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必要資金、運転資本、運転資金の違いと調達方法

資金ショート目前で、運転資本を計算する愚か者

以前事業再生のプロジェクトで、資金ショート間近の会社がありました。
そこで、今後スポンサーからの出資を検討中で、いくら出資してもらう必要があるか?が論点でした。

そこでメンバーに、「必要資金」の計算依頼した際、単純な「運転資本(WC)」の計算結果を持って来られて驚愕したことがあります(笑)

再生に限らずベンチャー等において資金調達を検討する際、いくら資金が必要か(「必要資金」)?DCFでのバリュエーションの時に「運転資本」、「必要最低現預金」はいくらか?と似たような言葉が飛び交いますので、本日はこちらについてまとめてみたいと思います

用語の整理~必要資金とは何ぞや?~

それぞれの概念を下記図でまとめてみました。
詳細はそれぞれ説明します。

必要資金

①必要資金
意義:
その名の通り今後企業に必要な資金です。何のために必要かという観点から、算定方法が変わります。
使用用途:
使用用途は例えば、以下のように様々なケースがあります。
・新規事業・ベンチャーの成長資金調達
・再生企業のキャッシュショート回避のための資金調達
・通常の事業活動における銀行借入金の調達(運転資本・設備投資)
・今後の事業上のリスクを見越した手許資金増強のための調達
・事業再生時のDIP資金
・借換資金の調達
・etc
計算方法:
当該前提における財務3表モデルを作成し、計画期間中の必要最低現預金を下回る最大マイナス額が必要資金になります。
単純にいうと計画期間中の現預金の最大マイナス残高の金額です。これをエクイティ・デットでどう調達するかを検討します。

②運転資本(WC)
意義:
企業が事業活動を実施していくために一時的に必要になる資金です。もう少し丁寧にいうと、資金の支払と回収までの期間差による資金ニーズになります。
※ちなみにアマゾンは運転資本がマイナスで、その資金を研究開発・投資等に当て成長しているのは有名な話です。
使用用途:
・DCFにおける運転資本増減
・事業再生における要返済債務の算出(一時的な資金ニーズのため、運転資本部分は要返済債務とならない)
計算方法:
運転資本(資産・負債)を特定して、その資産と負債の差額をとって算出します。資産と負債は回転日数等で算出します。
こちらは既に解説が豊富ですので、以下とかを参考にしていただければ。



③運転資金(ここでは必要最低現預金と定義します。)

こちらが一番やっかいで、各書籍、HP等それぞれで定義がまばらです。
実務でこの言葉が出てきた場合は、注意が必要で、何を意味しているかを確認した方がいいと思います。(必要資金、運転資本、必要最低現預金それぞれをさしている可能性があります)
本noteでは定義付けは目的としていないので、一旦「必要最低現預金」として以下解説したいと思います。

意義:事業運営上、手許で持っていなければいけないお金で、運転資本の一部を構成するものです。
イメージとして、日次・月次の支払が余裕をもって行えるように備えておく資金や、小売りのチェーン等とかはその店舗ごとに、お釣り対応とか含めて一定の現金を保持する必要がある部分であったりします。

使用用途:
・企業価値算定に必要な余剰現預金の算定時
※余剰現預金=「BS現金預金残高-必要最低現預金」となります。

また、企業価値は①事業価値+②非事業用資産の合計になり、
 ・必要最低現預金は運転資本として事業価値を構成
 ・余剰現預金は非事業用資産を構成

つまりDCF法評価した事業価値は必要最低現預金を含んだものになり、非事業用資産として加算するのは、必要最低現預金を控除した余剰現預金部分になります。

計算方法:対象会社ヒアリング、月商の数ヶ月分、年間/月間のなかで、資金の最大減少額、(小売とかの場合)現場店舗のレジの現金等様々であり、一般解はありません。
たまにヒアリングのみで終わらせている財務DDレポートをみますが、最低減月次出の運転資・資金繰り分析は必須かと思います。

必要資金の調達方法

上記の言葉の使い方を理解した上で大切さなのが、その資金をどうやって調達するかということです。
こちらも大まかなイメージを図にまとめました。

以下は簡便法的にデットかエクイティかというと軸で記載しておりますが、事業リスク、今後の戦略、適切なD/Eレシオ(企業価値に与える影響)等も視野に入れながら総合的に考えて行く必要があり、これがいわゆる財務戦略になります。

資金調達方法


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