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【本要約】フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略

本記事は、2020年4月に刊行されました『フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略』(石川善樹著/NewsPicksパブリッシング)の要約・解説の記事です。
著者は予防医学研究者として、newspicksをはじめとしたメディアでもお馴染みの石川善樹氏です。東京大学卒業後、ハーバード大学院へ進学。その後、自治医科大学にて医学博士を取得後、予防医学の研究者として従事。「健康寿命」の概念を提唱し、よりよく生きるとは何かを主軸に多方面で活躍されています。
充実した人生を送るために必要な個人の「時間戦略」について書かれた本です。
LIFE SHIFT ―100年時代の人生戦略」が刊行されて以来、広く認知された通り、人生100年時代が到来すると言われています。75歳まで働かないといけないと言われる時代に、いま必要な「戦略」について考察されています。

▼アウトライン

本書の結論です。
・フルライフとは「充実した人生」のことである
・フルライフのための時間戦略とは「Well-Doing」と「Well -Being」の重心を発見すること
・仕事人生は大きく3つのステージがあり、誰に「信頼」されるかが重要である

前回、「AIとBIはいかに人間を変えるのか」で解説しましたが、AIとBIにより働く時間が短くなっていく中、自分自身の人生を豊かにするためにどうすればいいのかに本気で向き合う時代が訪れようとしています。

「人生」とは、「自分の時間の過ごし方」と言えるので、この時間に対する明確な戦略を持つことは人生を充実する上で重要な要素になります。

本記事では、以下について解説して参ります。

・「Well-Doing」と「Well -Being」のどこに重心を置くか
・大成するキャリアは3つに分けられる

・生産性を向上するための3つの時間軸

▼「Well-Doing」と「Well -Being」のどこに重心を置くか

まず、時間のスケール(1日〜100年)が変わっても、時間戦略の本質は「Well-Doing」と「Well -Being」の重心を見つけることだと言います。

時間の過ごし方を大きく2つに分けると、以下になります。
・Doing(する)の時間:明確な目標に基づき役割や責任を果たす
・Being(いる)の時間:特に目標なく過ごす

この2つの時間をWell(より良く)することが大切です。

また、戦略とは”重心を決めること”と言います。つまり、割合を決めることです。
このDoingとBeingの割合のバランスを取ることが時間戦略において重要な点で、バランスの取り方は人生のフェーズによって異なります。

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人生の前半は、勉強をしたり、バリバリ働いたりとDoingに比重があります。
後半に向かうにつれて、家族と過ごす時間を重視したり、自分の趣味を大切にするなど、Beingに重心が移っていきます。

また、仕事が忙しいとWell-Doingに偏ってしまいますが、それだとバランスが悪くなります。バリバリ働いている時であっても、意識的にWell-Beingの時間を取ることが結果的にWell-Doingに繋がります。

そのため、海外の優秀なエグゼクティブは、意識的に休暇を取り、自分の時間を大切にすると指摘しています。

次に、どのようにして質の高い仕事を成し遂げつつも、長い人生をより良く生きるためにはどうすればいいのか、大成するキャリアは3つに分けられると言います。

▼大成するキャリアは3つに分けられる

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この図は、縦軸に成功(社会的インパクトの大きさ)、横軸に時間(年齢)を表しております。そして、大成するキャリアを築くためには3つのフェーズに分けてそれぞれでやるべきことがあります。
ちなみに、ここでの成功とは20世紀的な経済的成功というよりは「社会的なインパクトの大きさ」を成功と定義しています。

ハードワーク期…(20代〜30代前半)
いわゆる下積み時代で、質の高い仕事を行い、周りから一目置かれるような仕事を積み上げていくイメージが重要です。最初は平坦ですが、積み上げていくとある時点から急速に成果に繋がっていきます。
また、質の高い仕事をするために、信頼を得るべき対象は「業界内の上の世代」の方です。また、上の世代から信頼を得るために必要なのは、「大物感」と「可愛げ」です。

質の高い仕事を行い、自身の武器となる専門性を身につけていく時期です。

ブランディング期…(30代後半から〜40代)
仕事の幅を広げながら自分というブランドを固めていく時期です。成功のカーブが指数関数的に急速に右肩上がりになります。
仕事の幅を広げるために必要なのは「人間的な魅力」で、信頼を得るべき対象は「業界外の同世代」です。すでにハードワーク期で業務スキルと実績は身に付けているため、このフェーズで必要なのは、自分の「弱さ見せること」です。

ハードワーク期が自身の専門性を「深める」時期だとすると、ブランディング期は幅を「広げる」時期です。

アチーブメント期…(50歳以上)
自分の仕事を社会に還元することができる時期です。ハードワーク期、ブランディング期を経て、自分の志が見えてくると言います。いわゆる、論語の「五十にして天命を知る」という事です。
この時期には、もはや主語は自分自身ではなく、ともに志を目指す仲間になり、仲間の能力や魅力を磨くことが重要です。この時、信頼を得るべき対象は「次世代」で、ビジョンを伝えることが大切です。

ここまで、仕事を大成させるためには、3つのフェーズに分けて、それぞれで身につけるべきこと、信頼を勝ち取る対象が変わることを説明しました。

最後に、ハードワーク期にどのような時間軸で戦略を立てるべきか見ていきましょう。

▼生産性を向上するための3つの時間軸

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【1日の時間戦略】
1日のどこに重心を置くかについてどう考えるか。
まず、事実として考えるべきは「日中の多くのことは自分でコントロールできない」という点です。自分でコントロールできないことを諦めて、自分がコントロールできることに集中したほうがいいと著者は言います。

それでは、どの時間に集中すべきか。
コントロール可能な時間の中で、一番1日の評価を影響を与えるのは「仕事の始まりと終わり」と言います。

では、どのように仕事を始めて、終わるべきか。
バイタリティの高いビジネスマンにアンケートを取ったところ、以下でした。
良い仕事の始め方:同僚と挨拶を交わす、To do listを確認する
良い仕事の終え方:仕事の振り返り、整理整頓

良い仕事の始め方で重要なのは、「いきなり仕事を始めない」ことです。
同僚と挨拶を交わす、今日やるべきことを確認するなどが、バイタリティ高い人の特徴でした。

良い仕事の終え方で重要なのは、「一目散に仕事を終えて帰らない」ことです。
仕事の振り返りや明日からの仕事の計画を行う、整理整頓を行うことがバイタリティ高い人の特徴です。

まとめると、「うかつに仕事を始めない、うかつに仕事を終えない」ということです。
また、仕事の終わりに「To do」を振り返ると、できていない自分に落胆する可能性があるので、「To feel」を振り返るとよいと言います。

【1週間の時間戦略】
1週間の時間戦略で重要なポイントは、「平日、休日問わず、同じ時間で起きる」「金曜の夜の過ごし方」ことです。

多くのサラリーマンは「社会的時差ボケ」が発生していると言います。
社会的時差ボケとは、平日と休日とで就寝と起床とのリズムが崩れることを指します。このことが生産性の低下に繋がると、著者は指摘しています。

では、この社会的時差を防ぐにはどうすればいいか。
ポイントは、「土曜日スタートで考える」「金曜日の午後8時以降にスケジュールを入れない」です。

社会的時差ボケの原因をまとめると、
①月〜金で働き、「華金」で夜遅くまで過ごす
②土曜日の朝に起床が遅くなる
③起きるのが遅くなるので、土曜日の夜も寝るのが遅くなる
④日曜日の朝も起床が遅くなる、寝るのも遅くなるが、月曜日は仕事なので早く起きる

この原因の起点は「金曜日の夜を遅くまで過ごす」ことです。
そのため、著者は土曜日スタートのカレンダーにし、土日にやりたいことの予定を入れる、そして、金曜日の午後8時以降は予定を入れず、早く寝ることをおすすめしています。

そうすることで、土曜日から自身のやりたいことに時間を使う事ができ、1週間がエネルギーのあるものになります。

【3〜10年】
次に、長期の戦略をどう立てるべきかについてです。
多くの人にとって、10年後の未来予測はポエムにしかならないと言います。社会も個人にとっても不確定要素が多すぎて、ぼんやりとした理想にしかならず、現実味がないという事です。逆にスケールを短くして1年から積み上げていくとどうしても低空飛行になります。

では、どうすれば、達成可能かつ魅力的な未来を描けるか。
すごいことを成し遂げる人は「3年プランの立て方」がうまいと指摘します。

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すごい人は積み上げではなく、レバレッジ型の非連続な成長を描くのが上手いと言います。3年プランの具体的な立て方は以下です。

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1年目は何をするか計画するよりも誰とするかを計画する時期
2年目はスケール可能なモデル(定型)を作る時期
3年目は拡大していく時期

補足すると、この中で最も重要なのは1年目、つまり「誰とするか」を決める時期だと思います。これは「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」でコリンズ博士が紹介している言葉に尽きます。

「だれをバスに乗せるか(最初に人を選び、その後に目標を選ぶこと)」

事業の成功はモデルの構築以上に、誰とやるのかが命運を左右するというのは、多くの経営者も指摘しているポイントです。

【3段階のプランニング】
先ほどは1〜3年の時間スケールで見ていきましたが、これは必要に応じて、1年を3段階に分けてもいいし、もう少し長いスケールでも応用可能です。

また、3年間のプランニングができれば、そのさきの3年間、さらにその先の3年間もプランニング可能で、10年単位の時間スケールも扱う事ができます。

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この3段階で最も重要なのは2段目の目標設定です。
2段目が重要である理由は2つで、
①6年目の目標が明確だから10年後の未来に届きそうだという確信を得られる
②3年後の目標は何をすればいいのかという逆算が可能になる

イーロンマスクなど産業構造をひっくり返すような飛び抜けた成果を出す人間はこの2段階目の目標設定が抜群にうまく、2段階目に「産業構造を変えるレバーを引く」ことを目標としています。

例えば、イーロンマスクが手がける事業で火星移住を目指す「スペースX」というのがありますが、この事業の2段目の目標は「宇宙航空のコストを劇的に下げること」です。宇宙航空のコストを下げる事ができれば、多くの企業が参入をし、結果的に宇宙産業が盛り上がることで、最終目的である火星移住に近づくわけです。

▼まとめ

今回は「フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略」を要約・解説して参りました。

最後に、総括した感想と補足としては、
【10年後の産業構造をひっくり返すチャレンジをしよう】
ということを挙げさせていただきます。

【10年後の産業構造をひっくり返すチャレンジをしよう】
ちょうど、スマホが世の中に普及し始めたのが10数年前になります。
ワイドスクリーンを搭載したスマホが普及したことで、「youtube」を始めとした動画産業などが普及し、まさにここ1〜2年期で最盛期を迎えました。

昔は産業構造が変化するのには大きな時間がかかりましたが、現在は急速に産業の勃興と衰退が起きています。その変化は「2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ」では、以下のように指摘されています。

レイ・カーツワイルが「収穫加速の法則」に従って計算したところ、我々はこれからの100年で、2万年分の技術変化を経験することになるという。
つまり、これからの1世紀で、農業の誕生からインターネットの誕生までを2度繰り返すくらいの変化が起きるわけだ。

ちょっと規模ができすぎてイメージしづらいですが、とにかく今後は産業構造の変化が頻繁に起こる可能性があるという事です。
そして、これまでの経験からテクノロジーが出てきてから本当に浸透するまでは法整備や既得権益との利害による政治的な力学を考えると、5〜10年はかかると言われています。

ここまでをまとめると、次のことが言えます。
「10年ほどで産業を一変する変化は起きる。その変化を起こすテクノロジーはすでに開発されている」

今だと、AIやVR/AR、ブロックチェーンや量子コンピュータなどが筆頭になるでしょう。この中から10年後の当たり前が作られていくという事です。

当然このことに、国や会社は向き合う必要があるわけですが、我々個人はどう考えるのがいいでしょうか。ポイントは2つあると思います。
①産業を破壊する側にいるのか、破壊される側にいるのか
②挑戦すること自体が価値になる時代である

ポイントの1つ目は、「産業を破壊する側にいるのか、破壊される側にいるのか」ということです。まずはこのことに自覚的になる必要があるでしょう。

先述した通り、今後起きる変化は異次元の変化で、「これまで100年続いた会社だから大丈夫」などの理屈は崩壊していくと思われます。
そして、今まさに米国のGAFAや中国のBATが世界で起こしているように、残酷なまでに「破壊する側と破壊される側」の差は明確になっていくと思います。

そんな世の中で取れる戦略は2つです。
「破壊する側に回る(=AIなどをはじめとした産業へシフトする)」
「変わっていくことを的確に捉えてうまく乗りこなす(DXなど)」

破壊する側に回るというのは、わかりやすくいうと、GAFAをはじめとしたIT産業へ身を置くということです。変わっていくことを的確に捉えてうまく乗りこなすというのは、日本だとわかりやすいのがTOYOTAが取り組んでいる例がわかりやすいと思います。

いずれにしてもテクノロジーへの理解は必須になるので勉強は必要です。

ポイントの2つ目は、「挑戦すること自体が価値になる時代である」という点です。

これは、AIを代表としたITがより普及し、生産性がどんどん上がっていくと、もはや出来上がった製品(結果)には、価値がなくなっていくという考えです。

今どれだけ最新の製品が出てもすぐに模倣品がたくさん出て、価格が下がっていくように、製品そのものの価値は下がっています。

そこで、価値を増しているのが、製品ができるまでの物語(過程)です。
これは最近だとプロセス・エコノミーと呼ばれ、エンターテイメントの分野を中心に普及し始めている考えです。

よく例に出されるのが、お笑い芸人のキングコング西野亮廣氏で、「ディズニーを倒す」という大きな目標を掲げ、挑戦する過程をオンラインサロンにて発信するという新しい価値で、ビジネスを作っています。

このように、大きな目標を立てて、そこに向かう過程や物語に価値がある世の中では、挑戦しないことがリスクになります。挑戦をする人(特に応援しがいのある人)のところにお金と人が集まる時代が来ています。

今回の記事は以上になります。
ご一読いただき、ありがとうございました。

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