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「彼岸より聞こえくる」第15話
■エピローグ
ここは福島県の小さな農村。
海の見える少し小高い山の途中にその家はあった。
玄関先にあるブザーを押すと、頬かむりをした70代の小柄な女性があらわれた。
「あの、私、ミホさんの友達で、如月卑弥呼と申します!
あ、みんなもお母さんに自己紹介して!」
「同じく、山田誠志朗。」
「同じく、下平拓斗でござる。」
「岡本雪呼です!」
「あ…山田丞です。」
「あの、ミホちゃんから預か
「彼岸より聞こえくる」第14話
一瞬の沈黙の後、俺はポケットから数珠を出し、九字を切り結界を張った。
そして手で印契(いんげい)を結び、呪文を唱えた。
「オン・アビラウンケンソワカ ノウマク サンマンダ…」
ミホが、おもむろに目を見開きこちらを向いた。
その姿にはもう、ミホの面影はなく、目は赤く光り、オオカミに近い獣のような姿で、俺にとびかかってきた。
俺が倒れた姿を見て、卑弥呼が悲鳴を上げた。
その声を聞き、ミホが
「彼岸より聞こえくる」第13話
「弟よ、姫達は無事なのだろうな?」
スタジオの外のビルの間に二人で身を隠しながら兄貴が5分おきに聞いてくる。卑弥呼がスタジオに入ってから20分が過ぎていた。
「だーかーら、なんかあったらすぐに言うって言ってるだろ!」
今回は、卑弥呼の携帯を録音機として使っているので、通話をつないだままというのができないので、状況のわからない兄貴がこんな状態になっている。
「いや、ただこうしているのも、不安なも
「彼岸より聞こえくる」第12話
都築がパイプ椅子に座ったまま、上半身だけ私に近づけてきた。顔を背けたいが、私はこの男に騙されているふりをしなくてはいけない。私はできるだけ平静を装って都築を見た。
「どうだ、俺に一流にしてもらいたくは無いか?」
都築は私の顔を覗き込むようにして私をうかがっている。
「一流に…なりたい…です。」
私は声をふり絞った。
ミホが怒りに震えているのがわかった。
都築は自分の鞄から一枚の紙と
「彼岸より聞こえくる」第11話
浄化の章
今回はスタジオ集合が十四時だった。
一昨日より1時間早い。
都築瞬に対する私達の作戦はこうだ。
あの男は、私とミホが繋がっていることを知らない。
全くの推測だが、あの男はこのオーディション番組から、今でも自分の餌食を選んでいる可能性がある。
手口を変えていなければ、恐らくスカウトされるはずだ。
なぜなら、都築のさじ加減一つで合否が決定する番組でお気に入りのMaryaを
「彼岸より聞こえくる」第10話
撮影が終わった。
私を乗っ取った白ちゃんは、想像以上に演技力も表現力も素晴らしかった。
私は、緊張したけど、白ちゃんが応援してくれたから、何とか歌いきれた。
対戦相手のMaryaは、こちらを見下すような態度で、友達にはなりたくないタイプだった。
私の体を乗っ取った幽霊が彼女じゃなくて、本当に良かったと思った。
翌日の夜、山田丞から連絡があり、私達がMaryaに勝利したことを知った。
い
「彼岸より聞こえくる」第9話
「たすく~」
教室の後ろの入り口で兄貴が手招きしている。
兄貴が2階の3年のエリアから4階の俺の教室に来るなんて珍しい。
「どうした?」
そう言いながら俺は廊下に出た。
兄貴は何かとても興奮した様子でこう言った。
「手っ取り早くあのプロデューサーに会うのに一番いいと思って、さっきあのオーディションに姫様の代わりに申し込んでみたのだ!
そしたら今回の挑戦者が体調不良とかで、急遽、姫様に出
「彼岸より聞こえくる」第8話
■腐敗の章
ここはオカルト研究会の部室。
俺と、如月卑弥呼&白タンクトップ改めシロは、放課後まで待てず、あの会話の後すぐにここに来てしまった。
俺の招集メッセージで、昼の時間、兄貴たちもこっそりと部室に集まっていた。
「いいな~、いいな~、弟さんには霊さんが見えてるんですよね~!
私にも見えたらいいのに~。」
雪ちゃんがよだれをたらしそうな顔で俺を見た…。
「シッ!ユキチャン、声が大
「彼岸より聞こえくる」第7話
午前7時20分。
俺は如月卑弥呼の自宅の前にいた。
他3名も一緒に来たがったが、どう考えても目立ちすぎなので、ご遠慮いただいた。その代わり、接触できた際には必ず放課後のオカ研の部室に連れていく事は約束させられた。
「行ってきます!」
制服を着た卑弥呼が玄関から出て来た。学校へ行くふりをして、学校には行かないっていう、使い古された作戦だろう。サブバッグの中には私服が入っていると思われる。
「彼岸より聞こえくる」第6話
(ねぇ、今日こそは学校行こうよ。)
「うるさい!あたしにはやらなきゃいけないことがあるんだよ!」
(でも…。)
「売られたいの…?」
(…。)
「まただ…!!
あんたのその、何でもあきらめてる感じ、大っ嫌い!!
気持ち悪い!!
何なの!?
それ!!!!!?」
私の体を乗っ取った女が私に毒づいた。
あきらめてる…?
そうかもしれない。
でも、この女には言われたくない。
どんなに脅
「彼岸より聞こえくる」第5話
バイトから帰り、自室のドア開けたとき、
俺は暗がりの中に違和感を感じた。
(なにかがいる…?)
体が硬直し、心臓が早鐘を打った。
それは物理的なものの気配だった。
俺は、静かにリュックを背中から胸側に移動させ、
体の中心を守る準備を整え、
そっと部屋の明かりをつけた。
!!
そこには、正座の兄貴がいた。
「なんだよ~、電気くらいつけろよ~。」
それには返事をせず兄貴は、
「明日、
「彼岸より聞こえくる」第4話
第4話
共鳴の章
■死んだ魚の眼
私は、あの廃ホテルでこの女にとり憑つかれた。
とり憑かれたというか、実際には
目が合った瞬間に『体を乗っ取られた』という体験だ。
意識がはじけ飛ばされそうになったが、
そこは、かろうじてとどまれた。
だが、今、体の中にいるということはわかるが、
体を動かすことも、言葉を発することもできない…。
あの日、この女が、
私の体を乗っ取った時、
「彼岸より聞こえくる」第3話
第3話
オカルト研究会は
ただのオカルト研究集団ではありませぬぞ!
◼️キャラ変…じゃ、なさそう?
「確か、ここの突き当り…だったよな、
オカ研の部室は…。あ、ここか?」
校舎の北側の離れに、ぽつんとプレハブ小屋があり、
そこがオカルト研究会の部室になっていた。
もともとは、主事さんが掃除用具や学校での不要物を保管しているところだったらしいが、
兄貴たちが、オカルト研究会を作
「彼岸より聞こえくる」第2話
第2話
生きて生きる事と死んで生きることの違いが
俺にはわからなかった―――。
◼️霊感か?0感か?
俺の名前は山田丞(たすく)。
英明館高等学校の一年生だ。
神田の、ある神社の次男に生まれ、兄は0感なのに対して俺は、完全に霊感体質。
兄貴が陽なら俺は陰。
兄貴が光なら俺は影。
それを当たり前に育ってきた。
赤ん坊のころから見えざるものが見えるのが当たり前だったので、
生
「彼岸より聞こえくる」第1話
あらすじ
都内高校に通う如月卑弥呼が、夏休み最後の日に、オカルト研究会会長の山田の案内で心霊スポットに行き、霊に取りつかれおかしくなる。責任を感じたオカ研会長山田は強い霊能力を持つ弟、山田丞に助けを求める。
憑りついていた女は、天才プロデューサー都築に殺されたアイドル志望の女。卑弥呼はその復讐に加担することを決めた。
うまく都築に取り入り近づく卑弥呼、しかし、都築の下世話さにさらに被害者が増えると
【参加表明】#創作大賞2024年、ホラー小説部門に参加します。(リンクあり)
去年の夏のことです。
『小学生でも書ける!小説ワークショップ』
に、けいちゃんに誘われて、参加しました。
けいちゃんは、昔、まんが家を目指していた時代があり、
小学生向けに漫画教室を開いたりしていたので、
その系列の人から
表紙のイラストを頼まれたとかなんとか。
参加してみると、主催者の方は、
自由な自己表現のツールとして、
気軽に小説を書くことを
提供したいとおっしゃっていて、
子供