、慎重に設計を行う必要がございます。

このように報酬制度は、参考とする事例が少ない上に、法令による制限等で設計難易度が高いものになりますので、検討していくポイントや設計時によく出てくるご懸念ポイントについて丁寧にご紹介できればと思います!

2,報酬制度について

改めて、報酬制度とは何を目的に設定するのか、から振り返りご紹介できればと思います。

報酬制度の目的

報酬額を決定するときにルールを設定する目的には
 ①公平性
 ②従業員のモチベーション向上
 ③人件費のコントロール
の3つございます。

①公平性
ルールが無ければ『同じ等級ⅢのA評価なのに、なぜAさんは5,000円昇給率で、私は3,000円なのか?』といった質問に回答する事が難しくなります。
その結果、納得性が低くなり②の通りモチベーションにも影響を及ぼす可能性があります。

②従業員のモチベーション向上
還元に対する納得性が低い場合、「頑張ったところで報われない」、「成果を出しても他のひとと変わらない」と社員が受け取り、モチベーションを大きく損なう可能性があります。そして、「頑張ろう」という意気込みを持った人が、意欲を損なうばかりか、最悪の場合には外部へ流出してしまう可能性もあります。

そのため、ルールを設ける事により納得性を高め、モチベーションを高める事が重要です。

③人件費のコントロール
特に、頑張りに対して沢山還元したいと考えているような会社の場合、ルールを設けず思うままに還元してしまっては、人件費が予算を圧迫してしまう可能性がございます。
一方で、人件費の関係から都度評価結果を調整してしまっては、還元への納得性が低くなり②へと繋がっていきます。
そのため、全社員が対象となる画一的なルールを設定し、調整することを推奨しています。

以上要約しますと、報酬制度は「社員のモチベーション喚起と離職予防」「人件費のコントロール」のこの2つのバランスに鑑みつつご決定する必要がございます。

3,還元方法の種類

では、実際にメンバーの方の還元方法の種類をご紹介していきます。

大きく報酬の種類には、「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の2種類がございます。

・金銭的報酬とは

その名の通り、金銭による報酬です。
金銭的報酬は4つの要素で構成されており、最も直接的かつシンプルなものです。 例)基本給、手当、賞与、インセンティブ

金銭的報酬の一覧

①の基本給がベースとなり、その他の要素はオプション(任意で設定)となっております。一般的に多いものとしては、①基本給、②手当、④賞与の3要素での組み合わせになっております。

また、手当を支給される場合には、「何を対象に手当を支給するのか」「どのように支給するのか(実費/固定など)」をご検討する必要がございます。
支給対象となるもののご参考としては下記の表をご参考ください。

よくご設定されている手当

※割増賃金については、法令に従い支払う形となるため、大きな論点はございませんが、 みなし残業制度(固定制度)等を採用されるかどうかが1つの検討ポイントとしてございます。

会社目線では、みなし残業分については残業代を一律支給となり人件費の見通しが立てやすいことから、スタートアップでは採用されるケースが多くなっています。

その他福利厚生を目的とした手当

インセンティブを支給される場合も、手当と同様に「何を対象に手当を支給するのか」「どのように支給するのか(実費/固定など)」をご検討ください。

賞与を支給される場合には、支給頻度や算定方法について検討を行う必要がございます。

・ご参考:インセンティブ、手当、賞与の違い

ここで、インセンティブと手当、賞与は何が違うのかといったご質問をいただく事がございます。

まず、何かしらの成果や業績に基づいて支給されるものが「インセンティブ」「賞与」、福利厚生や該当者となることで一律に支給されるものが「手当」といった棲み分けになります。

さらに、「インセンティブ」と「賞与」の違いですが、
インセンティブは個人の業績に対して支給されます。一方で賞与は全社的な業績に応じて支給されるものですので、支給の対象となる範囲といった点において違いがございます。

・非金銭報酬とは

続いて、非金銭的報酬についてもご紹介していきます。
従業員へ直接還元する上記のような金銭的報酬のみで構成する場合、シンプルで分かりやすい反面、 福利厚生を充実させた他社と比較するとやや見栄えが悪く、社員の離職や採用の場面で競争力の低下に繋がる可能性があります。
そこで、以下の例のような非金銭的報酬を設定する場合もございます。
例)表彰、やりがいのある仕事の提供、ワークライフバランスの拡充 等々…

一般的には金銭的報酬と組み合わせて設定いただく、トータルリワードの概念のように両軸で設定されることを推奨しています。

トータルリワードの概念図

一方、福利厚生まで充実させた報酬制度とする場合、従業員や求職者に従業員を大切にしているというメッセージを送れる反面、
基本待遇以外にも多くの支出がかかってしまう等のデメリットがあります。

そのため、必ずしも非金銭的報酬を設定する必要があるといった訳ではございません。

スタートアップの場合、金銭的余裕が多くあるわけではないため、無理のない範囲で実施いただく事を推奨しております。

・ご参考:還元方法の考え方

ここまで還元方法の種類をざっとご紹介して参りました。
ご覧いただきました通り様々な支給方法があり、各社それぞれご設定いただいているものが異なりますので、一からご設定される場合「結局、どれを設定すればいいんだろう…?」となるかと思います。

その際の考え方としましては、改めて「今回の制度設計でメンバーに強く訴求したいメッセージは何か」を振り返っていただき、メッセージに即してご選択いただくと良いかと存じます。

・「営業に対して、成果を意識して欲しい」といったメッセージ
 →成果給やインセンティブを設定
・「長く働いて欲しい」といったメッセージ
 →「勤続給」や「勤続年数に応じたインセンティブの支給」を行うなど、

報酬とメッセージの関連イメージ

・・・

以上、まずは報酬制度の大枠として、設計を行うにあたってのマインドや、全体像の把握として一通りの報酬の種類をご紹介させていただきました!

次回は基本給にスポットを当て、設計方法をご紹介できればと思います!
それでは引き続きよろしくお願いいたします。


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