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一拠点・縦展開か多拠点・横展開か?地方のまちづくり会社がとるべきポジショニング戦略

宮崎県都農町に移住し、まちづくり会社イツノマを起業して5年目。
都農町のまちづくりをするために、本社と居住地を都農町に。

最初は、まちのグランドデザインや廃校活用、中学校の総合学習など町や財団法人からの業務委託でスタート。

その後、コワーキングスペースやホステルなど直営事業をスタートし、日々運営中。

まちづくり会社に定義があるわけではありませんが、個人的には事業スタンスと、対象地域拠点の2軸で、進むべきポジショニングの戦略を整理しています。

1.事業スタンス

事業スタンスは、大別するとコンサル・業務委託か、直営・製造事業か。
わかりやすくいうと、お金のリスクを直接とらないか、とるかの違い。

①コンサル・業務委託

町が発注者として、多くの場合、プロポーザルや入札などによって、長期総合計画や、施設基本計画、広報・人材系のコンサルティングなどの業務委託を受ける仕事。

地方の特に小さな町では日常生活における町役場の影響力が大きく、住民によい影響を及ぼせるモノやコトをつくろう、起こそうとする際に町役場との協働は不可欠なんです。結果的に、町役場からの業務委託を受けることが、実践につながりやすいと実感してます。

言い換えれば、都市部のデベロッパーのように、まちに影響を及ぼせる資本をもった民間企業は滅多いにいなく、クライアントはほぼ町役場一択。

ただし、コンサル・業務委託に偏ると2つのリスクが生じます。

売上が不安定

1つめのリスクは、一部の随意契約などは別にすると、多くはプロポーザルなど公平性を担保する発注方式になるため、売上がゼロヒャクになりがちなこと。

地元から信頼されにくい

2つめのリスクは、コンサル・業務委託は、すごく悪く言うと、口と資料だけでなんとでもなってしまい、自社の資金など持ち出しがほぼないため、いつでも逃げられる、机上だけで終わらせられます。そんな性質上、地元の人たちからは信頼されにくい点があります。

②直営事業・製造業等

その地域に根ざして、自社で資金調達をして店舗や施設を直営、もしくは食品や商材の製造・販売など自社のリスクで行う事業。

最近、ぼくが注目、リスペクトするまちづくりプレイヤーは、製造業の方々多いなぁという印象です。

都農町にも来てくださったり往来のある

バターのいとこでお馴染みの「GOODNEWS」さん

クラフトサケの「稲とアガベ」さん

延岡メンマの「LOCAL BAMBOO」さん

共通するのは、自社でリスクをとって投資し、地域資源を活用した製造業を展開、そこで得た利益やチャンスをベースに、まちづくり拠点や、コンサルティングを行っている点です。

ぼくらイツノマは、上記の方々の足元にも及ばない実績ですが、細やかながら銀行から借入して、5,000㎡の耕作放棄地にあった築50年と20年の空き家2件とボロボロのトレーラーをリノベーションしてホステルを経営して3年近くにはなってます。

直営事業だけをやっているリスクは2つ思い浮かびます。

1つめのリスクは、そもそもマーケットが小さい分、バターのいとこや延岡メンマほどのヒット商品や魅力的施設を作らない限り、売上のグロスが増えないということ。当たり前ですがハードルは超高い!

2つめのリスクは、ぼくが移住してすぐに直面したコロナや自然災害などの影響をもろに受けやすいこと。

以上は当たり前のことですが、それだけに、可能な限り、最適なバランスを追求しようと、日々経営では試行錯誤していました。

③最適ミックス


ぼくがやりたかった事業スタンスは両方ともミックス。

自分がやってきた限りでは、売上比で、委託が7割、直営が3割ぐらいが安定性と新規制の両面でバランスはよかったです
(あくまで都農町の当社という小さな事業サイズでの前提)

2.対象地域拠点

もう一つの対象地域拠点の軸は、一つの地域に集中か、二つの地域か、他地域か、その地域に拠点(オフィス・営業所)をおくかおかないか。

①一地域拠点

拠点(本社・営業所)を都市部において地方のある地域に通うのか、本社も地方のある地域におくのかでわかれます。

拠点を地方におく場合、一地域だけにおくのか、二地域+αにおくのか。

ここ一年で、ぼくらイツノマに起きた環境変化の実例を紹介します。

もとは一地域(都農町)だけでやっていこうと思っていたのですが、昨年9月の町長選の影響によって、ぼくらの売上は8割近くが失われました。

小さな町のまちづくりは、政策というより政治(家)によって、大きな影響を受けるものだと身をもって体感しました。

ここで会社存続のためには方針変更を余儀なくされます。

考えられる選択肢は2つ

・1つめは本社を都農町のまま、他地域でコンサル・業務委託を増やす
・2つめは、都農町と同じスタンスでもう一つ別の町でやる

これは自分たちの希望や理想もさることながら、クライアントや受け入れてくれる地域あっての話なのでセレンディピティー!

結果、ぼくらは2つめを選択することになりました。

もちろん1つめの営業も一生懸命やりました。
北海道から東北、東京、関西、中部といろんな会社、行政ともお話をしましたが、単純にいうとぼくらの能力不足と強み、もっというと関心が高くないことに気づき。

やればやるほど、ぼくらがやりたいのは、どこか一つの地域に根ざして日常的な挑戦や運営を通して、よりよくしたいことだ!と再認識。

②二地域拠点

そんな中で、人のご縁に恵まれて、都農町と同じ児湯郡の高鍋町とつながりができ、「高鍋オフィス」を開設

まずは高鍋駅改修後の運営提案や、蚊口海浜公園の改善企画をするところから、仕事をはじめています。

今後は、都農町、高鍋町を両本社(というほど大きくはありませんが)として、2つの町を行き来しながら、やっていきます。

車で30分かからない距離なので、大きな市の仕事をしている人に比べたら全然小回りはきくかもしれませんね。

次の目標は、高鍋町で直営事業を創り出すことです。

③多地域

まちづくり会社として、一番多いのは、本社・拠点を都市部におき、全国各地域のまちづくり支援を行うパターンではないでしょうか。

まちづくりには直結しませんが、先日、教育系スタートアップのLX DESIGNさんのイベント「複業先生フェスティバル」にお招き頂き、代表の金谷智さんとトークセッションを実施。

その際、参加者の方から
「都農町でやってることは、すぐに全国で横展開できそうなのになぜしないんですか?」
と質問をいただきました。

なるほど、たしかに、LX DESIGNさんのように、プラットフォームをつくり全国の民間人材と学校をつなげていくビジネスモデルがつくれれば可能かも。。ただ、ぼくにその能力が著しく欠けてるな、って実感しました 笑。

ぼくらができること、強みは一つ、二つの地域を縦に掘っていくこと。でもそれだけでは、地方、日本全体にあたえる影響やインパクトは極小。

ぼくらみたいな縦展開機能と、LX DESIGNさんのような横展開機能・プラットフォーマーが、うまく重なり合ってシナジーを出していくことが理想だぁと思って都農町に帰ってきました。

LX DESIGN 代表の金谷智さんと

目指すことが一致していることが最重要という前提で。



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