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とてもわかりやすくスモールビジネスを例に「資金繰りの大切さ」について考えてみる

いろいろと新しいビジネスを考えたり、副業を考えたり稼ぐことを意識しているひとも多いかもしれないとおもって記事にすることにした。

普段ぼくは自社の海外拠点の子会社の経営課題に取り組んだりしているが、現地の拠点は大きな規模ではないし必ずしも優秀なスタッフ部門がいなかったり派遣されている日本人駐在員が数字が全然ダメというケースはむしろ多い。

最近noteをはじめて色々な記事を楽しく読ませていただいているが、私のような古いタイプの会社で働いている人はあまり多くない印象なので、スモールビジネスを例に資金繰りの大切さをうまく説明できないか?と考えた。

なるべく難しいコトバは使わずとにかくシンプルに書いたつもりなので伝わったらうれしい。

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大企業でもスモールビジネスでもお金の資金繰りはとっても重要。むしろ規模が大きな会社よりも小さな会社やベンチャーの場合はよりシビアに把握して気にしていくことが重要になる。

資金繰りが危ういと本来やらないといけない事業の中身に集中できなくなっていいことはないし、もし人を雇っているようであればその人の人生や家族の生活もあずかることになるので良い仕事をしてもらうためにも不安を払拭し、仕事に集中できる環境を提供しなければならない。

そんな資金繰りについてちょっと失敗すると黒字なのに倒産して会社が潰れるということが普通に起きることになる。専門書はたくさんあるので深掘りはしないけど、さらっとイメージだけでもまとめられたらと思った。

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【例】

インテリアが好きな山下さん。趣味の旅行で偶然立ち寄った手作りで食器作っている地元の職人に出会う。素敵な食器にほれ込みインスタにアップしてこの素晴らしい可愛さをシェアした。

東京のレストランでバイトをしている友達がレストランの店長にインスタの写真を見せたところ気に入ったようで、山下さんに仲介して売って欲しいという依頼があった。チェーン店で使ってもらえる可能性があるようで、定期的に売ってほしいということで彼女は試しにビジネスにしてみようと思ってとりあえずやってみることにした。

山下さんは手持ち10万円のお金を使って、職人には前払いで5万円払って食器を仕入れた。ワンルームの部屋が狭くて保管場所がないので近くのレンタル倉庫に月3万円スペースを借りた。

レストランの店長には9万円で買ってもらう約束ができたので9万円から仕入5万と倉庫3万を引くと1万円の儲けだ。これが毎月入ったり、他に色々商品を増やしてセレクトシップ的に少しずつ増やしていければ副業として最高だと山下さんは思った。店長からは支払いは他の業者と同じ2ヶ月後払いにしてほしいということでOKした。

そして彼女の副業は失敗に終わった。

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彼女のどこが悪かったか。

先程の例を整理するとこんな条件。

手持ちの資金 10万円
倉庫代  3万円/月
レストランへの売上9万円 2ヶ月後払い 
食器の仕入   5万円 前払い

山下さんはもともとのインテリア好きな趣味を活かして全国のものを目利きして売るという卸の商売を考えている。手持ちの資金を元手に食器を仕入れてレストランに卸す商売が彼女のビジネス。

山下さんのビジネスがどんな感じで終わったのか簡単な時系列にまとめると以下のようになる。

図1

この図から言えることは端的にいうと最初に始める資金として10万円ではお金が足りなかったということ。確かに五万円で仕入れて9万円で売ればとっても良い商売で副業にはもってこいのビジネスのように最初は感じられる

まずは諸経費がかかるので利益率はまず低下する。

そしてそれ以上に重要なのは仕入れた食器の代金を払う条件とレストランからお金を払ってもらう条件のギャップ。仕入れたものを現金払いすると先にお金が出ていく一方で、レストランからの入金は数ヶ月後にならないと入ってこない。手元の資金がなくなって倉庫代や仕入れ代金を払えなくなってしまう。

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山下さんはこれからどういったことをして今の状況を改善できるか。

彼女がやれることは大きく3つ。

値上げは難しい。初期設定をミスったともいえるが相場もあるし大きな値上げはできない。

山下さんはまずやることは職人に代金の支払いを伸ばしてもらうか、レストランからの入金をもっと早くしてもらうこと。

はじめて何かを仕入れるときは、こちら側に商売のお金を払ってくれるという信用がないので掛け(ツケ)では買わせてくれない。それでも交渉はしてみるもの。

仮に山下さんがうまくレストランの店長に話をして1か月前倒して支払ってもらえるようになったとする。一方で、食器を仕入れた職人さんには払えなかった場合の補償をして2か月後の支払いを許してもらったとする。

そうすると今度は以下の図になる。

図2


これで資金繰りは何とか回る状況になった。3か月後にも5万円のお金がのこっていることになる。

もっと他にできることはないかと山下さんは思った。

次に彼女が取り組んだのは倉庫代の削減。遠いけど実家の空いている部屋を借りれば無料だけど、仕事もしているし不便。色々と倉庫のサービスを調べていたらいま3万円をだしてかりているレンタル倉庫よりも多少ボロくてせまくなるが1万円で借りれる倉庫を発見した。

毎月発生する出費がこれで減らせると思って山下さんは倉庫をかえた。その影響を反映したのがこちら。

図3

手元に残るお金が明らかに増加しているということが分かる。

このように資金繰りを考えることで、お金が不足することを防いで安心して山下さんは次のインテリアや食器を探したりする本来のビジネスの仕事に集中することができるようになった。

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ちょっと出来すぎかもしれないが簡単な例をもとに資金繰りの大切さについて書いてみた。

もし、こういった形で交渉が出来なかった場合は、最後にやることは新たに資金を増やすこと。

どうやって増やすかは自分の貯金からお金を追加するか、だれかにお金を出してもらうか(どちらも企業で言えば増資や出資)。それか友達や親から借りる(企業で言えば銀行からの借り入れ)。

だいたいビジネスは思っていたよりもお金がかかるというのはよくある話で、ぼくの会社で事業部門からあがってくる投資案件の資料ではこのあたりの見込みがかなりあいまいなことが大半。

ぼくは投資を許可したり承認する部署ではないので、計画を事前にみて話を承認部門に提案していく前にもうちょっと考えた方がよいこととかを伝えているけど、その大切さは誰も理解せず「なんとかなるだろう」とおもっていることが多い。これはもともと「自分の金ではなく会社の金だから自分には影響ない」という心理的なスタンスが影響しているとぼくは思う。

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自分でお金を出すのであれば資金繰りはなおさら大切なことといえる。山下さんがやった改善で彼女のビジネスは一気に好転した。

もう一度流れだけまとめておく(小さくてすみません)。

図4


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歴史的にも非常に良い例がある。

江戸時代の商人である三井さんは織物を売る商売をしていた。彼は商売の才能があって、サービスをよくする一方で今までのツケ払いの慣習を無視して現金での支払いのみを受け付けた。

彼はお客さんがそれでも良いというサービスを提供しながら即日お客さんから現金をもらえるということで何ヶ月も現金化されるまで待つ必要はない。こうしてお金の巡りをよくして利益を上げていった。

三井さんは順調に織物の商売を大きくしていき、織物の仕入れのために金と銀の両替商もはじめて、お金を払う側のほうでも手数料や両替のタイムラグを防ぐために両替商をはじめた。

この三井さん、三井高利が作った織物の会社は三越となり、両替商は三井住友銀行となった。

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この三井高利と山下さんがやっていることは全く一緒である。

お金は経済の血流であるというのはよく言ったもので、血の巡りを良くすることを意識しないといけないという教訓を教えてくれる。

山下さんだけの問題でもない。実際に会社では売上、営業利益が重視されて、財務部門など一部の部門以外は誰もお金の流れ、キャッシュフローを見ていない現実もあって、なかなか重要性は会社でも理解されない。

投資家はキャッシュフローを重視するが会社側は二の次で売上、営業利益で見ざるを得ない面がある。会社を運営する上で管理する指標としてキャッシュフローでは営業や事業部門を管理したり引っ張ることが難しいからだ。

個人事業であれば別だが、ある程度の規模になると営業も製造も技術開発も人の手を借りてやっていくしかない。人の手を介するため、どういったことをしてほしいか目標設定が必要になる。

キャッシュフローというのは事業をやった結果であり、仕事を請け負う社員からは分かりづらい。営業であれば予算のように何をいつまでに売らないといけないかといった目標の方が分かりやすいし、それは利益目標から逆算した開発目標が必要な開発部門や、利益率目標からコストダウンなどに組む製造の部門も同じ。

このように組織になるとお金の流れが大切であってもそれで運営していくのが難しいので、「山下さん=日本企業」とも言える。

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ぼくも最近ジムに通って体を鍛えはじめた。もともと遺伝的にLDLが高いけど、自分にできることもあると思って、血管を鍛えることにした。

体も会社も血の流れを良くしていくとエネルギーが満ち溢れてくるに違いない。

それでは今日はこの辺で失礼します。

keiky.

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