ローリング・ストーンズの好きな曲11位-20位
魔王讃歌
ストレイ・キャット・ブルース
ギミー・シェルター
スウェイ
ワイルド・ホース
ハッピー
孤独の中に
ワン・ヒット
ハーレム・シャッフル
スリープ・トゥナイト
■ローリング・ストーンズの好きな曲11位-20位
好きな曲の11位から20位というよりもベストテンに入らなかった曲、順位もつけられないので古い曲から順に並べています。加えて同じアルバムから複数で選ばれている場合はアルバムの曲順で並べています。ベスト・アルバムの定番曲が少ないのは繰り返し聴いた為、麻痺が生じたことが要因になるかと思いますがそれと無関係だったのが「ギミー・シェルター」、「ワイルド・ホース」、「ハッピー」、「ハーレム・シャッフル」、傾向としてアルバムの一曲目やアルバムの最後に配置されている曲もいくつか挙がりましたが曲の配置にこだわる自身の性格を表しているような気がしますし、好位置という事柄が幸いしているのかもしれません。ベスト・アルバムの定番曲、アルバムの一曲目及び最後に置かれた曲、それらに該当しなかったのが「ストレイ・キャット・ブルース」、「スウェイ」、「孤独の中に」の三曲、この三曲が自分自身を印象付ける曲になるのかもしれませんが、確かに「ストレイ・キャット・ブルース」へのこだわりが強いことも自覚、この曲の緊張感を求める余りキング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」を好んで聴いているような気がします。「ダーティ・ワーク」から三曲、キース・リチャーズのヴォーカル曲が二曲、それらが示すように全体的にミック・ジャガーよりもキース・リチャーズの活躍や存在感が目立っているような気がします。
「魔王讃歌」
「魔王讃歌」はローリング・ストーンズが1967年に発表した「サタニック・マジェスティーズ」の収録曲でオープニング・ナンバーです。バンド名が示すように最新の音楽ジャンルを取り入れることはある種、宿命、サイケデリックな「サタニック・マジェスティーズ」はそのような必然性に翻弄されたアルバムなのかもしれません。合わせて聴く側も同様で一般的に評価が低い「サタニック・マジェスティーズ」、個人的にはそうではないことを主張したいですがキース・リチャーズ本人も「サタニック・マジェスティーズ」に対して否定的な意見を述べているのでなんとなく困っています。控えめなギター、でも、印象的な「魔王讃歌」、この曲のギターは主役ではないですが脇役としてのカッコ良さがあります。奥ゆかしい存在感が好感触でキース・リチャーズのセンス良さや冷静な判断が垣間見える曲です。そして、カラフルな装い、パーカッションや管楽器が溢れるくらい賑やか、耳元で虫が飛んでいるような音も再現されていて聞き応えがあります。総じて転がる石には苔は生えませんが合わせてあらゆるものを付着させながら変化することをダイナミックに示した「魔王讃歌」です。後の「悪魔を憐れむ歌」や「アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト」等の伏線となる重要な曲です。
「ストレイ・キャット・ブルース」
「ストレイ・キャット・ブルース」はローリング・ストーンズが1968年に発表した「ベガーズ・バンケット」の収録曲、曲名が示すようにローリング・ストーンズとブルースの関係が重要なことを再確認させられる曲です。付随して「ベガーズ・バンケット」自体がブルースに寄せたアルバムなので率先して誘導する役割にもなっています。一方ではローリング・ストーンズが目指すマインドの中心から離れていて重要な曲、言わば、レア感を楽しんでいる曲です。つまり、緊張感、恐怖を煽り動揺させる曲が少ないのがローリング・ストーンズですが前作のサイケデリックに彩られた「サタニック・マジェスティーズ」はそれに踏み込んだアルバムでその流れを引き継いでいるのが「ストレイ・キャット・ブルース」でした。原点回帰、それが前提で賞賛される「ベガーズ・バンケット」、とは言え、「サタニック・マジェスティーズ」と切り離して語られることに違和感があるので払拭させたい事柄です。サイケデリックな「サタニック・マジェスティーズ」の反省だけではなくて発展も踏まえてのブルースな「ベガーズ・バンケット」の成功、それを「ストレイ・キャット・ブルース」は示しているはずです。
「ギミー・シェルター」
「ギミー・シェルター」はローリング・ストーンズが1969年に発表した「レット・イット・ブリード」の収録曲、オープニング・ナンバーです。ギターのイントロは不穏なムード、何か良くないことが起こりそうな気配に動揺させられます。付随して前作のオリジナル・アルバム「ベガーズ・バンケット」のオープニング・ナンバーの「悪魔を憐れむ歌」を必然的に連想させられますが、むしろ、同アルバムの収録曲である「ストレイ・キャット・ブルース」みたいに緊張感が漂う「ギミー・シェルター」です。同様に後の「スティッキー・フィンガーズ」の「シスター・モーフィン」も緊張感がありますが、これら三曲はローリング・ストーンズの緊張する曲三部作として個人的には位置付けています。ローリング・ストーンズを聴くのは主に興奮したいという欲求ですが、当然、それだけでは飽きてしまうので必要な曲です。興奮よりも緊張を欲する時はキング・クリムゾンを聴きます。つまり、キング・クリムゾンのファンに支持されそうな三曲でもあります。「ギミー・シェルター」の特徴はゲスト・ミュージシャンの活躍、メリー・クレイトンの歌声は際立っていて個人的には同アルバムに収録されている「無情の世界」のロンドン合唱団と後の「ワン・ヒット」のジミー・ペイジ、それらを加えてゲスト・ミュージシャンが活躍する曲三部作にも位置付けている「ギミー・シェルター」です。
「スウェイ」
「スウェイ」はローリング・ストーンズが1971年に発表した「スティッキー・フィンガーズ」の収録曲です。手元にあるガイド・ブックにはローリング・ストーンズの中で最も過小評価をされている曲として「スウェイ」を紹介しています。この曲はアルバムの二曲目、一曲目が「ブラウン・シュガー」ということからそのように書かれていますが実に納得の意見でありました。付け加えると三曲目が「ワイルド・ホース」、つまり、代表曲の二曲に挟まれていて野球の打線に例えるとまさに二番バッターみたいな感じです。曲そのものは良いですが「ワイルド・ホース」と雰囲気が似ていることも災いしているのかもしれません。「スウェイ」は嘆き、憤りが感じられる曲、皮肉にもまるで評価に対してのそれらのような奇妙なシンクロ現象が展開されていますが、最早、自虐ネタを披露する笑い話みたいになっています。ローリング・ストーンズのアルバムの曲の並びには信頼を寄せているので納得の二曲目、個人的にはベストの配置と思っています。よくよく考えると二番バッターでバントが上手かったジャイアンツの川相選手を思い出しました。「スウェイ」は名曲であることは間違いないと思います。
「ワイルド・ホース」
「ワイルド・ホース」は1971年にローリング・ストーンズが発表した「スティッキー・フィンガーズ」の収録曲です。ベスト・アルバムの定番曲で間違いなく代表曲、とは言え、十代、二十代の頃は特に好きな曲ではなかった「ワイルド・ホース」です。「悲しみのアンジー」に並ぶバラードですが若さゆえの退屈さから好きになるまでには至りませんでした。「悲しみのアンジー」は初めて聴いた瞬間から好きになれたのは分かりやすく悲しみが示されていたからだと思います。一方、「ワイルド・ホース」は三十歳を超えるくらいに好きになりましたが老いを自覚したことが要因と思われます。つまり、癒し効果も兼ね備えた曲、若い頃は癒されたいという欲求は皆無、やはり、疲労に無自覚な若い頃では無理もないと実に納得できる事例ですが、もっと、分かりやすいのがカーペンターズ、十代、二十代の頃はそのCDの購入を将来にするとは思いもしませんでした。カーペンターズのイメージが示すように振り返る過去、重ねた年月が自分自身へ加わったことも要因、センチメンタルな気分や郷愁を呼び寄せる「ワイルド・ホース」ですが、似たようなタイプで「アズ・ティーズ・ゴー・バイ」があります。つまり、それを深化させたのが「ワイルド・ホース」、例えるなら大人になったことを自覚させる「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」、老いたことを自覚させる「ワイルド・ホース」です。
「ハッピー」
「ハッピー」は1972年にローリング・ストーンズが発表した「メイン・ストリートのならず者」に収録されている曲、キース・リチャーズのヴォーカル曲及び代表曲です。喜怒哀楽に例えると楽に位置付けられる明るい曲、更に例えるなら二連休の初日の午前中、まさにタイトルが示すように開放感と幸福に満ち溢れた「ハッピー」です。キース・リチャーズのヴォーカル曲と言えば穏やかなバラードだったり、たまにレゲエだったり、そして、「ハッピー」みたいにロールを強調したロックンロールのイメージがあります。コンサートではそれら数曲を歌って会場内を盛り上げます。自身も楽しみにしていて最も興奮する瞬間です。これは自身に限ったことではなくて身に覚えのあるファンは多いはずです。そして、その多くのファンが驚いていることが海外でのその時間帯はトイレ休憩という話、席を離れる外国人の国民性です。その話に驚く日本人、席を離れる外国人、これはある種、ローリング・ストーンズあるあると言えるでしょう。「ハッピー」はもちろん好きな曲で聴く度に気分が晴れますが先の話を聞いて以来、日本人ということを自覚する瞬間にもなりました。因みに二連休の初日の夜はキース・リチャーズの穏やかなバラードが頭の中に浮かんでくることがあります。翌日が仕事となると浸る余裕もないですがそれについては日本人も海外で暮らす人も一緒なのかもしれません。
「孤独の中に」
「孤独の中に」は1980年にローリング・ストーンズが発表した「エモーショナル・レスキュー」の収録曲です。ローリング・ストーンズのバラード曲及び癒される曲や涙を誘導する曲は「ワイルド・ホース」や「悲しみのアンジー」が真っ先に浮かびますが「メモリー・モーテル」や「愚か者の涙」も名曲です。「メモリー・モーテル」は喜怒哀楽で示すと喜の要素が強くて割とキース・リチャーズのヴォーカル曲によくあるタイプ、「愚か者の涙」は哀の要素が強くてどちらかというと「悲しみのアンジー」に近いような気がしますが僅かながら「ワイルド・ホース」の要素も感じられます。他のバラードの多くがそれらに分類されると思いますがそれらをさかのぼって列挙すると「テル・ミー」、「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」、「レディ・ジェーン」、カバー曲では「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」等になります。唯一、属さないのが「孤独の中に」、この曲は基本的には喜怒哀楽で表すと哀になりますが怒の感情も多く含まれています。割合で表すと30%と70%くらいで哀の要素が多いような気がします。ローリング・ストーンズの楽曲を見渡すと意外に見当たらないタイプの曲で目を引く「孤独の中に」です。この曲もミック・ジャガーの表現力が際立っていて「悲しみのアンジー」と同様にアクターとしての素質を覗かせています。
「ワン・ヒット」
「ワン・ヒット」は1986年にローリング・ストーンズが発表した「ダーティ・ワーク」の収録曲でオープニング・ナンバーです。同アルバムの「ハーレム・シャッフル」に続くシングル曲でプロモーション・ビデオも印象的、ミック・ジャガーとキース・リチャーズの不仲がはっきりと示されていて動揺させられますが曲の内容と見事に一致、皮肉にも上手く背景や裏事情が活用されています。それらの後押しもあるのかもしれませんが音楽的にも刺激的で好きな曲です。ジミー・ペイジの名演、バック・コーラスも良好なアクセントになっています。特にイントロのアコースティック・ギター、後に加わるエレキ・ギターは緊張感と爆発力があります。ある種、レア感、話題性満載の楽曲ですが個人的にはオープニング・ナンバーとしての役割が歴代のアルバムのそれらと異なっていることに魅力を感じています。だいたいのアルバムが「ブラウン・シュガー」みたいに軽快なロック・パターンと怪しげなムードの「ミス・ユー」みたいに流行を取り入れた楽曲の二通りがローリング・ストーンズのオープニングのイメージですが「ワン・ヒット」はロック・ナンバーではありますが「ブラウン・シュガー」とは異なるマインドが示されていて新鮮な始まりを体験できます。因みにエンディング・ナンバーは「イッツ・オンリー・ロックンロール」の「フィンガープリント・ファイル」がいつもと違う余韻へ誘導しています。
「ハーレム・シャッフル」
「ハーレム・シャッフル」は1986年にローリング・ストーンズが発表した「ダーティ・ワーク」の収録曲、合わせてシングル曲です。独特のムードの曲調、加えてシングルでのカバー曲という珍しさにドキドキとワクワクが混在、まさにシャッフルされていて刺激的なナンバーです。ローリング・ストーンズのそれまでの曲の数々や当時のヒット曲を見渡しても似たようなタイプは見当たらなくて異彩を放っていました。強いて挙げるなら「ギミー・シェルター」、両曲は緊張感があって動揺させられますが「ハーレム・シャッフル」のほうが身近にある危険や恐怖、それに踏み入った時の動揺が感じられます。前作の「アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト」もそうでしたがローリング・ストーンズは流行を取り入れることにこだわってきたバンドです。一方ではカバー曲を取り上げ演奏も継続、途切れることがありません。流行とカバー曲、これらはおよそ正反対な事柄ですがなんだかミック・ジャガーとキース・リチャーズの関係性に似ています。なんとなくのイメージは前方への意識が強く前に進み過ぎるミック・ジャガーの腕をキース・リチャーズが掴んで後ろへ引き戻すような場面が浮かんできます。そのような調整やバランス感覚がストーンズ・サウンドなのかと思っています。「ハーレム・シャッフル」のオリジナルはボブ&アールでアメリカのソウル・デュオ、オリジナルもシャッフルされていて刺激的です。
「スリープ・トゥナイト」
「スリープ・トゥナイト」は1986年にローリング・ストーンズが発表した「ダーティ・ワーク」の収録曲、アルバムの最後に置かれている曲でキース・リチャーズのヴォーカル曲です。曲の終わりの後に短いピアノ演奏、それも効果的で癒される一曲です。そのピアノ演奏も含めて一曲と解釈しても良いのかもしれません。ピアノがメイン、だからと言ってそれが全面に出ているわけではないですがキース・リチャーズがピアノで作った曲なのかと勝手に思っています。これは実際にはどうかはわかりませんがローリング・ストーンズの意外性を楽しむ事柄の一つです。言わば、ストーンズあるあるの一つにベースの演奏に感心してビル・ワイマンの貢献や必要性の重要を再確認することがあります。ところが実際にベースを弾いていたのはキース・リチャーズだったことを後で知ることが何度もありました。「スリープ・トゥナイト」はある種、ピアノ曲、でも、ギターが印象的です。この曲に限ったことではないですが例えば「ミス・ユー」みたいなディスコはそれに侵されることはなくしっかりロックを感じさせられるギターの音になっています。「スリープ・トゥナイト」のギターも同様、ロックに対しての意志や意欲が滲み出ている楽曲です。キース・リチャーズの演奏が前提でそのように思っていますが実際のメインのギター演奏はロン・ウッドのプレイだったら面白いです。