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偉大なリーダーは、意志の強さと謙虚さを持ち合わせている

ここのところ経営者の心理的な成長について考えています。経営者を取り巻く環境は常に変わります。その中で、失敗や葛藤もあるでしょう。それを糧にいかにして成長するのか、そんなことを考えています。

そんな問題意識で調べ物をしていたところ、興味深い論文に出会いました。

Entrepreneurship Resilience: Can Psychological Traits of Entrepreneurial Intention Support Overcoming Entrepreneurial Failure?

何やら難しそうですみません。簡単にいうと「自分ならできる」と考えたり、自責で物事を考えたりする起業家は、失敗からの回復力に優れ、同じ轍を踏まないよう学ぶ力が高いといえそうだ、という論文です。

以下は、分析の一部です。

左上のSelf-efficacyが自己効力感、つまり「自分ならできる」という心の状態です。左下のLocus of Controlが自責で考える傾向のことです。この2つの特性が高いほど、失敗を受けとめて(Recovery Capabilities)、そこから学び(Perceived Learning from Failure)、失敗を糧に進んでいく(Continuance of Entrepreneurship Engagement / New Opportunity Recognition)ことを定量的に検証しています。

そういえば、ビジョナリーカンパニー2にも同じような話が出てきたなと思い読み返しました。第五水準のリーダーシップというものです。

第五水準のリーダーシップの二面性:ビジョナリーカンパニー2より

いっときの成功にとどまらず、偉大でありつづける企業のリーダーは意志の強さと謙虚さの二面性があるとしています。この二面性により、個人の力だけでなく、組織の力として継続的に成長することが可能になるという話です。

先ほどの論文との関連でいうと、意志の強さを自己効力感に近いもの、謙虚さを自責に近いものと捉えました。ただ、さきほどの論文は、失敗からいかに学ぶかということでしたが、こちらは成功しているときの謙虚さについて述べています。

失敗した時は「鏡=自分」を見ます。つまり自責です。成功した時は、「窓の外=他の人たちや外部要因、幸運」を見るとしています。他責とはちょっとニュアンスが異なるのですが、成功は自分の努力によるものではないと考えています。これを謙虚さと呼んでいます。

この話は「失敗を人のせいにして、成功を自分のお陰だと考える」ありがちな心の傾向を戒めているように思います。でも、それだけなのでしょうか。もしかしたら、この心の動きは「成功を自分の手で成し遂げたい」という意志の強さの裏返しであり、自己効力感につながるところなのかもしれません。ただ、それだけでは、第四水準の有能な経営者にとどまってしまうということなのでしょう。

第五水準までの段階:ビジョナリーカンパニー2より

とはいえ、第四水準で十分じゃないかと思いますよね。しかし、ビジョナリーカンパニー2の冒頭で著者のコリンズは「GoodはGreatの敵である」と言っています。失敗から学ぶだけでなく、成功していても謙虚に学ぶ努力が偉大さを生むのです。

稲盛和夫さんも重大な意志決定をする際に「動機善なりや、私心なかりしか」と自問自答したといいます。実現したいと強く願う一方で、エゴになっていないかどうか、自分の心と向き合うわけです。そうした積み重ねによって、自らの心が鍛えられ、私心でない思いで進む結果、リーダーがいなくなったあとも、継続的に成長する組織となるのでしょう。


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