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「素人主婦webライター」を批判する前に考えたいこと

 
ツイッターでこの記事が話題になっていました。

 
要約すると、こんな感じです。

37歳の専業主婦、リナさんは出産直後のドタバタが収まったタイミングで働きたいと思い、フリーランスライターになった。良いパートタイムの求人があるか不安だったし、フリーランスはなんかかっこいいから。しかし、仕事に没頭しても月収3万程度。さらにセミナーや交流会に出るから赤字続き。情報収集のSNSに没頭して家事育児もおろそかになり、夫から怒鳴られる。カフェで大学時代の友達に相談するも、SNSの通知にずっと対応していたためウンザリされ、それ以来疎遠に。夫にも友人にも理解されない、子供が仕事の邪魔をしてくると感じるようになるなど、どんどん精神的に参ってますますSNSの仲間にのめり込むようになる……。


 
私はライター歴12年、フリーランス歴8年です。
この視点から見れば、「ライター業とフリーランスを舐めるな。そんな甘くないんだよ」。以上。
 
しかし専業主婦経験者という立場から考えると、リナさんの気持ちも理解できます。
 
私は会社員ライター歴数年のときに出産し、育休を経て復職しました。
しかし家庭との両立に挫折して、わずか4ケ月で退職。
当時は夫の出張が多く月に0日~数日しか家におらず、ワンオペ育児で心身が崩壊しかけたのが原因です。
 
退職して一時期専業主婦状態だったのですが、これが何とも言えず辛い。
タスクの多さや難しさではなく、出産しただけでこれまでの学歴や職歴や努力が強制終了されるのがなにより虚しかった。
 
仮に犯罪に手を染めて過去が台無しになったのなら、自業自得で諦めがついたかもしれません。

でも私は、何も悪いことはしていない。
むしろ出産は非常に喜ばしく、周囲からも祝福されます。
自分の子供は無条件でかわいい。
 
でも……。
現状を「幸せ!」と手放しで喜べない自分になんだか罪悪感を覚える。
幸せなはずなのに、心のどこかが満たされない感覚がある。
 
この「満たされない感覚」を引き起こしているのは、出産により失われたもの。
私の場合は仕事でした。
 
このまま専業主婦状態を続けるのは無理だと思い、少しずつフリーランスになる準備を開始。幸いライター職は取材等以外は自宅で作業ができたりと子育て中でも働きやすい職種なので、現在にいたるまで継続しています。
 
もし私が販売職など自宅ではできない仕事を得意としていたら、どうなっていたんだろうと思います。
心にぽっかり空いた穴を埋めるため、「ママだってフリーランスで自分らしく輝ける」みたいな起業セミナーに心を奪われ大金を払っていたかもしれません。
 そう、私もリナさんのようになっていた可能性があるのです。

経験者なら分かると思いますが、孤独な子育てを続けていると正常な判断ができなくなることがあります。
たとえば被害妄想にとりつかれたり、怪しい話を信じてしまったり。

私の知人は子育て中に訪問販売の人と話せるのが嬉しくて仕方なく、不要なものを契約してしまいました(クーリングオフできたそう)。
ちなみに普段は、ごく普通の常識的な人です。
そのくらい、孤独は人を狂わせます。
 
この記事のリナさんも、子育ての疲労や孤独で判断力が鈍っている可能性があります。
そんな中で、SNSでは仲間として迎えてもらえ、激安案件のクライアントは「ありがとう」と言ってくれる。
心の穴を埋めるには充分なのかもしれません。
 
リナさんを責めるのは簡単です。
でも私は、妊娠出産した途端に働き口が激減する社会にそもそも問題があるのではと思います。
子供を抱えて働こうとしたら、できるのはパート勤務くらい。
パート勤務で任せられるのは基本的に単純労働で、将来のキャリアにプラスになることはあまりありません。
さらに保育園や学童保育の空きがなかったり家族の協力が得られなかったりして、それすらできない人もいます。
 
そうなると、「自宅でフリーランス」がとても魅力的な選択肢に見えてくる。
自分で仕事を獲って実績を重ねていけば、わらしべ長者のようにどんどん大きな仕事を任される可能性もあり、時間も融通が利く。
実際にはとても厳しい世界ですが、「パートより夢がある」とも考えられます。
 
しかし逆に言えば、魅力的な働き口があればわざわざフリーランスを選ぶ人は減るのではないでしょうか。
 
日本の会社では、高いパフォーマンスを出せることより長時間勤務できることが評価されます。
6時間働けるトリリンガルの乳幼児の母親より、10時間働ける英検4級の男性が重宝される世界です。

文章が好きでもないのにフリーライターを目指し、怪しい高額セミナーに赤字を出しながらも参加する人が何人もいる社会は正常とは言い難い。

短時間でも会社員としてやりがいのある仕事をして正当な対価を受け取れる働き方や、安心して子どもを預けられる仕組みを、社会全体で作っていく必要があると私は思います。

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