ジャックは私です。#4
病院から帰ってきた間部達は部屋の前でタバコに火をつけた。
「ふー・・・・・あの病院相当匂うな・・・」
「あぁ。犯行に使われた凶器も手術室にあったメスと一致する。何なら劣化度も一致している。」
「だけど、決め手がないな。もっと確固たる証拠があれば捜査範囲をあの病院に絞り込むことができるのに・・・」
「それはそうだな・・・何かないか・・・何か・・・・」
間部と尾身はタバコを灰皿に押し付けて処分すると押収した物を机に並べた。左側には被害者のマンションから持ってきた物。
といっても犯行に使われた凶器とテグスだけだ。右側には病院で押収したものを置いた。
四本のメスと二つの鉗子、診察日記とカルテのコピー、夏山の手術から退院するまでに病院にいた職員のリスト。
尾身は腕組みをして唸った。犯行に使われたメスと病院に置いてあったメスと劣化度が一致する。
つまり病院の人間が何らかの形で事件に関与している。これが確定事項だ。病院の誰がどのような形で関わっているかを調べれば解決に近づくだろう。
扉が開いて鑑識の甲浪が入ってきた。「びっくりしますよ。すげぇことが分かりました。」
「何だ。」
甲浪は二人に書類を差し出した。「この男。院長の息子、雨宮啓介。一年前に新宿署の世話になっています。」
「なにぃ!罪状は?」
「暴行罪。帰宅途中の女子中学生に絡んで暴行を加えたそうです。近隣の住民が警察に通報して、連行すると酒が入っていたとか俺は若いとか言って言い訳してたそうです。そんで案の定親父が金で揉み消すと半年前に社会復帰してあの病院で働いてます。普段は親父の助手として働いているものの簡単な手術なら単独での執刀を任されることも増えてきたそうです。被害者の夏山さんを執刀したのも啓介です。」
「バカ息子というわけか。」尾身は視線を上にやった。
「それだけじゃないですよ。各病室には防犯カメラが設置されているんですが、そのシステムに息子が自分のIDでログインして履歴を消した形跡もあるんです。それに見栄っ張りな性格も相まって彼女の執刀は啓介がたった一人で担当したそうですよ。手術後の診察は全て啓介が行なっていたことも母親の口から分かりました。」
「おいちょっと待てよ。雨宮院長は自分が手術して診察も行なったのは自分だといっていたぞ。」
「この際母親のいうことを信じるしかない。しかし渋谷署から回ってきたあの事件の犯人があの院長の息子だったとはな。全然似てないから分からなかったぜ。聴取も母親ばっかりだったしな。」
「動機は全くわからんがとりあえず病院に行こう。」
「そうだな。」尾身と間部は数人の警察官を連れて駐車場に向かった。
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