コダーマ
オリジナル小説「硝子の棺と赤い夢」をまとめました。 森の奥の小さな村、吟遊詩人の黒マント、硝子の柩、吸血鬼…。 ダークなテイストのおとぎ話風ファンタジー小説です。完結済。
キンキ街に住む「ならちゃん」は、ちょっと面倒くさい女の子。 お供のシカさんと、毎日ほのぼの暮らしています。 近畿地方擬人化四コマです。
オリジナル小説「鋼鉄乙女のモン・サン=ミシェル戦闘記」をまとめました。 1940年。第二次世界大戦下のヨーロッパ・ノルマンディーを舞台にした歴史アクションファンタジーです。
本日お話するのは「王様ベッド」「姫ベッド」──さまざまな呼び名をもつアレのお話です。 そう、天蓋付きベッド。 アレに憧れたことってありませんか。 私は、だいぶこじらせてしまいました。 その顛末をここにご紹介いたします。 思えば、幼いころに読んだ絵本の王様は、みんな屋根がついたベッドで眠っていました。 中二(病)のころ、身を持ち崩すくらいやりこんだゲームでも、ノーブル(貴族)は屋根付きのベッドで眠っていました。 最近読んで泣き崩れた悲劇の主人公のマンガ
※ 森では昨夜の不気味さは夢のように、静かなせせらぎや小動物の囁きが愛らしく奏でられていた。 そこを確固たる足取りでゆく白い影はシェイラである。 昂然と顔を上げて、小さな胸をときめかせて。 歩調に迷いは見られない。 歩みを進めるにつれて、彼の元へ近付いているのだと分かる。 木々の形が少しずつ捩じ曲がったものへと変わってゆき下草の丈が伸びてきた頃、突然森が開けた。 幹の茶褐色も、葉の緑も失せた灰色の空間。 その中央にやはり灰色の塊が蹲っ
Ⅱ 真実の向こうに、夢 しかし、そうはならなかった。 ひどく重苦しい頭を擦りながら起き上がってみると、彼の存在は相変わらず彼女の思考の大部分を占めていたし、昨夜味わった恐怖も身体に染み付いたままだった。 窓から差し込む太陽は悪夢のように眩しく、周囲から届く笑い声や怒鳴り声は壊れそうに頭に響いた。 「いけない……」 かなり寝過ごしてしまったようだ。 空気は既に日常のものへと戻っており、家族たちも各々の仕事を行っているようだ。 村人たちもまた然り。 外
「私も……」 光照らされるように。 シェイラの顔は明るく輝いていた。 「私もメネスと同じように……」 その言葉に男は漸く自身の調子を取り戻したのか、いつものように優雅に微笑すると片手を上げた。 まるで一夜限りの恋人に愛を注ぐかのような傲慢な、それでいて優しげな目付き。 二人の手が触れ合わんとする正にその瞬間──そして今にもシェイラも親友と同じ運命に見舞われんとする直前──肉の軋む音が二人の甘い静寂を破る。 信じられない光景。 「メネ……」
※ 森の鼓動は彼にとって常に優しい。 母親の胎内の温もりを思わせる夜の森。 何を考えているのか、時折溜め息をつきながら男は歩を進める。 枯れ葉が靴の踵に引っかかる故か、足取りは緩やかであるが、迷いなくある一点を目指していることが分かった。 黒い外套を風に靡かせながら、絹で織られた袋に竪琴をしまいこみ背に負ったその姿。 楽器を扱う時は外していた手袋を取り出すと、長い爪と白い指を覆い隠す。 森の向こうでは静かなざわめきが、さざ波のように広が
Ⅰ 森に揺れる不穏な赤 笛と囃子、喚声と踊り。 村は珍しく色彩に溢れている。 みすぼらしい建物には原色の幕が張られ、広場には様々な果実が盛られた盆が並んでいた。 村の人間は一人残らずそこに集まっている。 収穫への感謝という名目ながら、飲み食いをして騒ぐだけの一日であるのは確かであった。だが、貧しい農村の暮らしの中でその日は年に一度、唯一の楽しみの時でもあるのだ。 シェイラは広場の隅に布を敷いて座り、年齢の近い少女たちと共に果実で作った飲み物と焼き菓子を楽し
序 風がそよぐ。 枯葉の馨しい香りが辺り一面に立ち込める。 今にも泣き出しそうな空では冬の気配を感じたのであろうか、小さく白く燃える太陽が静かに雲間に消えゆこうとしていた。 鬱々と佇む森は木の葉を撒き散らし、己の奥深くへの密やかな侵入者を阻もうとしているかのようだ。 小動物さえ気配を忍ばせるこの森に、微かな足音が響く。 ひとり、ふたりか──。 降り頻る木の葉は音を吸収してはくれない。 しかし小さな足音たちは気にするでもなく、どんどん森の内部へと侵
【近畿地方擬人化ほのぼの4コマ漫画です】 キンキ町に住むならちゃんは、ちょっと面倒くさい女の子。 お供のシカさんといっしょに、のんびり暮らしているよ。 ご近所は近畿地方のみなさんだよ! (『おっとろしい』…ならのことばで『面倒臭い』という意味)
「何が未来の武器、だ。ただの閃光弾じゃないか。ガリル・ザウァーのやつ」 そこでアミは大きく顔を歪めた。 ガリル・ザウァーがこんな事態を見越して、これをくれたわけではないと分かっている。でも──。 複雑な思いがあるのだろう。 ラドムは少女の涙を見ないように遠くのモン・サン=ミシェルに視線を投げた。 それはマグネシウムとアルミ片を利用した単純な造りの閃光弾であった。 転がった拍子に発動したのだ。 殺傷能力はないものの、強烈な光は瓦礫の僅かな隙間からもモン
「全て失った、か……」 確かラドムが同じ台詞を言ってたっけ。 アミは必死に彼を慰めたものだ。 小生意気な小僧は、アミは失うということの意味を分かっていないなんて批判したものだ。 しかし、今になって思う。 「本当だ。わたしは何も分かってなかった」 大切な人を失うということは、すべて……本当にすべてを失くすということだ。 空虚と絶望──それらはどう処理して良いか分からない感情だ。 右肩から血が流れていないことを今一度確認して、アミは建物の外へ出た。
寝台に横たわった男は一応、死の淵からの生還は果たしたということらしい。 運び込んだ当初は心臓が止まり、絶望的な状況だったらしいが、医師(マディー)の措置が功を奏して何とか一命を取り留めたのだ。 清潔な白のシーツと枕。それから白のパジャマ姿は、これまで彼にまとわりついていた色彩のイメージとはかけ離れたものであり、まるで別人のように映った。 唯一、今までの印象を留めている黒髪を見やり、彼女は脇の椅子に腰掛ける。 やっぱり起こしては悪いだろうか。 でも聞きたいこ
終章 白い闇の向こうに 一九四一年十二月八日。アメリカ合衆国による対独伊宣戦。 一九四二年十一月。スターリングラードのドイツ軍降伏。ドイツ軍の敗退が始まる。 一九四四年六月六日。連合国軍、ノルマンディーに上陸成功。 同八月二十日。パリ開放。 一九四五年三月。米英軍によるベルリン空襲。米軍、ライン渡河。 同五月。ベルリン陥落。 同月七日。ドイツ降伏。 ヨーロッパ戦線はここに終結する。 だが、それはまだ先の話。 一九四〇年十一月、ノルマンディー。 この
爆風がようやく収まったのは、数分が経ってからのことだった。 ビクリと身動ぎするたびに、少女の身体から土くれが落ちる。 動かないシュタイヤーを庇う体勢を崩さないまま顔をあげて、アミは瞳を見開いた。 まるで激しい空爆を受けたかのように、近くの家屋が全壊していた。 瓦礫と土と灰が、小山のように目の前に積み上がっていたのだ。 「ラ……ドム……?」 声は激しく掠れていた。 少年の姿はどこにも見えない。 助け出そうにも、この残骸のどこに埋まっているか見当もつか
ショットガンを派手にぶっ放し、ラドムは少女の元へと駆け寄ってきた。 「アミ、無事でよかった。何が起こったの……?」 横たわったシュタイヤーを見つけて眉を顰める。 少女を守るように彼女の前に立ちはだかり、ラドムは大振りの銃を構えた。 銃口は直ぐ近くのガリル・ザウァー、それから少し向こうでMG42を構えるザクソニア──両者の間を迷うように揺れている。 「アミ、聞いて。武器庫を爆破したのは……」 「そ、それは……そいつだ! ラドム、そいつを狙え!」
短髪が首筋をくすぐる感触に、アミは我に返った。 ──ガリル・ザウァーの為なら腕がどうなろうと構わない。ずっとそう思っていたじゃないか。うん、大丈夫……。わたしは大丈夫だ。 己に言い聞かせる。 その行為が、自分でも少々情けなく感じられた。 「アーミー、これ以上は聞くな」 いつのまにか側に来ていたシュタイヤーが、黒手袋で彼女の耳を塞いだ。 アミは首を振ってそれを払い除ける。 何を聞いてもわたしは大丈夫だ。 「邪魔されてたまりますか!」 ガリル・