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クリステンセン教授にご冥福を [イノベーションのジレンマ・ジョブ理論・イノベーションオブライフ]



先週23日に僕が敬愛するクリステンセン教授が67才という若さでこの世を去った。

もともと体の調子が良くなかったらしいということは認識していたが突然のニュースに驚いた。クレイトン・クリステンセンさんはハーバード・ビジネス・スクールの教授でイノベーションの研究の権威だ。ぼくが説明するのがおこがましいほど有名な方で著書「イノベーションのジレンマ」で破壊的イノベーションの理論を確立させた。

ぼくは彼の本は以下の本を読んだことがあるが、今でもバイブル的に読んでいる本は「イノベーションオブライフ」と「ジョブ理論」の方だ。

・イノベーションのジレンマ
・イノベーションの最終解
・イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル
・イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ
・ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム


今日はイノベーションのジレンマ、ジョブ理論、イノベーションオブライフの3冊をクリステンセン教授に敬意を示して簡単に振り返ってみたい。


■イノベーションのジレンマ


イノベーションのジレンマではいかに企業がイノベーションでつまずくかということを分かりやすく説明してくれている。

彼は既にある程度安定的に市場でポジションを築いてビジネスをしている企業は官僚主義や慢心、近視眼的な投資が定着してしまう傾向が出てしまい、技術や市場構造の変化に直面したときに方向転換ができなくなることをまず現象として説明してくれている。

クリステンセンさんはそういった状態に陥るのは経営者が怠けていたとかアホだったからということではなく、「逆に優れた経営をしているからこそ」そういった状態に陥ったと考えた。

優良で安定的な企業の多くは顧客の声に耳を傾け、顧客が求める製品を増産し、製品を改良する為の新技術に積極的に投資する。それはある意味「今までと同じ延長線上の努力」でしかない。

一方で破壊的なイノベーションはむしろ製品の性能を引き下げる効果を持つ技術であり、そういったイノベーションはむしろ市場のリーダー以外から持たらさせるということを指摘している。

業界トップにいる企業が高品質の製品サービスを提供することが逆にイノベーションに立ち後れ、失敗を招くという考え方は視点として非常に画期的でいろいろな示唆をぼくらに与えてくれる。

例えばカメラ市場が分かりやすい。

過去フィルムカメラに対するデジタルカメラが出てきた時にデジタルカメラは画質などで銀塩写真に比べて画像の質は低くフィルムカメラのメーカーは、この技術に関心も注意も払わなかった。

もうちょっと時間軸を現代に近づければ、デジタル一眼でもミラーレスなんておもちゃだとおもってフルサイズに注力していたのもいつのことやら現在はミラーレス機もかなり勢力を増している。他にもスマホのカメラがこれほど高性能になるとはデジカメ市場は思っていなかっただろう。

トップを走る企業がやりがちなのがハイスペック化だ。さらに今あるものを持続的に向上させることを止められない。そうすると比較的に性能が低くても顧客の需要を満たす、新たな技術をもった新規企業に市場を奪われる隙を作ってしまう。

このように彼の書いた「イノベーションのジレンマ」は多くの優良企業がなぜ革新的な製品を作れないかということをするどく分析されていて、読むべき本の一つといえる。


■ ジョブ理論 

実は読み物としてはイノベーションのジレンマよりこちらの方が面白いと個人的には思っていたりする。

彼が本で書いているジョブ理論というのは、お客さんがその商品を何で買うか?ということを突きつめて考えるための考え方で、大きく「ジョブ」「雇用」「解雇」という3つのキーワードを使って考えるという理論と説明できるとしている。

ぼくたちの普通のビジネスの世界では「お客さんのニーズをつかめ」とか、「マーケティングをしろ」という発想になるが、彼の理論はそうではなくて、一つの大切な言葉を考えることから、お客さんにとって必要なビジネスをどう作るか?ということを考えるべきであると提起してくれている。

ジョブ理論ではお客さんが「片づけたい仕事」をジョブと定義している。そのジョブを片付けるために製品やサービスを購入したり利用することを「そのジョブに雇用される」と捉える。お客さんはそのジョブが終わればその製品やサービスを雇用するという必要がなくなるので「解雇」する。

こういった捉え方をすることでイノベーションが生まれるということを理論的に説明している本がジョブ理論といえる。


これは良く使われる比喩である「お客さんはドリルが欲しいのか、穴がほしいのか」というたとえ話に通じる考えであり、お客さんが本当は何をしたいのか?ということをつかむためにとても有効な考え方とぼくは考えている。

自社の製品やサービスを売ろうとするあまり、お客さんが本当にほしいもの、お客さんが本当に満たしたい満足はどこからくるのか?ということを忘れてしまう。そんな僕らに商売の原点を振り返らせてくれる理論なのでお勧めしたい。


■ イノベーションオブライフ

これは正直ぼくの中ではクリステンセン教授のベスト。

ハーバードを卒業する人にどういう人生を歩んでほしいか?というメッセージ性の強い本だが、キャリアに悩めるあらゆる人に響く内容となっている。

彼が体調を崩して降壇するときに学生たちに、どういったキャリアを築いたら良いか、どういった人生を歩んでほしいか?という最後に思いを込めた本で、これは会社を辞めようか転職しようか続けるか悩んだときにいつも手に取って読み返している本で、おすすめしたい本だ。彼が長年研究してきたイノベーションをどう個人で起こしていくかということを思いを込めて書いていることが伝わってくる一冊となっている。

ビジネスの世界では企業は優先順位を決めて様々な戦略をたて、この先現れる機会や脅威にどう対応するかと言ったことを検討している。個人もまた同じで、私たちは自分のキャリアについて「こうありたい」と言う意図を持って行動するが、予期しなかった機会や脅威が現れるのでそういったときにどう考えるかということを説明してくれている。

心から愛する仕事をどう見つけるか、どういった「動機付け」をすると人は仕事への愛情が生まれるのか。どうしたら本当に意味のある仕事、興味深くやりがいがあり、職業的に成長できる仕事をみつけられるか。

まだそういった仕事に残念ながらぼくは巡り合っていないが、探し続ける大切さについて教えてくれる。60歳で見つかるもしれないのだから。

また、将来の幸せに対して投資するというパートもおすすめだ。家族など人生の最も大きな幸せの拠り所なのでこうした関係にも絶えず気を配り、手をかける必要があるということを書いてくれていて、ジョブ理論を応用して家族や親しい人の「用事」を自分が「片付け」ることで大きな幸せという見返りが得られると教えてくれる。

—— 〻 ——


クリステンセンさんのご冥福をお祈りいたします。

これからも世話になります。

Keiky.



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