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「彼岸より聞こえくる」第3話

 第3話

オカルト研究会は
   ただのオカルト研究集団ではありませぬぞ!

◼️キャラ変…じゃ、なさそう?


「確か、ここの突き当り…だったよな、
オカ研の部室は…。あ、ここか?」

 校舎の北側の離れに、ぽつんとプレハブ小屋があり、
そこがオカルト研究会の部室になっていた。


もともとは、主事さんが掃除用具や学校での不要物を保管しているところだったらしいが、

兄貴たちが、オカルト研究会を作る時に、

「どうしてもここじゃないとダメなのです!!」

と、何度も何度も、先生方や主事さんに直談判し、
(無理矢理)権利をもぎ取ったと兄貴から聞いているこの場所は、確かに、なんか出そうな雰囲気はある。

建付けの悪いプレハブのドアをガタガタと言わせながら開けると、

兄貴と、如月卑弥呼と、ゆかいな仲間たち(二名)の四名が、
一斉にこちらを見た。


「おー、弟よ、よく来てくれた!」
 異常にうれしそうな兄貴と、

何故か憧れの目で見てくるゆかいな仲間たちNO.1とNO.2。

そして、いつもと変わらないように見える如月卑弥呼。

その立ち姿は、咲き誇る、一輪の白ユリを思わせる。



「姫!弟が来たからにはもう安心ですぞ!」

 それを聞いた如月卑弥呼は、

怪訝そうに眉間にしわを寄せながら
俺を上から下までなめるように眺め、それからこう言った。


「え~☆ひめ☆
もともとな~んにも心配なんてしてないんだけど~☆」

 俺はずっこけた。


いや、元のイメージからのブレがすごすぎる。

吉永小百合がフワちゃんになったくらいキャラがぶれてる。


「兄貴、疑ってごめん、確かにこれは俺も変だと思うわ…。」

黙ってうなづく兄貴とゆかいな仲間たち。

しばしの沈黙が流れた。


その沈黙を破るように、如月卑弥呼が大きな声を出した。

「ひめ☆帰る!」

 卑弥呼は突然立ち上がり、扉に向かった。
そして扉を開けようとするが、なかなか開かない。

卑弥呼がガタガタと扉と格闘しているとき、
 俺の頭の中に、かすかな声が聞こえた。

(…あなた……見えるの…?)

 俺は、改めて如月卑弥呼に焦点を合わせ、
そこから少し焦点をぼかした。

如月卑弥呼の体が半透明になる。

そしてそれと重なるように、茶髪の女が、
ガタガタとドアを開けようとしていた。

どっちの声だ?

女か?
卑弥呼か?

(もう…私の体じゃないみたいね。) 

如月卑弥呼が、その行動に似つかわしくないタイミングで、
少し寂しそうに笑ったように見えた。


 兄貴が卑弥呼の右腕をつかみ引き止めるも、簡単に振り払われ、
如月卑弥呼は肩をいからせて、大股に部室を出て行った。

兄貴は、しょんぼりとうなだれながら、部室のドアを閉めた。

こちらに戻ってきながら、兄貴は霊視の結果を聞いてきた。

「で、どうなんだね?
卑弥呼様に何が起こっているのだ?」

「俺には…体は如月卑弥呼だが、
中身は知らない女になってる風に見えた。」

「なんと!!それは…元に戻せるのか!?」

「いや、わからん…。

卑弥呼本人が、すでに自分の体ではないと感じているようだったから、その女を無理に卑弥呼の体から出せば、
脳死のような状態になる可能性はあると思う。」


 兄貴が膝から崩れ落ちた。

流れ落ちる涙を拭きもせず、ただ一点を見つめながら、
脱力した身体で、

「僕のせいだ…。」

と、一言だけつぶやいた。


 すると、それまで一言も言葉を発していなかった、
ゆかいな仲間NO.1が、勢いよく立ち上がった!

そして怒ったように、

「何を言っとるとですかセイさん!
今こそオカ研の本領発揮の時じゃあなかとですか!」

と、言った。

それにかぶせるようにNO.2も、

「そうですよ、セイさん!
またとないオカルトチャンスですよ!
私、調べます、廃ホテルに出る女幽霊について!」

と言った。

NO.1が、
「雪ちゃん!おいどんも一緒に調べるでごわす!」
NO.2が
「たっくんありがとう!」


NO.1の男がたっくんで、
NO.2の女子が雪ちゃんって言うのか。
なるほど。


「そうとなったら、聞き込み調査に現場百篇!
必ずや如月会長を元に戻して見せるとです!」

そうしてたっくんと雪ちゃんは、お互いの顔を見合わせてから、

「せーの…

オカルト研究会の名にかけて!!!!!」


最後の一言は、普段から練習してるのか!?ってくらい、ポーズもセリフも、綺麗にハモっていた。


それを聞いた兄貴はゆっくりと顔を上げ、涙をぬぐい、
右頬を上げて、にやりと笑った。

「僕も…泣いている場合じゃないですな。
やりましょう、四人で!

必ずや元の姫様に!」

ん?四人…?

満面の笑みで俺を見てくる三人。

あ、俺も数に入ってるのね…。


「あ、あぁ…、ははっ…
まぁ、なるべく…俺も協力するよ。」

雪ちゃんとやらが嬉しそうに、
「え~、じゃ、四人用のオカルトポーズも作らないとですね!!」

俺は、謎の不快感に襲われつつも、
如月卑弥呼の状態も気になっていた―――。



第4話が完成したらリンクを追加します。

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