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【本要約】文系AI人材になる―統計・プログラム知識は不要 -AI人材になるための現実的なステップ

本記事は、2020年1月に刊行されました「文系AI人材になる―統計・プログラム知識は不要」(野口竜司著・東洋経済出版)の要約・解説の記事です。本書では、文系出身の著者がAI人材になるための具体的な知見(基礎知識、作り方、企画のコツ、事例)を提供しています。AIが普及していく中、AI人材を目指したい方にとって入門書的な1冊になると思います。


▼文系AI人材のキャリア

【AIは専門家だけのものでなくなってきている】
本書の前提として、AIは必ず社会で当たり前に使われるものになると指摘します。
当たり前になり方の例といて、”Excelを使うぐらい”と表現をされており、それぐらい簡単に、誰でも使えるようになっていくとされています。

本当なのか疑いたくなるような話ですが、そうなる可能性は高いと思います。
それこそ、今では当たり前にコンピュータを使いますが、コンピュータが発売された当初は一部の専門的な知識を持った専門家しか使えないようなものでした。そこから現在の使いやすい画面やアプリケーションなどが発明され、誰でも使えるように改良され、今では使えないことが不思議なくらいまで浸透しています。

それと同じことがAI分野でも起こる可能性は高く、すでにAIは「作る」フェーズから「使う」フェーズへ移行しつつあると本書では指摘しています。

【AI失職は起こる。恐れず、協働する準備を】
AIが今日のコンピュータのように誰もが使う時代になると、人間の役割、働き方にも大きく影響が出ると指摘しています。

ここで、AIが仕事に与える影響の2つの主張をご紹介します。
①AIで失くなる仕事もあるが、AIが新たに生み出す仕事もある
②AIが与える影響はこれまでの技術進歩とは比類がなく、大部分の仕事が失くなる

①は、これまでも技術進歩によって失くなってきた仕事もあるが、新たに生まれる仕事もあるので、結果的には需要と供給は一致するとの考え方です。
例えば、ATMができたことで銀行窓口の仕事は減りましたが、代わりにATMを製造する仕事や保守する仕事が生まれました。
AIも同じように、失くなる仕事と生み出す仕事があるというのが①の主張です。

②は、AIの与える影響はこれまでの技術進歩とは根本的に違うのもので、これまで人ではないとできないとされていた部分にまで影響があるため、大部分の仕事をAIが置き換えてしまう可能性があるとする考え方です。
そうなった場合、残る仕事と失くなる仕事の従事者の間に経済格差が生まれることが考えられるため、富の再分配を行い、格差を是正する必要があるとされています。また、その富の再分配すらもAIが行う可能性があるするのが②の主張です。

ポイントは①②どちらの主張であったとしても、AI失職は起こると予想している点です。本書でもAI失職は避けられので、まずは素直に受け入れることが重要としています。また、AIができること、できないことを理解した上で、AIとどのように協働するのかを考えることが重要と指摘しています。

▼AI共働きの5つのスタイル

AIと協働することの重要性を本書では強調されており、共働きのスタイルには5つの型があるとしています。(P33 図表1-3)

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今後は、この中でAIに任せる部分と、人だから価値が出る部分を分けて、共働きしていくことが求められます。本書ではより細かくどういう業務がこの5つの型にはまっていくのか解説されていますので、ぜひ興味のある方は本書を確認ください。

ここまで、読んでいただき、
・今後のキャリアを考える上で、AIによる影響を考えないといけないこと
・AIとの共働きスキルが今後重要になっていくこと
を理解して頂いたと思いますが、AIがどういうものなのか、AIが何ができるのかを理解しないと上記の2つは達成できません。

本書では、AIの基本の説明をしており、それらは丸暗記で大丈夫としています。
それではAIの基本を見ていきましょう。

▼AIの基本を丸暗記する

【AIの分類方法】
AIの基本は「AI分類」「AI基礎用語」「AIの仕組み」の3つが分かれば、理解できます。また、それらは丸暗記で事足りると本書では主張されています。

まずは「AI分類」から見ていきましょう。
本書では、以下の3つの分類方法からAIを解説しています。
①概念による分類   (AI/機械学習/ディープラーニング)
②学習方法による分類 (教師あり/教師なし/強化学習)
③活用タイプによる分類(4つの機能別×2つの役割別)

【①概念による分類(AI/機械学習/ディープラーニング)】
ニュースなどで、「AI」「機械学習」「ディープラーニング」という言葉を耳にすることがあるかと思いますが、それぞれどういう意味で、どういう関係になるのでしょうか。それらをまとめたのが以下の図になります。

AI、機械学習、DL.001

AI(人工知能)は決まった定義がありません。しかし、大まかには人間の知能を実現させようとする技術の総称を指すことが多いです。

次に、AIと呼ばれる分野の中でも、学習によりタスク実行ができるものを機械学習と呼びます。従来の機械学習では、学習するのに特徴を人間が定義する必要があります。
例えば、大量の画像から猫の画像だけを仕分けるタスクを実行しようとすると、まずは猫の特徴(耳がある、毛が生えている など)を人間が定義し、学習させる必要があります。機会はこの定義に基づき猫の画像を仕分けていくため、定義の仕方が重要で、ある種の職人芸的な定義の微調整が行われていました。しかし、膨大な特徴を定義付けしてくことは高度な専門性やリソースが求められます。

そこで、突然現れ今日のAIブームのきっかけとなる技術が出てきます。それがディープラーニングです。ディープラーニングでは人間が定義しなくても、自動的に大量の画像から猫の特徴を自ら発見し、判断できるようになりました。画像認識のタスク以外でも、様々な分野(音声認識や自然言語処理)でディープラーニングを適用することで従来の機械学習ではできなかったことが実現してきているというのが今の状況です。(実際には従来の機械学習が強いタスクなどもあるため、ディープラーニングだけでなく、様々な機械学習の方法が研究されています)

(詳細は過去の記事「【本要約】人工知能は人間を超えるか ディープラニングの先にあるもの -未来を賭けるに値するもの(後編)をお読みください)

【②学習方法による分類 (教師あり/教師なし/強化学習)】
次に学習方法別の分類について確認します。

学習方法分類.001

教師あり学習:正解/不正解のあるデータで学習する方法。教師あり学習には主に分類と回帰の2つのタスクが存在する
教師なし学習:正解/不正解の答えがないデータで学習する方法。データを特徴ごとにグループ分け(データに線引き)するクラスタリングというタスクがある
強化学習:連続した行動に対する報酬と罰によって学習する方法

(こちらも詳細は過去の記事「【本要約】人工知能は人間を超えるか ディープラニングの先にあるもの -未来を賭けるに値するもの(後編)をお読みください)

【③活用タイプによる分類(4つの機能別×2つの役割別)】
最後に、活用タイプによる分類です。4つの機能別(識別系、予測系、会話系、実行系)と2つの役割別(代行型、拡張型)の組み合わせで8分類できます。

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この8つの分類に合わせて、AIが代行できること、AIとともに協働することを整理していきます。この表を見ると、なんとなく自分の仕事に影響がありそうなことが見えてくると思います。
本書では具体的な活用例なども載っていますので、ぜひご確認ください。

【AIの専門用語】
AIの基礎を知るの最後は専門用語の確認になります。
本書ではあくまで文系AI人材が実際にプロジェクトを行う際に必要な知識をまとめたものになり、実務レベルでは専門用語についても丸暗記で問題ないとの前提になります。本書では取り上げられている専門用語は以下になります。

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これらはAIプロジェクトを進めていく上で頻出する用語になるので、どういう意味合いで使われているかもセットで覚えておきましょう。

▼AIの作り方を理解する

【AI構築の支援環境の発展】
ここまではAIの基礎についてでした。次にAIの作り方についてです。
まずAIの作る環境はこの数年で大きく変わったことを理解していきましょう。

AI作成方法.001

こちらの図は作成方法を一覧にしたものになります。

(①→②へ)
以前であれば、AIの構築方法は①しかありませんでした。①は大規模なインフラの構築から、高度なプログラミングスキル、データサイエンティストなどが必要で、限られた企業でしかAI構築はできませんでした。
そこから、①に取り組んだGoogleやAmazonなどといった企業がAI構築の環境を提供できるようになり、コードベースで作成できるようになりました。ライブラリと呼ばれるコードのかたまりも用意されるようになり、①の時よりもAI構築が容易になりましたが、プログラミング知識がないと構築は難しくなります。

(②→③④へ)
さらに、誰でも使えるものとすべく、プログラミング知識がなくても、扱えるようなGUI(Graphical User Interface)が開発されました。GUIはコードを書く代わりに、画面上でマウスなどを利用して操作するものとなっており、直感的に利用できるものです。
現在は、すでに構築したものをサービスとして提供する企業もあり、そちらを利用することでAIの恩恵を受けることも可能になってきています。こういったサービスは汎用的に作られていることが多いため、カスタマイズ性は低くなりますが、一般的な処理をする際は、構築済みサービスでも十分な精度が出るため、簡単に、スピーディにAIを導入できます。

【AI構築の4ステップ】
先程の説明通り、すでにAIは作らなくても、使うこともできるようになっています。ただ、作り方を知っておくことで、企画やプロジェクトのマネージメントがスムーズになります。本書では前述した機能別(認識、予測、会話、実行)にGUIでの具体的に作成ステップが開設されています。
こちらの記事には大まかなステップを解説します。

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機能別に多少の違いはありますが、大まかにはこの4ステップを行うことでAIを作成します。
文系AI人材としてはSTEP2以降はできなくても問題はありませんが、内容を理解ができ、適切に外部と連携ができるようにしておく必要があります。
また、特に重要なのはSTEP1になります。そもそも何のためのAIなのかについては、既存ビジネスの知識なども必要なため、特に文系AI人材の主要な役割になってきます。

最後は、この”企画力を磨く”について解説します。

▼AI企画力を磨く

【実現性と想像力のバランスが重要】
文系AI人材として活躍するためには、企画力が重要になります。
この企画力を磨く方法として、著者はまずは「とにかく企画を出してみること(企画の100本ノック)」をお勧めしています。いわゆるブレインストーミング(複数の参加者がディスカッションを行い、アイデアをどんどん出していくこと)を行い、その後その企画を評価していく方法を取ることで、良いAI企画が生まれます。

著者が特にAI企画において重要視していることは「実現性(論理)」と「想像力(感性)」のバランスです。実現性だけを考えると、社会を大きく変える企画は生まれないし、想像力だけが先行すると絵に描いた餅になります。

そのため、この両方を行き来し、バランスよく企画することが重要になります。
具体的な方法としては、ブレインストーミングした企画リストを「実現性」と「変化量(社会に与えるインパクト)」でスコア化し、評価する方法などがあります。

【5W1Hで解像度を上げる】
先に挙げた方法で筋の良い企画ができたら、次に5W1Hを使って企画の解像度を上げていきます。この過程を経て、具体的なプロジェクトになっていきます。
5W1Hの問いとしては以下になります。

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この問いを考えていくことで企画の解像度を上げていきます。

AIはあくまでもビジネスを発展させるための”ツール”でしかありません。
ただ、近年はAIを導入することが目的化しているケースがあり、失敗の典型例になっています。ここに記載のあるAI企画を明確にし、短期的だけではなく、中長期を見据えた投資対効果(ROI)を踏まえて、考えておくことが重要だと思います。

▼まとめ

本書を多少強引にまとめると以下の3つになります。

①AIは作るから使うへ移行し、将来にはExcelを使うぐらい誰もが使うものになる
②AI失職は必ず起きる。AIを恐れず、共働きする準備を整える
③文系AI人材になるには、基礎知識、作り方、企画のコツ、事例を知る必要がある

最後に、総括した感想と補足としては【「文系AI人材」はビジネスの総合力が重要】ということを挙げさせて頂きます。

【「文系AI人材」はビジネスの総合力が重要
文系AI人材で活躍するための肝は企画力で、以下の2つが重要な要素でした。
 1.実現性(今のAIでどこまでできるのか)
 2.想像力(AIを使ってどんな変化を起こすことができるのか)

これをインプットベースに変えると、以下だといえます。
 1.実現性=テクノロジーを知る
 2.想像力=ビジネスやマーケット、社会を知る

このインプット量が「AI人材」に必要な実現性、想像力を育てるのではないと思います。その考えを企業ビジョンとして掲げているのが日本のAIをリードする企業の1つであるABEJAです。

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ここで記載されている通り、テクノロジーとリベラルアーツの両輪があり、AIは推進していくものだと思います。
なので、もちろんAIなどの最先端技術を追っておくことも重要ですが、それによって根本的に解決しなければいけない問題は何なのかについて、良識や見解を拡げることが重要ではないかと思います。
今後、noteではAIの情報だけでなく、ビジネス全般やリベラルアーツに関わる本なども取り上げていきますので、ご参考いただければと思います。

また、こちらの本は後半、具体的な事例紹介を行っており、自身の仕事に関わりそうな部分だけでも確認しておくとイメージがつきやすいと思いますので、ご興味のある方はぜひご一読ください。

今回の記事は以上になります。
ご一読いただき、ありがとうございました。

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