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2018年スニーカーランキング

今年も発表いたします。

2018年にリリースされたスニーカーのなかでもっとも革新的だった順に10点選びました。

相変わらずコラボやSMUというよりは、その元となるプロパー商品に光を当てたいという姿勢は変わりませんので、「あれが入ってない!」とか「あれ話題になったじゃん!」とか、そんなことは知りません。 私見です。


10. NIKE ZOOM VAPORFLY ELITE FLYPRINT

正確にはまだリリースされていないので10位。

その名の通り、3Dプリンターで「プリントアウト」したアッパーでつくられています。

もしこの技術が確立したら圧倒的な製靴工程削減が可能なうえ、プロダクトのパーソナライズ自体も大幅に容易になります。

例えば、つま先が反り上がっていていつもそこから破けるひとや、踵が出っ張っていていつもそこから穴が空くみたいなひとなどにはその部分を補強するようなプログラムをして刷り上げることができるようになります。

素材的な制限はまだまだあります。 ただ、それらが克服されちゃったら、、、どうなっちゃうんでしょうねぇ。。。


9. ADIDAS POD-S3.1

スニーカーにはとりあえずスニーカーとして成立させるために最低限必要な要素というのがあり、この靴には実際に最低限な要素しか載っていないのです。

しかし、この靴でやっているのは、その必要最低限な要素すべてを「アイコニック」に扱うことを課すことでした。

一枚のアッパー、アイレット、タン、ヒールテープ、シューレースホルダーがトラスを一枚かました状態でミッドソール(踵側はブースト)に載り、アウトソールが敷いてある。 それだけ。 ただしそれぞれすべてをアイコニックに。

パーツそれぞれがやたら「ちょっと違う」というノイズがあるにも関わらず、全体としてはスッキリ見えるのは徹底的な割り切りがそうさせているのだとおもいます。


8. MERRELL BARE ACCESS FLEX KNIT

いまさらニットかよ、と。 わかる! 言いたいことはわかる‼︎ わたしもそうおもってました。 でも冷静に考えてほしいのですが、「オブリークシルエットのニット」ってあった?

FLYKNITが登場してから怒涛の追従で各社ありとあらゆるニットをリリースしてきたわけなんですが、どれも言ったらFLYKNITのフォロワーでしかありませんでした。

でもメレルはちがった。 ニットって、ベアフットとかナチュラルランにむいてるんじゃないの?と、きっとおもったんだとおもいます。

つまりどういうことかと言うと、「みんながニットやってるからニット」じゃなくて「自社の向かう方向にフィットするのがたまたまニットという回答だった」んだということ。

この姿勢の違いって実は商品開発としてとっても大きな違いがあって、ある特性があってそれを引きだすための素材がマッチすると、想定していた以上の機能や数値化できない一体感が生まれるんです。

独自路線で行くことの勇気を(勝手に)評価しつつ、ぜひ一度足を入れてみていただきたい。 ただソールのデザインはアッパーに合わせてほしかったけどね。。。


7. REEBOK FAST FLEX WEAVE

独自路線といえば、リーボックは織りで勝負していました。

これがいまリリースされているということはですね、各社がニット!ニット!で「編み」に目を向けているあいだに、リーボックは「いや!織りだ!」って言って研究してきた結果なんですよ。 もうそれだけで泣ける。。。

あんまり話題になってないし、正直機能の発露がうまくっていない(8の字織りを活かすならその稼働をフォローする構造にしなきゃだとおもう。 使われかたがあんまり巧くない。。。)のですが、この路線で進めていったらあらたな世界が見えてくるかもしれないので、ぜひ続けてほしい。

みんながナイキやアディダスみたいになったら嫌だし、売れなかったら即研究止めちゃう3位以下のブランドの姿勢には本当に辟易している。 がんばってほしいなぁ。。。


6. ECCO EXOSTRIKE

今年はECCOの年でしたね。

デザインがガラッと変わったのもあるし、プロモーションがこれまでで最も積極的になった年だったのではないでしょうか。

プロダクトのデザインがガラッと変わったのはなによりなんですが、最もすごいのは各社が天然素材の進化はこれ以上はないと見切りをつけていたところにECCOは「革こそまだ進化の余地があるんだ」といって、自社タンナーで次々と新しい革を生み出していっていること。

各社革は使っているわけですけれども、それはあくまでも革屋さんに「こんなのが欲しいよ」とリクエストしてつくってもらっているに過ぎないわけで、革屋さんはがんばってリクエストに答えるけど結局使わない、みたいなことが普通に起きるわけです。 そしたら新しいものは出てこなくなりますよね。

ECCOがすごいのは、使うんです。 本当に。

あたらしい素材というのは安定供給できないから高くなったり、数がつくれなかったりする。 でもECCOはつかっちゃうんです。 高くてもいい、数が少なくてもいい。 とにかくリリースしようよと、世間に問うてみようよ、と。

いまこんな姿勢でものづくりに真摯に向き合っている会社、なかなかないよ。。。


5. NIKE A-COLD-WALL AIR FORCE 1 LOW

コラボは評価しないとか言っておきながら、コラボじゃねーか!と言われそうですが、、、すいません。。。

これもリリースは12/21らしいので詳細がわかっていない状態で評価します。 だから覆る可能性があるかも。

ただわたしがこのティーザー画像で驚いたのは、補強と補強の割れ目。

最初は「あぁ、AIR FORCE 1をシームレスにしただけなのね」とおもっていたのですが、よく見ると補強が上に載ってないんですよ。 他のパーツと同じ高さなの。

つまりこれ上から補強を貼り付けているんじゃないんです。

こういう状態にするとしたら、

①一枚ベースがあって、その上にいちいちで合わせたパーツたちを合わせて一気に貼りあわせる。

②二枚の革を素材違いごとに合わせて繋げ、後から溝を掘る。

かなぁとおもうのですが、実際のところはわからない。。。 なんせ①にしても②にしても、立体にしたときにその溝が割れて広がってしまうだろうから。。。

うーん、現物が見たい。。。


※12/22 追記分
該当の部分はFLYLEATHERだったようで、同じ材料を表裏で使っていた模様。 FLYLEATHERは50%皮、50%繊維なので、熱圧着が可能。 つまりたぶん①の作り方で合ってる、とおもう、んだけど、、、現物が見たい(即完でしたな)。。。


4. REEBOK BEATNIK

2018年の復刻オブザイヤーは確実にこれでしょう。 元々は1993年にアウトドアサンダルしてリリースされていたもの。

世の中のコンフォート志向に合わせたのももちろん、元々を知らないひとには「これリーボックなの!?」という意外性も含め、企画をしたかたとそれを実現させた方々がすばらしいとおもう。

ただミッドソールはもうちょっとやわらかくしてほしかったし、薄めの色の靴下にめっちゃ色移ったけどね。。。


3. NIKE EXP-X14

スニーカー業界の特徴って「トップ企業が一番尖ったことをしてる」ということだとおもうんのです。 天下を取っても、安心しない。 どんどんあたらしいことやる、それがトップでい続ける方法。 マークパーカーさんがいつぞや、イノベーションこそがナイキのガソリンみたいなこと言っていたかな。

だからたくさんの実験を行い、たくさんの失敗をする。 そのなかで時折、ふと「これまでの文脈ではないけど、いいもの」が生まれたりする。

通常、そういうものを見せたときのひとの反応は「うちらしくない」「これまでのラインナップとかけ離れすぎてる」「どう説明していいのかわからない」「どう売ったらいいのかわからない」「どこに置いたらいいのかわからない」、そんな感じだとおもう。

でもナイキはちがう、尖ってるから。 売っちゃう。 そんな感じでリリースされたんだとおもいます。

明らかにそのときのラインナップにはハマらないデザインはどこかそれでも過去の面影を匂わせるとおもったら、1999年のAIR ZOOM DRIVEから発想したそう。 面影、影も形もないけど。。。

しかしここまで機能とデザインの印象が合っているのもめずらしい。 このデザインを見たときだれもが思うことでしょう、「すばしっこそう」と。

どうでもいいけど、ELLEGARDENとONE OK ROCKの対バンのときにTAKAさんが履いてましたね。


2. NIKE AF1 JESTER XX

女性(に限らずですが)の性差別に関しての社会活動が活発化している昨今、スニーカー業界でもいち早くそういったプロジェクトが持ち上がったのがNIKEでした。

当たり前といえば当たり前のことなはずなのに、スニーカー業界でも女性の存在というのは大きく露出してきたわけではありません。いまも昔も、数多くの女性が関わりつづけているのにも関わらず、です。

The 1 Reimaginedというプロジェクトには1000人は超えると言われるNIKEのデザイングループから14人の女性が選抜され、AIR FORCE 1とAIR JORDAN 1というアイコニックなアイテムをベースに新たなアイテムを生み出すというものでした。

結果、生み出された商品群を見れば明らかですが、これまでなんどもありとあらゆる表現が取り入れられてきたはずのAIR FORCE 1とAIR JORDAN 1なのに、これまで見たこともないような表情で仕上がってきた10型がリリースされたのです。

しかもただ奇抜なだけではない、洗練されたボリューム感、シルエット、トリム、そして絶妙なカラーと素材感。 驚くべきことに、以後のSMUやコラボでこれらの印象に寄せられたものも複数見受けられたほどの、圧倒的なラインナップが同プロジェクトから生み出されていました。

このラインナップからいくつもランキングに入れてしまうと他のが紹介できなくなるので、最も特徴的だった一足を挙げさせていただきます。

ソールのボリューム感と全体のシルエットのバランス。 断ち口を見せない縫製のパーツのズラし、と空打ちのステッチ穴。 カラーリングと素材感の洗練具合。

こういったものが出てくるのが「企画ありき」ではなく、当たり前にリリースされる世の中になることを、切に願います。


1. NIKE REACT ELEMENT 87

今年のスニーカーのデザインランゲージは「レイヤリング」だったとおもいます。

ニットやシームレスに振れて、グッとフラットな方向に向かったデザインが行き着いたのは、そこから更にレイヤーを重ねることで生み出される独特な奥行き感でした。

加えて、素材の幅が広がりをみせたのがNIKE ZOOM FLY SPで特徴的に用いられた透明なメッシュ。 そこから一気に「透明な一枚をベースに、構造体を敢えて見せる」という流れに向かっていたようにおもいます。

スニーカーをスニーカとして成立させる構造を「敢えてみせる」ことを最も重要視したのがREACT ELEMENT 87でした。

それによってなにが変わったかというと「これまで見せないようにしていたものが見せれるようになった」んです。

たとえば、爪先芯。 つま先の保形を整えるために芯を入れるわけですが、その芯はこれまで見せちゃいけない(とおもってた)ものだったんです。 だからこれまでのその上に表から補強を被せていた。 でもそれが堂々と見せれるようになったんです。

しかもそれを各パーツごとに「これは見せない」「これはこう見せる」という選択ができるようになったことで生まれるデザインの幅は計り知れません。 

加えて、プレッシャーマップを分析して生まれた独特なソールユニットの形状、これによりクッション性や屈曲性も高いレベルで実現しているわけですが、このオーガニックフォルムも直近までのシャキシャキした幾何学っぽいデザインに一石を投じています。

だからこれから透明アッパーだったり、オーガニックフォルムのソールだったりが増えるかもね。 それくらいインパクトがありました。


まとめ

2018年は、全体で言うと派手で目立った一足とかが少なかったかなという印象でした。

イコールでそのままスニーカーブームの落ち着きを暗に示しているわけですが、そんななかでも結局ナイキはちゃんと冒険して、ちゃんと失敗したぶん、ちゃんといいものをリリースしていたんだな、と納得の結果に。

カウンターとしてECCOとMERRELLには期待したい。 独自路線を貫き、NIKEにはできないことをしていってほしいなぁ。。。


0(買ってよかったもの1位). ADIDAS YEEZY BOOST 350 V2

なんだよ、結局コラボじゃねーかと言われそう(ごめんなさい)。

たまたま入手出来て、足入れてみたら、すげーよかったんです。 BOOSTのモチっとしたホールド感、予想以上でびっくりしました。。

ニットもいくつかの目を意図的に配されていてフラットに見えないし、独特なシルエットはちゃんと足入れしやすいように設計されているし、足入れもゆるくならないようなタイト感がキープされてるし。

つまり、コラボの派手さとは裏腹に、プロダクトしてすげー高いレベルで成立してたんです。

ごめん、カニエ。。。 ちょっと見直した。。。

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足下研/スニーカー文化研究家
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