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第七話 失恋間近の二十六歳の僕へ

この記事はシリーズものです。
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二十六歳の僕、初めまして。
四十四歳の僕です。

急な手紙に驚いたことでしょう。
実は僕も驚いています。

まさか過去の自分に手紙を書くことになるなんて。

なぜ手紙を書いたのかって?

君が美紀との未来をどうしても知りたいと、切望したからだよ。

望みが叶って、よかったじゃないか。
こっちはこっちで、忙しいのに書いてやったんだ。

有難いと思いなさい。

さて、前提として伝えておきたいのは、未来はいかようにも変えられるということだ。

これから僕がここに何を書こうと、あまり気にしないように。

二十六歳の僕よ。

君は今、毎日反省しているね。

その調子だ。

あと一年くらい、そんな感じで生きていってほしい。

すぐにここから出られないのかって?

そのあたりのことは、なんとなく君も気づいているはずだ。

世の中、そんなに甘くねえよ。

んでね、落ち込んでいるところ悪いんだけど、伝えたいことがある。

君は美紀にフラれる。

理由はね、「好きな人ができたの」ってやつだ。

しかも相手の男は君より年下だよ。

それで、だ。
まだ話は終わっていない。

ショックを受けて、さらに落ち込んでいるところ悪いんだけど、もう一つ言いたいことがある。

美紀が初めて面会に来てくれたとき、君はこう思ったね。

―― あれ? これが美紀?

とぼけても無駄だよ。

四十四歳の僕は、すでに体験してきたことだからね。

別に美紀に対する気持ちを疑っているわけではないんだ。

ただし、はっきり言おう。

美紀との恋愛を美化しすぎた。

本人が初めて面会に来たとき、一瞬、そのことに気づいたよね?

……だから、とぼけても無駄だよ。

まあ、無理もない。

恋愛は障害があるほど燃え上がるものだからね。

ちょっと君が可哀そうになってきたから、いい話もしておこう。

君は綺麗な女性が大好きだね。

将来、何度か、そういう女性と出会うだろう。

え? どんな女性かって?

これだから二十六歳の僕は困ったものだ。

いいかい?

目の前で起こる出来事を、点に例えるとしよう。

一つの点だけで人生を判断しちゃいけない。

今は、この言葉の意味がわからなくてもいい。

でも、けっして忘れないでほしい。

結局、何が言いたいのかって?

綺麗な女性たちが目の前に現れたとしても、関係がうまくいくかどうかは別の話ってことさ。

まあ、めげずに図太く生きろ、僕。

君は何があっても大丈夫なのだから。

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