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詐欺臭のする怪しげなwebライター養成講座の説明会に潜入してみた。

 とあるwebライター養成講座の説明会に潜入取材をしました。
なぜこんなことをしたかというと、「ライター職が食い物にされている」と感じているから。
一部のwebライター養成講座の広告には「楽に稼げる」「誰でもできる」という趣旨の言葉が並び、誇りを持ってこの仕事をしているコピーライターの端くれとして残念な気持ちになります。
 
どんなものかをこの目で確かめるために取材を決行しました。

その結果、真面目なwebライターが間違って変な講座に時間とお金を費やさないように注意喚起したほうがいいと思い至り、「webライターで簡単に稼げる」の実態を伝えるためにこの記事を書いています。
 
この講座を名指しで批判するつもりはないので、講座名は伏せ(スクールAと表記します)、大意が変わらない程度にフェイクを織り交ぜています。
スクール名を教えてほしいという個別の問い合わせにも対応いたしませんのでご了承ください。
 

ネット広告からメルマガ登録へ


スクールAはネット広告で知りました。
そこからメルマガに登録し、動画教材やPDF教材を無料でもらうという、きわめてオーソドックスな流れです。
 
教材の中に、ライティングスキルに関することはほぼなし。
自分と受講生がどれだけ稼いでいるか、会社を辞めてお金を手に入れればどれだけ自由な人生が手に入るか、どうすればコピペで効率よく記事が作れるかなどばかりでした。
 
その後も定期的に、受講生の成功事例や稼ぐためのマインドなどについてメルマガや動画が送られてきます。
 
そしてある日、オンライン説明会の案内が届きました。

 

いよいよ説明会開始


説明会は物々しい雰囲気ではなく、普通のオンライン集合セミナーのような感じ。
最初は参加者側から簡単な自己紹介をします。
その後は主宰者の自己紹介ですが、どんな媒体でどんな記事を書いたかなどの話題は一切なし。
webライター時代の年商、今の年商、お金に悩まされず時間に縛られず自由気ままに生きる楽しさなどを話していました。
 
続いては、受講生の成功事例紹介。
「○ヶ月で○万円稼いだ」の話が延々と続きました。

気になることがあったので、私は質問を投げかけます。
 

「○ヶ月で○万円達成」の実態は?


 
私「さきほど、1年で60万円達成という男性の事例がありましたが、1年後に月収60万円を達成したのでしょうか。それとも、年間の収入が合計60万円だったのですか?」
 
若干間があった後、答えが返ってきました。
「1年間で60万円です」
 
ということは……。
 
60万円÷12ヶ月=月収5万
 
私が「え、少なくない?」というリアクションだったせいか、フォローを入れてきました。
「フルタイムで働いている方なので、あくまで副業です」
 
「5万」だとインパクトがないけれど「60万」だと目を引く。
数字の見せ方で、高額を稼いていると錯覚させているのかもしれません。
 
年商500万円超の事例もありましたが、年「商」なので年収は不明です。
 
※このスクールではクラウドソーシングをベースに稼ぐ方法を教えているため、これから伝えることはクラウドソーシングを利用することが前提になっています。
 

ズブの素人が文字単価2円以上の案件を獲得できるカラクリ


SNSを見ると、文字単価1円以上の案件をなかなか受注できず、0.3円や0.5円で疲弊しているwebライターのよく声が聞かれます。
 
しかしスクールAでは、一度もライティングの仕事をしたことがない人でも文字単価2円以上の案件を獲得できるそう。
 
その理由は、プロフィール、ポートフォリオ、提案文を徹底的に主宰者が添削するから。
 
確かに転職活動でも、英文履歴書を提出前にネイティブに添削してもらうことがありますから、それ自体は悪いこととは思いません。
 
でも詳細を聞いて、疑問が出てきました。
 

加工モリモリのポートフォリオ


このスクールでは案件を受ける前に、サンプル記事(ポートフォリオ)をまず作るそうです。

ポートフォリオの実物を見せてもらいましたが、ザ・SEO記事でした。
 
「おすすめ○○5選」とか「今話題の○○とは?徹底解説!」のような、AIが5秒でアウトラインを作ってくれそうな記事です。
ただしきれいな写真を使用してデザインを整えており、ぱっと見は普通の記事と遜色がありません。
 
主宰者は「初心者が書いた記事には見えないですよね。こちらと比較してみてください」と言い、どこかのwebメディアの記事を見せてきました。
 
確かに文字列と写真が交互に並び、見た目はそんなに変わらない。
でもそのメディアの記事はインタビュー記事。
コピペでは書けない、プロのライターの仕事です。
 
でも何もわからない人なら、「すごい!いきなりこんな記事を書けるなんて」と思ってしまうかもしれません。
素人が遠目に見たら、本物の自動車とモックアップ(実物大の模型)の区別がつかないのと同じです。
 
ポートフォリオだけでなくプロフィールも提案文も、徹底的に何度も何度も添削してパーフェクトなもの作るそう。
 
ここで疑問が湧いたので聞いてみました。
 
私「発注者はポートフォリオやプロフィールを見て、この人なら書けそうと判断して依頼をすると思います。でも実際は、ライティングの経験がほぼないですよね。記事は書けるようになるんでしょうか。仕事として記事を書くときも、アドバイスはいただけますか」
 
主宰者「はい。仕事の記事を添削することもあります」
 
私「今、守秘義務とか情報保護とかうるさいじゃないですか。一般公開前の記事を他の人に見せても大丈夫でしょうか」
 
主宰者「まあ、第三者への開示はダメと書いてある案件とかの場合はやらないです」
 
なんとも歯切れが悪い。

最初は、守秘義務などを無視して添削をしているのではと思いました。
しかし後ほど判明したのですが、記事添削の回数は月に10回未満。
全部の案件を添削してもらうことは無理そうなので、ズブの素人が書いてそのまま納品している可能性があります。
 
ポートフォリオ等の添削自体は良いサービスです。
しかし相手を騙すレベルにまで手を加えることは、原型をとどめない加工を施したプロフィール写真でマッチングアプリに登録するようなものではないでしょうか。
守秘義務などへの意識の低さも、疑問に思わざるをえません。
 
「盛った」ポートフォリオで文字単価2円以上の高単価案件を獲得はできるかもしれませんが、継続につながるのでしょうか。
 

記事を書かずに数十万を稼ぐ仕組みとは?


webライター養成講座なのに、文章をまったく書かずに稼ぐ仕組みも教えているそうです。
 
方法はシンプル。
文字単価の高い仕事を受注して、低い文字単価で外注する。

たとえば文字単価3円の仕事を文字単価1円で下請けに出せば、差額2円が儲けになる。文字数が合計10万字あれば、20万円の利益が出ます。
 
つまり、中抜きです。
主宰者は「文字単価1円未満で苦しんでいる人に、文字単価1円や2円の案件を紹介したら喜ばれる」と話していました。
 
もはや、案件の転売ヤー。
「私が新製品をいち早く買うおかげで、あなたは並ばず買える」と変わらない思考回路。
 
同じwebライターから搾取する狡猾さに、ある意味感心しました。

原稿を下請けに出すこと自体はライター界ではよくありますが、元請け側は原稿の品質に責任を持つ必要があります。
ライティングの勉強をほぼしないこのスクールで、クオリティが担保できるのか心配です。
 
さらに言えば、第三者への再委託にも疑問が残ります。
再委託を禁止していたり許可が必要な案件も少なくありません。
先ほど守秘義務について言葉を濁していたことから察するに、ルールを破っている可能性を否定できない。
発注者が気づかないところで、案件が見知らぬ誰かの手に渡っていることも考えられます。

発注者はポートフォリオやプロフィールを見て、「この人になら任せられそうだ」と信じて依頼するのに、実際に書いているのはまったく別の人。
もっと言えば、ポートフォリオにもプロフィールにも第三者の手が大幅に入っている。
もはや、発注者を騙しているレベルだと感じました。
 
こんな人たちが増えたらwebライター全体の信頼度が落ち、真面目にやっている人が損をする事態になりかねないと危機感を覚えています。

 

webライターからステップアップしてさらに稼ぐ方法


クラウドソーシング以外にも、LP制作とメルマガの作成をセットで受注し、1案件で数十万円を稼ぐ方法も教えているそうです。
 
主宰者曰く「LPとメルマガには文章力が必須だからwebライターと親和性が高い」。
これは間違いありません。
 
しかしこれまで見てきた通り、ライティングスキルは身につきそうにないスクールです。
webライティングならコピペでお茶を濁せるかもしれませんが、白紙からLPとメルマガを作るとなると、そうはいきません。
 
考えてみてください。
ご自身が発注者だとしたら、数十万も払ってまともな文章を書けない人に依頼をするでしょうか。
 
このスクールに入っても、ライティングスキルも収入も上がらないと私は確信しました。

受講料は?


最後に価格が発表されます。
3つのコースがありました。
 
Aコース→55万円
webライターとして稼ぐスタンダードなコース
 
Bコース→95万円
Aコースに、中抜きのやり方がプラスされる

Cコース→165万円
Bコースに、LP制作とメルマガ構築がプラスされる
 
こうしたセミナーのよくある手法として「説明会参加割引!」「○日以内なら○%オフ!」「本日中なら○万円引き!」と、まったくありがたみのないディスカウントが繰り広げられ、最終的にここまで下がります。
 
Aコース→55万円→35万円
webライターとして稼ぐスタンダードなコース
 
Bコース→95万円→75万円
Aコースに、中抜きのやり方がプラスされる
 
Cコース→165万円→145万円
Bコースに、LP制作とメルマガ構築がプラスされる
 
いずれにせよ、とんでもない金額です。
最初のほうで、副業で月額5万円を稼いでいる男性の事例を紹介しましたが、いちばん安い35万円のコースだったとしても、元を取るのに7ケ月かかります。

全体を通じて


主語は常に「私」で、テーマはずっと「いかに楽に稼ぐか」。
発注者や読者への配慮はなく、文章力向上にも関心がないようです。

ライター職が金儲けの道具にされていて、怒りと悲しみが湧いてきました。

綺麗ごとかもしれませんが、ライターの存在意義は言葉の力で人や社会に何かしらのプラスを提供することだと私は思っています。

先日も、ホームページのコピーライティングを担当させてもらった習い事教室の先生からこんな言葉をいただきました。
「ホームページを開設してから、遠方から通ってくれる生徒さんが増えました。新しく始めたレッスンも好評です。仕事がますます楽しくなりました」

涙が出るほど嬉しかったです。
私は「稼いでいます」と言えるレベルではありませんが、こんな喜びがいつもあるからコピーライターを続けています。
似たような気持ちの同業者は他にもいるはずです。

確かに営業力など稼ぐスキルは必要ですが、一定以上のライティングスキルと読者や発注者を思いやる気持ちがあってこそ意味があります。
 
順番が逆になって稼ぐことが最優先になると、おかしなスクールの甘い文言に吸い寄せられてしまうかもしれません。

なお、確実に稼げてライターとして最も早く実力がつく方法は、間違いなく就職です。
文字単価0.3円のwebライターと会社員コピーライターを両方経験した私が断言します。

ただし家庭の事情等で、会社勤めができない方もいるのが現実。むしろ、働きに出られないからwebライターを始めた方が多数派かもしれません。
そんな方にとってスクールを活用する意義はあると思いますが、文章力と取材力をしっかり学べるかどうかを確認することをおすすめします。

 

なぜ悪徳webライター養成講座がはびこるのか?


ここからは蛇足です。
最初は「詐欺まがいの講座に騙されるほうが悪い」と思っていましたが、実態を知るにつれて考えが少し変わってきました。
 
受講生の中には、色々な境遇の人がいました。
 
福祉の仕事をしているけれど給料が安い。
子供がいて働きに出られない。
年齢的に再就職が厳しい。
地元に仕事がない。
 
もし、真面目にフルタイムで働けば普通に生活できる給料をもらえたり、子育て中でも就職しやすかったり、年齢に関係なく転職できる雇用の流動性があったり、どこに住んでいても働ける環境が整っていたりしたら、睡眠時間を削って副業に手を出したり、怪しげな講座に大金を払ってフリーランスになるメリットはないはずです。
 
怪しい業者を駆逐するのは対処療法にすぎません。
それ以前に、社会構造に問題がある気がしてきました。


普段はコピーライターとして、企業や歯科の取材記事作成をメインに行っています。
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