見出し画像

あなたの会社に「誰かを喜ばせよう」という原動力はあるか

お客さまの会社のこれからについて一緒に考えています。創業からそろそろ40年。去年から3代目の社長になりました。

事業は順調に伸びてきています。仕組みも整っていて安定成長期ともいえるフェーズにあります。ただ、やはり組織は生き物です。大きくなるにつれ、少しずつ歪みが現れています。

そこで、原点に立ち返ることにしました。創業者が残した社内報などを読みながら振り返りを行っているところです。

成長によって生まれるジレンマ

外食業である同社の理念には「お客さまの喜ぶことを第一に考えることが、自分自身の喜びである」そんな意味合いのことが書かれています。しかし、経営陣は、会社として大切にしている考えが浸透しなくなったといいます。

ある種のジレンマです。
会社が大きくなり、事業も人も多様化するのは良いことです。一方、多様化すると遠心力が働きます。

この遠心力は目に見えません。目に見えるのは、仕事のミスやお客さまからのクレーム、サービス品質のばらつきなどです。

そこで業務の標準化や効率化を進めます。これ自体はもちろん悪くありません。型があるから愚直に従えば良い。最初はそれでよいのですが、次第にただの作業になります。

そして…
何のための作業なのか分からない。
やり方が合わなくなったと思うけど、言うに言えない。
割り切って決められたことをやろう。仕事は仕事…。

そんな空気が蔓延します。

これをそのままにしておくと、事業が安定期から衰退期へと移行します。

安定期から変革期に移行するために必要なこと

衰退期ではなく、変革期に移行していくにはどうしたら良いでしょうか。

取り組むべきことは大きく二つです。
ひとつは、目的、パーパスに立ち返ること。そもそも私たちは何者なのかを改めて言葉にして伝えていく必要があります。目に見えるサービス品質だけではなく、目に見えない心の品質を高めることが大切です。

もうひとつは、結節点を作ること。つまり、リーダーの育成です。各組織に会社の目的を理解し、心の品質を体現しているリーダーが必要になります。

実際、同社の歩みを振り返るとこの二つが求心力を生んでいました。

創業社長が示していた目的とその浸透のさせ方

創業者はカリスマ性がありました。夢を語って、みんなが前向きになっていました。その夢は、自分が見たいだけではなく、社員にも見て幸せになってほしいものとして語られていました。

だから、みんなに響きます。

また、外食業ということもあり、あいさつや掃除を徹底させました。
でもルールとして徹底したのではありません。迷ったら立ち返るものとして示しました。なぜなら、「お客さまの喜ぶことを第一に考えることが、自分自身の喜びである」からです。

目的を伝え、実践し、腹落ちしていく。
それが会社への愛着につながっていました。

理念を体現する存在にスポットライトを当てる

そして、この考えを伝えていたのは社長だけではありません。会社を立ち上げていく苦労をともにした現場のリーダーたちがいます。

まだ何も仕組みはできていない段階です。様々に試行錯誤を重ね、成功と失敗を繰り返して形にしていきました。

大変な日々です。でも、つらくない。
お客さまを喜ばせようとして、みんなで創意工夫すること。そのことが仕事の喜びになっていました。

その姿は、マニュアルやルールよりも雄弁です。

同社に限らず「ロールモデルがいない」という声を聞きます。
「ロールモデルがいないのは、前例がないことに取り組むから」と言われることもあります。ただ、これは表層的な解釈です。

変化の速い時代だからこそ「お客さまを喜ばせようとして、みんなで創意工夫する」ことが求められるはずです。

誰しもがこの想いを持っています。それをすぐに行動に移すことができる人もいれば、じっくりと進める人もいる。違いはそれだけです。

だから、まずは動いた人にスポットライトを当ててリーダーになってもらえばよいのです。

分からなくなったら、お客さま第一かどうかを見る

いろんな人が集まる会社は、気がつくと内向きになります。
外へ向かうと傷つくこともあるし、適応していくのは大変だからです。私たちにはそういう弱いところがあります。

企業の目的は「顧客の創造」だとピーター・ドラッカーは言います。
もっと平たく言えば、誰かを喜ばせようとして商売をはじめるのです。

もちろん、お金を儲けたいと思ってはじめることもあるでしょう。ただ、長く続いている会社は「誰かを喜ばせよう」とすることで原動力を得ています。

恐ろしいのは知らず知らずに衰退に向かうことです。
何かうまくいかない、どうも雰囲気がおかしい、そんな兆候が現れたときにどうするか。

目に見えている内向きの行動を管理しても変わりません。
「みんながお客さまの方を向いて、喜んでもらおうとしているかどうか」
この原点に立ち返り、その喜びを最大限に味わっていただくための働きかけが一番大切だと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?