第一話 僕は才能を人生のどん底で知った
あんな状況で、自分の才能を知ることになるとは思わなかった。
「あなたには文章を書く才能があるかもしれない。ここから出たら、そういう仕事に就いてみたらどうですか?」
弁護士は九枚の便せんにさっと目を通し、まもなく控訴審がはじまる僕に言った。
後悔と自責、自省、未来への意欲を綴った反省文。
それは当時、不利だといわれていた控訴審に提出するため、二日間にわたって徹夜して書いたものだった。
― 本当に俺に文才なんてあるのかな?
僕は彼の言葉に頷きながら、心のなかで呟いた。