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生命保険は最初の堤防【42】脱サラ研修講師が語る 独立開業のリアル 綱を信じて、バンジージャンプ!

 生命保険は自営業者の最初の堤防

 金が入らなくなって困った自営業者が、手っ取り早く取る金策の手段は生命保険の解約です。これで戻る金額で足りなければ我が身を換金してという恐ろしいコースになりかねません。自営業の恐怖ワールドあるある話の中では、「腎臓を1個売る」というのもあります。とある自営業者の方に、借金の取り立ての際に「お前、まだ腎臓2個あるじゃないか」と言われたという話を聞いたことがあります。恐ろしい話です。

私の場合は、幸いそこまでの事態にまではいかなかったのですが、ともかく期日を決められてその日までに金を用意しないといけないというのは、サラリーマン時代には味わったことがなかった、重くぶ厚いプレッシャーでした。これまでの、散々苦労して手に入れたものを手放さないといけない恐怖がそこにはあります。

 手っ取り早い金策は親からの借金です。兄弟姉妹、おじさん、おばさんの親戚関係。知人に波及し出すともうかなり危ないパターンの予感。現に、私も同業者に借金を申し込まれたことがあります。しかもこの時期にです。「無理のない額でいいから、お願いします」と言われてもこちらも無理どころか逆にお願いしたい状況でしたから、速攻お断りでした。ただ、こういうことを申し込まれると、その人に対する信頼度は失墜します。あとのお付き合いの様相が変わってしまったのは致し方ないところでした。「返ってこなくても悔いはない」の覚悟がないと知人には貸せないものです。

 自分の身に何かあったらの備えが生命保険加入の目的ですが、その「何か」がこういう事態とはサラリーマン時代には夢にも思いませんでした。幸か不幸か、事業が軌道に乗ってきたころ、知り合いの保険代理店さんを通じて、加入したものがありました。解約の手続きはやっかいかと思いきや、代理店さんに電話しますと、「分かりました。お急ぎですよね。最短で手続きさせてもらいますわ」と簡単なものでした。

数日後に、200万円くらいですが、ちょっぴりまとまった金額が入金されました。経営者の生命保険は節税対策も兼ねていました。掛け金の何割かを損金算入することで節税できるのです。60歳時点まで何もなければ、積立の解約金を受け取る。私が入っていた保険では、700万円ぐらいの解約返戻金額となっていました。代理店さんが「カドワキさん、60歳で退職金代わりに受け取りはったらええですわ」と言われていて、私も楽しみにしていたのです。無いものねだりですが、退職金でまとまった金額を受け取れないなぁというのが、サラリーマンをやめた私が残念に思っていたことの一つではあったのです。その願いは、これで、はかなくも砕け散りました。さて、現実はそんな感傷に浸っている場合ではありません。この金額でも、2カ月、3カ月もつかどうか。子どもたちの学費も待ってはくれません。

 「足らない!」絶体絶命の実感が刻一刻と私に迫ってきていました。
(明日へつづく)

自分が培って来たものを勇気を出して発信していこうと思っています。お読みいただいた方々の今後に少しでもお役に立てば嬉しく思います。よろしければサポートをお願い致します。続けていくための糧にさせていただきます。