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「彼岸より聞こえくる」第1話

あらすじ
都内高校に通う如月卑弥呼が、夏休み最後の日に、オカルト研究会会長の山田の案内で心霊スポットに行き、霊に取りつかれおかしくなる。責任を感じたオカ研会長山田は強い霊能力を持つ弟、山田丞に助けを求める。
憑りついていた女は、天才プロデューサー都築に殺されたアイドル志望の女。卑弥呼はその復讐に加担することを決めた。
うまく都築に取り入り近づく卑弥呼、しかし、都築の下世話さにさらに被害者が増えると感じた女の霊ミホが、怒りのあまり悪霊化して都築を殺そうとする。
このままでは卑弥呼までもが危ない。山田丞が浄化しようとするがミホの怒りが強く負けそうになった時、亡くなった卑弥呼の姉が力を貸してくれる。


第1話

――私が偽物であることは
    誰にも知られてはいけない。


◼️プロローグ

「みなさん!

まもなく、
とんでもない数のユーチューバーに
取り上げられてきた、

本日メインの
心霊スポットですぞ~!。」


 同じクラスの
オカルト研究会会長の山田が、
嬉しそうに大声を出した。


 私の名前は如月卑弥呼。
都内の高校に通う女子高生だ。

今日は、夏休み最終日。
そして、高校生活最後の夏休み。

クラスのみんなで
何か思い出に残ることをしたい!

という話が
グループLINEにあがったのは
今朝の話だが、

そこからどういうわけか
学年全員で心霊スポット巡りを
することになってしまったのだ…。


(パワースポットなら
何かいいことありそうだけど、
心霊スポットってどうなの…?)


とかなんとか考えてるうちに
三か所目の心霊スポット

『廃ラブホテル前』に

午後8時36分という微妙な時間に、
40人という大所帯で到着した。


 学校では目立たないグループ所属の
大人しい女子A子が、

ひどく怯えた顔で

「なんかここ、
今までのところより気持ち悪い…。
それに…なんか冷蔵庫の中みたいで…
すごく寒い…。」

と、右手で左手の指先を
握りしめながら言った。


待ってました!

と、言わんばかりに、

オカルト研究会会長の山田が
嬉々として説明を始めた。

「ここは、若い女性の幽霊の
目撃例が多いんですぞ!

この前見た、ホラー系YouTubeでも
首を絞められたアヒルの声みたいな
音が録音されていて、

背筋が凍るとはまさにあの事――。」


 山田の力説も、
聞いていたのは私だけのようで、

みんなはせっかく来たのだからと、
パンダの赤ちゃんでも
見るかのように、

白い鉄板の囲いの隙間から
一目でもビルを見ようと
頑張っていた。



 あまりにも有名になった
心霊スポットは不法侵入者が
後を絶たず、

併せて不法投棄なども
問題になってきたとのことで、
それを阻止するために数年前に
この囲いが出来たそうだ。

 しかし人間というものは
ダメと言われれば、
ますますやってみたくなるもので、

そんな鉄板なんて飴細工と一緒
とでも言わんばかりに
鉄板の一部が変な風に
へし曲げられていて、

その痛々しさも恐怖心に
拍車をかけてくるようだった。


 その時、誰かが、

「あれは…人?」

と、最上階である四階の左奥の窓を
指さした。


 誰の悲鳴が引き金だったか
わからない。

全員が来た道を逆走して行った。

私一人を残して…!





え…?
どうして…!?


 ………この器なら…もしかしたら…。



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