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CFOはIPOファイナンスで何を考えればいいか

はじめに

最近はIPO時の各社の検討内容等も発信され、充実されていると思います。
ただ、私自身IPOファイナンスのそもそもの検討論点の全体像がつかめていなかったので、勉強しながら整理しました。

「全体像」というタイトルなので、さっそく一枚図で整理してみました。
以下は「発行体」「マーケット」「既存/新規株主」という視点からIPOファイナンス時の論点となる項目を整理したものになります。

ただ上記だと話を展開しずらいので、IPOファイナンスの目的から、検討ポイントを整理したのが以下の図です。
大事なのは、IPO時の資金調達のみ考えれば良いわけではなく、上場後の継続成長を見据えてIPO時のファイナンスを検討しなくてはいけない点です。

以下で各目的ごとのポイントを記載していきます。

1_成長資金

IPOは「Initial(最初の)Public(公開の)Offering(売り物)」ですので、オファリング(資金調達)をする必要があります。

通常の資金調達と同様、まずは成長に向けた必要資金額の算出が必要です。
なお、必要資金の算出方法等の詳細は以下をご覧ください。
(基本的には中計を作って算出するかと思います。)

赤字スタートアップは広告宣伝費や人件費等のPLでの先行赤字分を資金使途にすることも多い思いますが、黒字企業で設備投資等も不要な業種だと実は将来のM&Aを資金使途にしたいと考える企業も多いと思います。

ただ、M&Aを資金使途とする場合、①実行しうるか(過去M&Aの実績があるか等)、②1年以内に実行される具体的計画はあるか?、③できなかった場合の代替使途はあるかの検討が求められます。
そのためM&A実績がほぼないベンチャーがIPO時に資金使途をM&A用として調達することは難しいのが現状です。(色々検討余地はあるそうですが)

2a_オファリングサイズ/レシオ

オファリングサイズ/レシオが持つ意味

・オファリングサイズ=公募金額+売出金額
・オファリングレシオ=(公募株式数+売出株式数)÷発行済株式数
であり、これらが意味するのは、市場にどれだけの株式を放出するのか?という点で、オファリングに関心を寄せるのが証券会社投資家になります。

オファリングサイズに一定の料率を書けた分が証券会社の手数料になります。そのため、オファリングサイズが大きい方が証券会社としては頑張るインセンティブになります。(オファリングサイズが小さいと証券会社からすると儲からない案件という位置付けに、、)

もう一つは投資家で、市場に多くの株式が放出されると流動性が上がるため、特に機関投資家が参加しやすくなります。(流動性の担保が上場後のセカンドファイナンスに繋がります。)

余談ですが、オファリングレシオが低いと市場の流通量が低く、供給<需要となりやすいので、初値が高騰しやすくなります。(IPOで儲ける個人投資家はオファリングレシオが低い方が嬉しいという「?」な状況になってます。)

なお、オファリングについては参考になる記事をご紹介しておきます。

株価

IPO時のValuationについては以下にで記事を書いておりますので、本記事では詳細は割愛します。

公募株数

公募→発行体に直接お金が入ります。
必要資金確保分の規模はマストで、あとは成長資金の追加調達と株式の希薄化とのトレードオフで検討します。
上場したからといって直ぐにまたPOできるわけではないので、IPOで多めに調達しておくという方針もありますし、上場後もしっかり時価総額を上げてセカンドファイナンスに賭けるという方針もあるかと思います。

特に最近はIPO時の資金調達を絞り、時価総額を上げてセカンドファイナンスを行う企業も増えてきている認識です。

売出株数

売出は大きく、経営陣の売出しとVC等の売出の二つの観点があります。

経営陣の売出でいうと以下が検討ポイントです。
①最終的な経営メンバーでの持分比率
→ 上場後の経営をどれだけの安定株主で実施したいかによります。
経営陣で50%超持っていれば、普通決議は経営陣で通せますし、2/3超を持っていれば特別決議において拒否権を発動できます。(※ここらへんは会社法のお勉強の世界です)

②社長の持ち分
→ 社長の持ち分で論点になるのは一人で50%超持つか否かかと思います。
50%超で大会社の場合は留保金課税の対象になりますし、またPublicCompanyになるのに、一人で50%超を持つのか?という見方もあります。
かならず50%以下にする必要はありませんが、少しの売出で50%を下回るならIPO時に売出して50%以下にするもの一案かと思います。

VC等の観点で言うとオーバーハング問題です。
オーバーハングとは、(VCが持つ)株式の大量売却が予想され、市場参加者が買い控えをし、株価が上昇しづらくなる現象をいいます。

VC等は、未上場企業へのリスクマネーの提供という役割が基本(クロスオーバー投資家等は別)ですので、公開企業になったあとは、個人投資家や機関投資家へバトンタッチすることになります。

発行体側からするとIPO時に、VCに売出をしてもらうことで、流動性を供給しながら、株主のバトンタッチが図れるので理想になります。

一方VC側からするとIPOディスカウント等により、「公開価格<市場価格」というイメージがあるので、自身のキャピタルゲインを最大するためには市場価格で売りたく、売出をせず保有することになります。
(VC等もLPに対して収益最大化の義務を負っていますので)

なのでVCに売出をしてもらうには、IPOのオファリングでしっかり規模と流動性を作り、売出時においてセカンダリーとの歪みを最小限にし、かつVCが求めるリターンを提供することが発行体には求められると考えます。

2b_株主構成

今後の経営にあたり誰に株主になってもらいたいかを考え(株主の性質)、アプローチ方法を検討します。

株主に求める性質

株主構成のポイントは安定性と流動性のバランスかと思います。

経営者は、自社の戦略/成長ポテンシャルを理解し、長期ストーリーを前提に投資してくれるロングオンリーの投資家に入ってもらいたいものと思います。
ただ、機関投資家、特にグローバルの機関投資家に投資してもらうには相応の時価総額(300~500億円以上)と、流動性が必要になります。

その流動性を担保しているのが、経営者が嫌煙しがちな個人投資家やヘッジファンドになります。
なので、個人投資家やヘッジファンドがいないと流動性が作れず、機関投資家も入ってこないという循環になります。
また、グロース市場は個人投資家のマーケットですので、個人投資家への訴求も真剣に考えたいと私は思います。

株主へのアプローチ方法

時価総額に応じた株主へのアプローチステップの全体像は、
以下、GrowthCapitalさんのHPの「1. IR支援・調達パッケージ「上場ベンチャーの各成長フェーズをカバーするIR支援」」の図が非常に参考になると思います。


IPO時は、時価総額とオファリングサイズに鑑み、どの層にメインにアタックするかを考えます。
オファリング形態(アプローチ方法)としては以下3つがあり、海外のどの投資家にアプローチできるかが決めれます。
【オファリング形態】
①国内:国内投資家
②旧臨報式:国内投資家+米国除く海外投資家
③グローバルオファリング:国内投資家+海外投資家

最近話題になっている親引けを利用した、クロスオーバー投資家にコーナーストーン投資をしてもらうか、PkshaのようにIPO時にトヨタに入ってもらうということもできます。

コーナーストーン投資で参考になった記事です。

自社の株主に対する考えとしては、セーフィーさんのもとても勉強になります。

シ団形成は大きい論点はないかもしれませんが、より広い投資家層にあたるために、証券会社数を増やしたり、個人に強いSBI証券はいれたりするようです。(シ団を増やすメリットがあるか否かは人によって違うようです)

またValuationのガバナンスを利かせるために、共同主幹事にするか?等も検討ポイントのようです。

日々勉強、以上。

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