100社以上を支援して分かった、OKR運用のプロが解説するOKR導入のポイント
近年、OKR(Objectives and Key Results)という評価制度を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか?
実際にここ数年で導入された企業も増えており、導入に関するご相談をいただくことも増えています。
今回はそんなOKRの導入を100社以上支援してきた私たち、
ハイマネージャー株式会社から見るOKR導入の効果や導入時に気をつけるべきポイントをご紹介します。
OKR導入を検討されている皆様の一助になれば幸いです。
1. OKRを導入することによる効果は“成果の質”と“心理的安全性”の向上
まずはじめに、今回は
・OKRを既に導入しているが、うまく活用ができていない
・OKR導入を検討しており、効果を最大化させたい
と考えている方々にお役立ちできる内容となっています。
もし、「そもそもOKRとは何か?」を知りたい方は
OKRについての基本的な知識をまとめた、OKRパーフェクトガイドをぜひご覧ください。
それでは早速、OKR導入の効果を見ていきましょう。
一般的には、OKR導入時のメリットとしては、以下のような項目が挙げられます。
・経営からの期待と個人のやりたいことのすり合わせ(=アライメント)が行える
・コミュニケーションの活発化に伴い、リアルタイムのマネジメントが行える
・よりワクワクする/チャレンジングな目標設定ができ、モチベーションに繋がる
実際にOKRを導入している株式会社コロプラ・取締役の菅井健太様は、OKR導入の効果を次のように述べています。
四半期に一度OKR設定のミーティングを行う中で、各メンバーが考えている想いをしっかりと吸い上げ、会社の方針とすり合わせて目標設定ができるようになったため、当初の期待通り納得感をもって仕事に取り組めるようになりました。
現在は、部の方針がOKRとしてツールで全員に共有されており、それに紐づいて各自のOKRも設定されているため、組織として同じ方向性に向かっている感覚が強くなりました。
それがモチベーションの維持に繋がり、導入前と比べてチームの成果の質も高くなっているように感じます。
ウィンセッションという形で送付した称賛を共有することで、お互いに気軽に思っていることを発言できるようになり、組織としての心理的安全性が高まっていると感じています。
参考:HiManagerを活用し、成果の質・心理的安全性の向上を実現。【株式会社コロプラ様】
このように一般的な効果に留まらず、
・成果の質の向上
・心理的安全性の向上
といったOKR導入によるメリットを多くの企業が実感しているようです。
加えて、株式会社コロプラの特徴的な取り組みとして、業務へのワクワク感を担保するために、OKR設定時に通常業務以外の目標を組み込んでいる点が挙げられます。
つい追われがちな目の前の業務だけでなく、「会社としての目的を達成するために、個々人がやったほうがいいと思うこと」を考え、目標として設定することで、内発的な動機付けに繋げています。
OKRをより効果的に活用するうえで重要な、「どんな目標を設定するか」についてお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
2. OKRだけで評価する必要はない。OKRはコミュニケーションを促進し、組織を強くするもの
それではここまでで、OKRを通じてどんな目標を立てるかイメージいただけたかと思います。
しかし、ここで多くの企業様からいただくのが、「人によって内容が大きく異なる指標を用いて、どのように評価すべきか」といったご質問です。
確かに、同じ職種であったとしてもワクワクするポイントが千差万別である以上、OKRで立てた目標が人によって大きく異なることは想像に難くないでしょう。
それではOKRで管理した目標は、どこまで評価に反映させるべきなのでしょうか。
結論からお伝えすると「OKRだけを評価に反映させる必要はない」、つまりOKR自体、評価だけを目的にしているわけではない、と理解することが重要なポイントです。
そもそもOKRを導入した目的について、株式会社MUGENUP ・執行役員 小澤 哲也様はこう語っています。
まず、会社としてのミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を見直し、改めて私たちはなぜ・誰のために存在し、将来どのような状態・姿になっていたいのか、を定義しました。
しかし、MVVは抽象的であったり、将来の姿であったりするため、メンバーの足元の行動でそれを常に意識することは難しい。
そこでMVVとメンバーの行動をつなぐ役割として、OKRという目標設定の手段を導入することにしました。MVVが全社OKRと紐づき、全社OKRから個人OKRに落とし込まれていきます。
(中略)
OKRについては、全社の目標を可視化することで「会社の目標を達成するために 、事業部として達成すべきことは何か。また個人として何を成すべきか」というように全社の方向性に合わせて各事業部・各メンバーが動いていくことを促進することに期待がありました。
また、事業部・各メンバーの目標も可視化することで、「上位の目標を達成するための目標がこれでよいのか」「それは上位の目標達成につながる目標設定になっているのか」が議論される土台となることも期待としてありました。
参考:HiManagerを活用し、OKR・1on1・称賛文化の浸透を実現。【株式会社MUGENUP様】
このように、そもそもOKRはあくまで評価だけではなく、自発的な目標設定を行え、企業と個人の目標をすり合わせしやすいという点にメリットがあります。
企業によっては、メイン業務で追う指標(=KPI)以外をKRとするよう徹底するなど、社員が本業以外の業務にも意識的に取り組めるよう設計しているパターンもあるほどです。
私たちも、評価を容易にするためというよりは、「より目標に向かいやすい組織作り」や「マネージャーとメンバーのコミュニケーションを促進する」といった観点でご提案をさせていただくことが多いです。
したがって、OKRが評価に直結していないとしても、問題ではありません。
(具体的な評価のパターンはOKRパーフェクトガイドをぜひご覧ください)
ぜひ自分たちにとって、何のためにOKRを導入するのか改めて整理してみると良いでしょう。
3. OKRで最初に考えるべきはO。個人のOを育てていく
以上で、OKRのメリットに関してはお伝えできたかと思います。
それでは具体的にOKRを導入するうえでの注意点、気をつけるべきポイントを見ていきましょう。
その前に、以下で改めてOKRの特徴をおさらいします。
・経営からの期待と個人のやりたいことのすり合わせ(=アライメント)が行える
・コミュニケーションの活発化に伴い、リアルタイムのマネジメントが行える
・よりワクワクする/チャレンジングな目標設定ができ、モチベーションに繋がる
実はこの中に、OKRにおいて難しいポイントが潜んでいます。
それは「ワクワクする/チャレンジングな目標設定」。
つまり、OKR導入後につまづきやすいポイントは、“全員が”ワクワクできるような目標設定を行うことです。
実際に某IT系企業からは、OKRを導入し、ワクワクするはずの目標を立ててもらったはずが、結果的に過度にチャレンジングな目標となってしまい、成果に結びつかなかったという声を聞いたこともあります。
それでは、全員がワクワクできる目標設定を行うにはどのようなポイントに気をつけるべきか、以下にまとめていきます。
■あくまで追うべきKRにOを合わせるのではなく、OありきでKRを考える
KRを先に設定してしまうと、Oを考える際に制限がかかってしまいます。
結果的に数字を追うことが目的となり、疲弊してしまうといったことを避けるために、まず自分が夢中になれるOを考えてみましょう。
その上でマネージャーは「事業で成果を上げるために個人にKRを追わせる」という考え方ではなく、「個人のOにつながるからこそ、KRを追う」というコミュニケーションを取ることが非常に重要です。
全員がリモートワークを行う中で、OKRをマネジメントに活用している株式会社Waris 代表取締役・河 京子様はこう語っています。
組織の人数も増え、より協力関係や連帯を促しながら事業を進めていくにあたって、「灯台」のように全員が目指す方向を照らしていく存在が必要でありOKRの導入を検討していました。
個人やチームの目標を「見える化」することで、自分自身でその目標を意識し続けること、かつすぐに思い返すことができることはセルフマネジメントにおいて大事なポイントだと思っていました。
そこでOKRを中心に日々の活動に関してセルフマネジメントを促し、メンバー間の協力支援関係を促進、チーム連携が進み、全社のVision達成に向けた目標に対して皆で向かっていく実感を持てたら、と考えていました。
参考:HiManagerを活用し、リモートワーク環境でのチーム連携強化・称賛文化の醸成を実現。【株式会社Waris様】
もし中々目標が考えつかない・・・という場合には、「自分が今やりたいことは何か」「そもそも何のために入社したのか」、まずは自分起点で考えてみると、そこにヒントがあるかもしれません。
■適切なフィードバック/リアクションを行う
先述のコミュニケーションとも関連しますが、せっかく目標を立てたとしても、自己満足で終わってしまったり、形骸化してしまったりすると効果は弱くなってしまうでしょう。
OKRだけでなく、1on1やウィンセッション(称賛)を組み合わせ、目標としての適切さや、目標に向かうための努力を可視化し、モチベーションに繋げることが重要です。
それらを実際に組み合わせ活用されている効果を、株式会社Sapeet・村上 大昌様はこう語っています。
会社として従業員がやりがいを持って仕事をするためにサポートしていくことは必要だと思っていたため、称賛制度含めたエンゲージメント施策に取り組みたいと考えていました。
(中略)
OKRで週次単位で目標への進捗のアクションを確認、アクションに対して即座に称賛を送る、高い頻度で1on1を行うことやサーベイによりメンバーの様子を適宜確認し対応していくといったリアルタイム性の高いマネジメントが重要と考えていたので、それらを1つのツールで再現できるのは大きなメリットと感じていました。
コロナウイルスの影響でフルリモートになっていた時期と重なっていたのですが、週に最低1回皆が称賛を受けることが習慣となったおかげで、日々見えづらい周りのメンバーの頑張りが可視化されたり、それぞれが離れて仕事をしている中でもモチベーションを保って仕事に取り組むことができたと思います。
参考:HiManagerを活用して新たな称賛文化の醸成とマネジメントの仕組み化を実現。【株式会社Sapeet様】
このように、コミュニケーションを取りながら目標を立て、適切なフィードバック/リアクションを行っていくことはどんな企業にとっても非常に重要なステップです。
実際に株式会社Sapeetでは、称賛によるモチベーション向上に加え、リアルタイムなコミュニケーションが功を奏し、メンバーを適切な方向に導くマネジメントが行えるようになったとのことです。
ぜひOKR導入時の参考にしてみてください。
■採用→入社段階から、ワクワクできる状態を作る
これは直接的な目標設定方法ではありませんが、やはり採用→入社の段階からMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に共感をしてもらうことは非常に重要です。
どれだけ目標設定の意義や方法を伝えても、MVVに対して共感できていないメンバーがワクワクする目標設定を行うのは難しいもの。
したがって、候補者が入社する前から「これがやりたい」と言えるような状態を作り上げることが理想と言えるでしょう。
そのためには、「自社に入社すると何ができるのか」「今いるメンバーは何をやっているのか」を知ってもらうことも重要です。
実際に株式会社マネーフォワード クラウド経費本部 本部長・今井 義人様は、ミッションの浸透にOKRを活用していると言います。
ミッションを決めた当時にいたメンバーは納得感を持っていたんですけれども、メンバーが増えることに合わせて、ミッションを浸透させていくことができていなかったんです。
ミッションがチームに定着していない状態が嫌だったんですよね。
そんな時、1年前くらいに社内で「OKRやるぞ」という機運が高まってきて、クラウド経費本部でもOKRを導入したいと思いました。ミッションを定着させる補助輪として使いたかったんです。
人数が増えていく時に組織文化を意識していないと空中分解することも多いので、早めに手を打った方がいいと思います。
参考:HiManagerによって「ミッションの浸透」と「組織力の底上げ」を実現。【株式会社マネーフォワード様】
社外に魅力を伝えるために、社内でのMVVの浸透を図る。
そして、採用の段階からMVVに共感してもらい、より良い組織を作る。
「より良い組織を作っていくために、今の組織を最良化する」といった両輪を忘れないようにしましょう。
4. まとめ
いかがでしたでしょうか。
企業の目標が異なるように、そこで働く個人の目標も一人ひとり異なります。
OKRはそんな個人のモチベーションを引き出し、成果に結びつける上で非常に効果的な手法です。
ただし、ただ制度・考え方を導入するだけでは、中々効果を感じづらいでしょう。
あくまでも、経営層/マネージャーとメンバーのコミュニケーションを通して、文化を作っていくことが非常に重要です。
ぜひ各社の事例や考え方を参考に、自社にとって最適な方法を考えてもらうきっかけになれば幸いです。
OKRの理解を深めたい方はこちら
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