思い出す

お盆を過ぎて思い出す。嘘です、毎日思っています。

私の父は3年前に他界した。今でも息を引き取る瞬間をまざまざと思い出せる。でも辛いところや悲しいところは振り返ったらいやだよね。

いつも陽気な父でした。

子供の頃から父が大好きだった。
ピアノを弾いてくれたり一緒に映画を見たり、音楽のジャンルや美術のノウハウを教えてくれたよね。大人になってからもおすすめの本を貸し合いっこしたっけ。

結婚が決まる前、実家のアパートが売れた。

自分たちはもっと広い所へ引っ越せるけど、もしも私がうまくいかなかったときに帰る場所がないから、とそのまま住み続けたことを、父がいなくなってから聞いた。

いつでも私のことを考えてくれていた。

それなのに私は日に日に何もできなくなっていく父が、その運命が憎くてひどいことを言ったりひどい態度をとったりした。
一番悔しかったのは父さんだよね。ひどいよね。

彼が意識を失う前日、最後に話をしたのは私だった。

病室のベッドでテレビを見ながら普通の会話をした。ちょうどその頃、私は謎の半身痺れがあり翌日から検査入院するところだった。
父は自分の体より私のことの方が心配そうだった。

部屋を去る前に、検査入院が終わったらすぐ来るからそれまで頑張ってよと言い、部屋を後にした。
麻酔で痛みを抑えられた父は、以前のように陽気に手を振って私と別れた。

父の病院の先生は、私の検査入院が終わる2週間後まではなんとか延ばしてみせると言ってくれた。
私はその言葉を信じて入院した。

しかし父は翌日この世を去った。
あまりにも早かった。

まるで私が入院するのを見届けてから逝ったかのようだった。

いろいろなことが業務的にこなされ、
父は灰になった。

今でも実家にいくと父の部屋はそのままで、父の書いた走り書きなんかが壁に残っている。
父だけがいなくて、まるでちょっとそこらへんに出かけていったかのようだ。

やっぱりどこかにいるんじゃないかと思う。

子供を産んでから毎日忙しい日々を送っている。
毎日なにげなく過ごしているけど、家族といられる時間なんてほんの少しなんだよなぁと、時々強く噛みしめる。

あぁ、やっぱり父さんに会いたいなぁ。

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