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データ・先行研究はココで探す!:経済論文の書き方[実証編]付録

『経済セミナー』の2020年8・9月号では、「論文の書き方」というテーマにフォーカスした特集を企画してみました。とはいえ、一口に「論文」といっても、アプローチや分野によって、その作法や必要となる知識・情報はさまざまだと思います。限られた紙幅ではすべてを網羅できないので、今回は「実証論文」に焦点を絞って特集を組むことにしました。

本号特集のタイトルと、大まかな目次は以下のような感じです!

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このnoteでは、本特集で紹介された先行研究の探し方、データの探し方、参考に書籍やウェブサイトを中心に、それぞれリンク付きで整理してご紹介します。本誌とあわせて、ぜひ論文の執筆やご指導にお役立ていただけたら幸いです。

なお、同特集は、書籍経済論文の書き方』として、さらにパワーアップして発売されています。

2020年8・9月号の特集「経済論文の書き方:実証編」の内容は、第Ⅱ部と第Ⅳ部の一部に改めて収められています。この本の第Ⅱ部が「実証編」で、ほかにも第Ⅰ部「はじめの一歩編」第Ⅲ部「理論編」第Ⅳ部「技法編」という構成となっています。

本書の詳しい内容紹介は、以下のnoteをぜひご覧ください!!

■ISFJ:実証論文を中心とする発表大会を運営

特集企画にあたっては、「ISFJ(日本政策学生会議)」という団体が運営する、主に学部生の皆様がチームを組んで論文を執筆し、研究および政策提言を発表しあう大会に、積極的に参加されている先生方にご相談し、進めていきました。チームは、ゼミで組まれていることが多く、1つのゼミで複数のチームを立てているところも多いようです。

ISFJとは、「学生の政策立案の支援及びその提言活動を通じて社会の諸問題について考察することを目的とする非営利の学生団体」で、毎年大規模は研究論文の発表大会を運営しています。以下のホームページで、概要から開催の模様などが、詳細に公開されています(なお、今年度=2020年度の「参加者説明会」も動画で公開されています【リンク】)。

また、同ホームページの「論文ライブラリ」のコーナーでは、これまでの論文発表大会に提出された論文も、閲覧できてちゃいます【リンク】。年度別、テーマ別に閲覧でき、最優秀政策提言賞、優秀賞などなどの受賞論文もピックアップできるように整理されています。

実は、編集部もこの「論文ライブラリ」を拝見して、とてもレベルの高い論文ばかりなことに驚き、「いったいゼミの先生方はどんな指導をされているんだろう?」「ご指導のノウハウをお伝えできれば、多くの方々にとっても有益なんじゃないか?」と思って企画を考え、ご参加の先生方にアプローチしました。

対談でお話を伺い、またご寄稿記事を拝読して、予想通りで大変丁寧なご指導をされていることがわかりましたし、学生の皆様もそれによく応えて、学習・研究・論文執筆に取り組んでおられることが実感できました。

■対談:ISFJから見る 経済論文を書くコツ

以前のnoteでもご案内した通り、対談は大阪大学の赤井伸郎先生と、明治大学の千田亮吉先生にお願いしました。両先生とも、ISFJの活動にとても積極的に参加されていて、丁寧なご指導や工夫、「政策提言ツアー」なるもののような企画まで、さまざまな取り組みをされていることが印象的でした。

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この対談は、以下のような筋書きで進めていきました。テーマを探し、データを集め、論文を書く心構えから、気を付けるべき点、身に付けておくべき知識や、論文を書きながら身に付いていく能力などなど、多岐にわたるご議論を頂きました。とてもおもしろいので、ぜひ本誌をご覧頂きたいなと思います(なお、2015~19年の5年間で4回、赤井ゼミのチームが最優秀論文賞を受賞しているそうです)。

1. ISFJとは
2. 経済論文を書くコツ
3. 分析から政策提言へ
4. 先を見据えた論文執筆
5. ISFJに向けた活動例

■先行研究を集めるならココ!

青山学院大学の安井健悟先生は、ご寄稿頂いた「ミクロ実証論文執筆の落とし穴とアドバイス」の冒頭で、論文を作成するうえで最も重要なのは、

分析に入る前にしっかりとした研究計画を立てることである。研究計画を立てるということは、「研究テーマと仮説(と計量モデル)を設定し、先行研究を調べ、データ収集の見通しを立てる」ということである。

と述べられています。この点の詳細はぜひ本誌をご覧頂くとして、以下ではまず、先行研究を集める際に有益な情報源としてご紹介いただいたものの一部を、リンク付きでざざっとピックアップします。

まず便利な論文データベースとして、Clarivateが運営する「Web of Science」、アメリカ経済学会(American Economic Association: AEA)が運営する「EconLit」などが紹介されています。また、「Google Scholar」も必須。

また、日本語の論文検索には「CiNii」、安井先生のご専門である労働分野なら労働政策研究・研修機構のウェブサイト内にある「論文データベース」が有益とのこと。

さらには、実際に研究論文を見てみるのも有益で、たとえば日本語で以下のものが挙げられています。

また、論文を分かりやすく(短く)紹介している記事として、弊誌『経済セミナー』の「海外論文SURVEYオンライン公開中!の記事はこちらから)」、『日本労働研究雑誌』の「論文Today」を挙げていただいています。こちらを見たうえで、読む論文を選ぶというのもよいかもしれません。

■データを集めるならココ!

次に、データを集めるために有益な情報源を、主に南山大学の水落正明先生のご寄稿「データのみつけ方・集め方」と、安井先生の記事で紹介いただいています。以下、「集計データ」と「個票データ」に分けて、ざっとリンクを紹介します。

【集計データ】

集計データの場合は、さまざまなサイトで公表されているものが多く、申請などは不要で、すぐに活用することができます(データ出所の記載には注意!)。以下はほんの一部ですので、ぜひ目的にあったデータを探してみてください。

都道府県データ:「社会生活統計指標―都道府県の指標―」(総務省統計局)

その他、日本国内の政府統計:「e-Stat 政府統計の総合窓口

国別のデータ:「OECD.Stat」、「The World Bank DataBank

【個票データ】

個票データの利用は申請して、さまざまな利用上の留意点に注意を払って利用することになります(個人が特定されないよう、さまざまな配慮がなされています)。学部学生でも、一定の手続きを経て使える個票データの提供元として、「東京大学社会科学研究所付属 調査・データアーカイブ研究センター」と、「慶應義塾大学 パネルデータ設計・解析センター

東大からは、「東大社研・若年パネル調査」 「東大社研・壮年パネル調査」「全国就業実態パネル調査」などのデータを、
慶大からは、「日本家計パネル調査」「日本子どもパネル調査」「消費生活に関するパネル調査」「新規開業パネル調査」などのデータを、
申請して借りることができます。留意点や手続き等は、本誌の安井先生の記事と、当該ウェブサイトをご覧頂ければと思います。

■参考図書の紹介

最後に本特集で紹介されている参考文献(教科書など)をまとめてご紹介します。

まずは、明治大学の加藤久和先生にご寄稿いただいた「近年の実証分析の動向と学部教育」では、以下の3冊をご紹介いただきました。

伊藤公一朗(2017)データ分析の力 因果関係に迫る思考法』光文社新書。
森田果(2014)実証分析入門──データから「因果関係」を読み解く作法』日本評論社(サポートページ)。
山本勲(2015)実証分析のための計量経済学』中央経済社。

水落先生には、データの整理から統計分析の作法を学べる入門書として、以下をご紹介いただきました。

畑農鋭矢・水落正明(2017)データ分析をマスターする12のレッスン』有斐閣(サポートページ)。

また、慶應義塾大学の廣瀬康生先生にご寄稿いただいた「動学的一般均衡モデルを用いたマクロ経済政策論文の書き方」では、学部生から動学的一般均衡モデル(DSGE)を習得するための、日本語で丁寧に書かれた解説書として、以下の4冊をご紹介いただきました。

江口允崇(2011)動学的一般均衡モデルによる財政政策の分析』三菱経済研究所(サポートページ)。
加藤涼(2007)現代マクロ経済学講義――動学的一般均衡モデル入門』東洋経済新報社。
蓮見亮(2020)動学マクロ経済学へのいざない』日本評論社(サポートページ)。
廣瀬康生(2012)DSGEモデルによるマクロ実証分析の方法』三菱経済研究所。

なお、廣瀬先生のゼミのホームページでは、学生の皆様が取り組まれたDSGEを用いた研究論文がご覧いただけます(すごい…)。ISFJで発表された論文も紹介されています。

最後に、関西学院大学の栗田匡相先生にご寄稿いただいた「ゼミ活動から見る経済論文を書く際の心得」では、栗田ゼミでまず知識を身に付けるために読むテキストとして、以下をご紹介いただいています。

浅野皙・中村二朗(2009)計量経済学(第2版)』有斐閣(旧版のサポートサイト)。
奥野正寛編著(2008)ミクロ経済学』東京大学出版会(サポートサイト=双対性に関する補足ノートなど)。
神取道宏(2014)ミクロ経済学の力』日本評論社。
筒井淳也・平井裕久・水落正明・秋吉美都・坂本和靖・福田亘孝(2011)Stataで計量経済学入門(第2版)』ミネルヴァ書房(サポートサイト)。
西山慶彦・新谷元嗣・川口大司・奥井亮(2019)計量経済学』有斐閣(サポートサイト)。
松浦寿幸(2015)Stataによるデータ分析入門(第2版)』東京図書(サポートサイト)。

ちなみに、栗田先生の記事はとてもおもしろいです。中の人は、拝読してかなり笑ってしまいました。しかし、ゼミでのご指導の熱気も感じられ、ゼミ生の皆様な非常に有意義で盛りだくさんな体験をされているのだなぁと思いました。こんな経験は他ではできないかもしれません。その詳細は本誌でご覧頂くとともに、ぜひ、以下の栗田ゼミのホームページもご覧になってみてください。

■おわりに

以上で、『経セミ』2020年8・9月号の特集「経済論文の書き方[実証編]」の関連情報のご紹介を終わりたいと思います(ときどき、追加情報を更新するかもしれません)。

ご覧頂いて、もし「経済論文の書き方[理論編]」「経済論文の書き方[実験編]」や、さらには「経済論文の書き方[数値計算編]」とか、「経済論文執筆のためのプログラミング技法」とか、、、、。

なにがしかご要望などあればぜひご教示ください!(実現できるかどうかは未知数ですが、頑張って検討します…)

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経済セミナー編集部
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