Blog_アイキャッチ_from_PC__26_

職場の人間関係が 良い仕事に直結するという100年前の知見を学びなおす

職場の人間関係。それは会社組織で働くものすべてが大きな影響を受ける仕事の要素といえる。もっとも大きな要素ともいえる。

人間関係がうまくいかないと悩みになりストレスになる。うまくいっていると明日も頑張ろうと思えるし、やる気が沸いてきたり安心を感じることができる。

ぼくらの仕事のアウトプットや日々のパフォーマンスは人間関係に大きく左右されることをぼくたちはそれぞれの経験から良く知っている。

ところが組織になった途端にそれらは軽視される傾向にある。上司はコロコロ変わるし部下だって選べない。組織の設計について人事部が主導することはないし、だいたい鶴の一声で幹部の人事が決まる。

残念ながら玉突き人事が大半で、「ぼくらの仕事のアウトプットを最大化するためにどういう組み合わせがいいか、この部署にはどういった人がいればよいか?」という本来あるべき視点はほとんど活かされないのが組織の現実だ。社内的にパワーのある人が優秀な人材を囲いこむ傾向強いし、全体でいえば優秀(スキルだけではなくハートの面も)な人とというのは数%に限られるし取り合いにもなる。

—— 〻 ——

ぼくはすべてが「場と個性の組み合わせ次第」と思っている面がある。ある部署ではぱっとしない人が他の部署に言ったら生き生き活躍している場合もあるし、その逆でエースのような働きをしている人が別の組織にいくと全く機能しなかったりする。

これは求められる仕事の内容とのマッチングだけではなく、その部署のカルチャーとの相性もあるし、何より人間関係によるところが多い。

だから社内で人の悪”愚痴”をいったり、人を批評する人がいるが、大半は自分を棚に上げている場合が多い。とくに日本の組織は学校でも会社でも同質性や同調を求める閉鎖的な環境があるのでなおさらたちが悪いと感じる。もともと転校族で海外経験も長かったのでぼくはあまりそういった感覚はないがどこにいってもそういった環境を感じることが多かった(個として自立する意識が強いので程よくどこでもうまくやってきたつもりだが)。

このように、ぼくらは個人個人の実体験からは「人間関係がパフォーマンスに大きく影響する」ということを意識しているのに、会社組織になると、ほとんどの問題は人間関係から起こっているといってもいいほど、人間関係で悩んでいるのだ。

—— 〻 ——

そんな人間関係論というのはいつ頃から考えられるようになったか。だいたい100年くらい前に明確な人間関係に関する実験がいくつか出てきていることがわかっている。今日はそんな100年近く前のアメリカでの実験をした人の話を少し書いてみようと思う。

100年前と言えば現代で復刻された東京駅のもともとの姿はすでにあった。フランスではエッフェル塔はたっていたしまさに工業化が進んでいる時期のこと・・・。

1920年後半のハーバードビジネススクールの研究者が電話機を製造する会社である実験を行った。この工場では休む間もなく目の前に仕事に没頭する社員たちがいた。その割に毎月とてもたくさんの人が離職するような結果となっておりパフォーマンスも上がっていなかった。そんな工場を実験としてその研究者がある実験を行った。

■一つ目の実験

100人の製造担当者から6人でチームを作り様々な変化を与えて仕事である電話機を製造する作業をさせた。

どんな変化を与えたかというと、給料、休憩時間、食事、部屋の作業環境など、いろいろな変化を与えてどういったパフォーマンスを得られるかというとても当時としては面白い実験だった。

この6人は結果としてどういった変化があったとしてもチームで良いパフォーマンスを上げるような結果を生み出した。6人は厳しい環境になったとしてもコミュニケーションをとりいろいろな課題を乗り越えて生産性を上げたという実験結果だった。

■2つ目の実験

また別の研究ではこの工場で働く数万人の作業員の生産性について検討をすることになり、社員に対して研究者が個別にインタビュー形式でヒアリングをしてどういったことをすればよいかということを聞いていった。

途中で現場のマネージャーがインタビューを行うようになっていった。そのインタビューを進めている間にも生産性はなぜか向上していった。

インタビューはあまりカチっと決まったことではなく、雑談に近い内容だったにも関わらず、対話をするだけで生産性が向上していったのだった。現場のマネージャーと社員が雑談をすることでパフォーマンスがアップしたという結果が出たことは驚きだった。

—— 〻 ——

この実験からどういったことが言えるだろうか。

・人はほっとけば合理的な行動をするのではなく、極めて人間関係からくる感情でパフォーマンスが左右される生き物であるということ。

・人は金銭的な欲求ではなく、マズローの欲求でいくところの社会的な欲求が満たされることでとても大きな結果を生むことができるということ。

・人は形式的な組織、特に軍隊的な組織や会社でいう縦割りの組織ではない、裏の人間関係などの組織に大きく影響されるということ。

・それぞれの状況に耳を傾けてくれるマネージャーの下では良い仕事をするようになるということ。

こんなことが言える実験だったといえる。

1920年代の後半にすでにこういった実験は行われており、今でいうところの「エンゲージメントをどうあげるか?」ということはすでに研究されていたのだった。

人間は給料だけでは働かない、極めて社会的な生き物であるということが立証されたのがまさにこの時だったといえる。

—— 〻 ——

この実験はいまでは「人間関係論の租」と言われているエルトン・メイヨーというオーストラリア人がおこなった実験だ。

かれは電話機を作る会社であるウェスタンエリクトリック社のホーソン工場で行ったとても有名な実験のことである。「ホーソン実験」と言われているので気になるひとは検索してみてほしい。

ちなみにこのウェスタンエレクトリック社はAT&Tという今であるアメリカの巨大なメディアコングロマリットの子会社で、電話機などの製造を行っていた会社だ。この事業はどうなったというと今はノキアが受け継いでいるというからおどろきだ。当時の電話とはまったく異なるが、100年近く前に実験をおこなった事業が今でもルーツとして残っているのはなんだかノスタルジーに浸ってしまう。

—— 〻 ——

ぼくらがこの実験から感じることができるのは本当に人間関係が重要であるというとても当たり前のことだ。

当たり前だが忘れまくっている事ともいえる。日々の予算だったり、業績へのプレッシャーなどから人間関係にかまっていられなくなってしまっている。最近は人間関係もより希薄になり「結果を出してればそれでいい」とか「人間関係はうざい」という傾向がドンドン強まってきている感じがしている。

テクノロジーの進化や時代背景などもあるが、人間がそこまで100年で進化したとはいえず、いまだに人間関係で悩んでいるということは、人間関係に関する根本的な治癒薬はなく、ずっと取り組んでいかないといけないということなのかもしれない。

むしろ人間関係の問題が大きくなっているとしたら、ぼくらはもっとそれに取り組む必要がある。

逆にいえばちょっと真剣にとりくめば、チームのパフォーマンスがグンと上がって、とても良い結果に結びつく可能性を秘めているといえる。

目の前に仕事には真剣に向き合いつつ人間関係も大切にする。そんな会社の風土がこれから成長する会社の秘訣として実はあるのかもしれない。

ぼくらは2020年、どういった会社の雰囲気を自分たちでつくっていけばいいのか。価値観は多様化し、コミュニケーションツールも劇的に変化し、ライフスタイルもドンドン変わっている中、どんな人間関係があればよいのだろうか。

そんなことを考えながら年末年始を過ごしてみたい。

keiky.

いただいたサポートは、今後のnoteの記事作成に活かさせていただきます。ますます良い記事を書いて、いただいた暖かいお気持ちにお返ししていきたいと思います☆